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トルコ大統領選:決選投票を前に、エルドアン氏が「キングメーカー」オアン氏の支持を取り付ける

イスタンブールで2023年5月22日、再選を目指すトルコのレジェップ・タイイップ・エルドアン大統領の写真を掲げた選挙カーの前に座る女性たち。5月28日には、大統領選決選投票が控えている。(AFP)
イスタンブールで2023年5月22日、再選を目指すトルコのレジェップ・タイイップ・エルドアン大統領の写真を掲げた選挙カーの前に座る女性たち。5月28日には、大統領選決選投票が控えている。(AFP)
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24 May 2023 06:05:18 GMT9
24 May 2023 06:05:18 GMT9
  • 超国家主義者で反移民を掲げるオアン氏は5月14日の第1回投票で5.2%の票を獲得した
  • 「野党陣営は混乱、しかし結果についてはいまだ不透明」

メネクセ・トキャイ

アンカラ:いずれの候補者も勝利に必要な得票率50%に届かなかったため、トルコでは5月28日に大統領選挙の第2回投票が行われる。

第1回投票では、現職の69歳、レジェップ・タイイップ・エルドアン大統領が74歳のライバル、ケマル・クルチダルオール氏を約250万票差でリードした。しかし、エルドアン氏の得票率は49.5%で、クルチダルオール氏の得票率44.9%に対して勝利を収めるには不十分であった。

1回目の投票では、5,400万人が票を投じ、内500万人にとってはこれが初めての投票であった。大統領選第1回目の投票率はトルコ史上もっとも高い87%を記録した。

連立政権を構成する公正発展党と国家主義・イスラム主義的各派は、議会では過半数を確保している。

議会で多数派から転落した後、中道左派で世俗主義的な野党は新たな選挙スローガン「トルコのために決断を」を掲げたが、大統領選に勝利するという誓約を守ることが危うい状況になっている。

第1回投票での敗北後、野党の統一候補であるクルチダルオール氏は2年以内にすべての難民を本国に送還し、ロシアへの依存度を減らすというかねてからの公約を繰り返した。

クルチダルオール氏はまた、より攻撃的で国家主義的なスタンスを取り、エルドアン氏が意図的に1,000万人の難民の入国を許したのであり、再選されればさらに数百万人が流入するだろうと主張した。

クルチダルオール氏はさらに、ロシアがディープフェイクのコンテンツや合成写真、謀略を用いてトルコの選挙に介入していると非難した。

一方、どちらの候補も超国家主義者で難民排斥の立場を取る55歳の第3の候補、シナン・オアン氏に投じられた票を引き付けようと努めた。オアン氏は5月14日の第1回投票で、それまでほぼ無名であったにもかかわらず、5.2%の票を獲得した。今や「キングメーカー」となったオアン氏は、決選投票でエルドアン氏が率いる与党を支持すると表明した。

22日、国営チャンネルTRTのインタビューで、エルドアン氏はオアン氏の支持に謝意を表明した。エルドアン大統領はオアン氏は「我々のテロと対決する姿勢と世界との関係、トルコの生存戦略を熟知している」と評価した。

とりわけトルコ南東部では、クルチダルオール氏は親クルド派の国民民主主義党(HDP)の支持を受けている。したがって、トルコ・ナショナリズムを強く主張するオアン氏と同盟を結ぶことは、クルチダルオール氏に投票したクルド系有権者を遠ざける可能性がある。オアン氏は、HDPに対しいかなる譲歩を行うことにも反対すると表明している。

目下重要なのは、オアン氏が与党連立政権に対して持つ発言権が、16万7,000人のシリア国籍を持つ有権者の動向にどのような影響を与えるかということである。オアン氏は約370万人のシリア難民を本国に送還するためのスケジュール作成を求めている。

TRTのインタビューで、エルドアン氏はトルコ当局がシリアでの住居を提供した上で45万人のシリア難民が故国に戻っており、さらに100万人の送還を予定していると発表した。

いまだに事態は流動的であり、特に若い年代や、第1回で票を投じなかった830万人の持つ影響を考慮に入れると、状況は不確定要素に満ちている。

もっとも専門家は、与党が議会で多数派を占めていることで、有権者は議会とのねじれを避けようと考える可能性が高く、エルドアン氏の再選の見込みが高まっていると指摘している。仮にクルチダルオール氏が当選した場合、その政策が議会を通過することは困難なためである。

任期5年の大統領職の3期目を目指して出馬したエルドアン氏は国家機関やメディアの多くを統制しており、フェイクとされる動画を使って野党勢力には「テロ組織」の支持者というレッテルを貼ってきた。このため、クルチダルオール氏が選挙地盤を保持しつつ有権者へ訴えかけることは困難をきわめている。

他方、国内資産の売却が増えており、選挙の後経済危機がさらに悪化するのではないかという暗い見通しがすでに現れている。欧州復興開発銀行は最近、2023年のトルコの経済成長見通しを3%から2.5%へと下方修正した。

著名なトルコ人経済学者、ダロン・アシモグル・マサチューセッツ工科大学教授は、トルコが現在の危機に対処するには、伝統的政策への回帰か資本規制の強化か、2つに1つであると警告している。

米ジャーマン・マーシャル基金のアンカラ事務所長であるオズグル・ウンルヒサルシクリ氏の見るところでは、オアン氏が第1回投票で自身に投票した人々に対し、決選投票でエルドアン氏とクルチダルオール氏のいずれに票を投じるかについて与える影響は過大評価されている。

「彼に投票した人々は一枚岩ではありません。一部はエルドアン氏に投票したくないと考えた世俗的国家主義者で、また一部は野党派ではあるもののクルチダルオール氏には投票したくないと思った人々です。いずれにせよ、オアン氏は誰かの『代わり』に選ばれただけであって、有権者の行動を左右する主要な動因ではないのです」とウンルヒサルシクリ氏はアラブニュースに語った。

オアン氏がエルドアン氏への支持を表明したとはいえ、オアン氏の支持者すべてがエルドアン氏に投票するかどうかは不透明である。というのも、オアン氏を推すATA連合(勝利党、正義党、その他2つの国家主義政党の選挙連合)がすでに分裂しているためである。

過激な移民排斥発言で知られる勝利党のウミト・オズダー党首は自身の立場を間もなく明らかにする予定だが、ATA連合を構成するオアン氏のもう一人のパートナー、ヴェスデト・オズ正義党党首はすでにクルチダルオール氏支持を表明している。

ウンルヒサルシクリ氏は、オアン氏を推す小政党はクルチダルオール氏につく可能性が高いと予想しており、もしそうなれば、オアン氏自身のエルドアン候補支持を上回ってクルチダルオール氏に有利な影響を与える可能性がある。

「最後に、1回目でオアン氏に投票した人々には、主要候補2人のいずれにも票を投じない、第3の簡単な選択肢が残されています。棄権するという選択肢です」とウンルヒサルシクリ氏は説明した。

オアン氏の支持者のほとんどは、2人の大統領候補いずれにも好感を持っていないことで知られている。そのため、彼らの多くは第2回投票を棄権する可能性がある。

第1回投票でオアン氏を支持した国家主義者の元国会議員、アティラ・カヤ氏は、オアン氏が与党支持を表明したことを非難している。以下はカヤ氏のツイッターへの投稿である。「もし未来を『ある一人の人物』の意志に基づいて自分が望む方向に設計できると考えているのなら、自らが合流しようとしている伝統について何一つ分かっていないということだ!」

24日夜には、クルチダルオール氏のインタビューがYouTubeのトークショーチャンネル、「Babala TV」(政治指導者に熱のこもったインタビューを行うことで知られ、数百万人が視聴している)で放映される。

インタビューでは、クルチダルオール氏は主に与党支持者から選ばれた、若く批判的な視聴者からの質問に答えることになる。そこでの受け答え次第では、自身への様々な根強い偏見を正し、まだどちらに投票するか決めかねている有権者の支持をある程度まで得ることができる可能性がある。

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