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アメリカはこれ以上中東で体制転換のための戦争は行わない、当局が発表

マーラ・カーリン国防次官補は、新国家戦略は中東の脅威に対応するにあたり「パートナーシップ・統合・相互運用性」を優先する、と語った。(@DOD_Policy)
マーラ・カーリン国防次官補は、新国家戦略は中東の脅威に対応するにあたり「パートナーシップ・統合・相互運用性」を優先する、と語った。(@DOD_Policy)
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25 May 2023 03:05:26 GMT9
25 May 2023 03:05:26 GMT9

アリ・ユネス

ワシントン: 戦略・計画・能力担当国防次官補のマーラ・カーリン氏によると、アメリカは中東における新国防戦略の下では、一方的な戦争をしかけ、軍事的手段によって体制転換を行う方針から、当該地域の諸国と連合関係・パートナーシップを築いていく方向にシフトしていくという。

カーリン氏は24日、アラブニュースも出席したワシントンD.C.の中東研究所で行った基調演説において、アメリカの新国防戦略の下では、中東地域の脅威に対して「パートナーシップ・統合・相互運用性」を優先したアプローチをとっていく、と述べた。

「パートナーシップ・外交による抑止・統合・価値観の共有」といった基本方針を掲げるアメリカ国防戦略は中東についても適用する、と同氏は述べた。

カーリン氏によると、中東における新国防戦略は「パラダイム・シフト」であり、当該地域に駐在する何十万人もの米軍部隊を撤退させていくものだという。その代わり、この新しいパラダイムの下では、中東諸国とパートナーシップを築き、合同演習を行い、兵器を相互運用する体制を整えていくことが重要とされる。

「これは我々の中東に対するアプローチにおけるパラダイム・シフトであり、現実の難しい、しばしば一方的な武力行使を伴う体制転換を我々の目的の中心から外すものである」と同氏は述べた。

「その代わりにこの新しいパラダイムは、アメリカの競争優位性およびパートナーシップ、また健全な政策の基本的要素に焦点を当てている」

また同氏は、新国防戦略においては、中東に在留する何十万人もの米軍部隊は「抑止力として効果がない」とされた、と述べた。

しかしだからといって、アメリカが中東に対するコミットメントを弱めたということではない、とカーリン氏は言う。

「新国防戦略は明快である。アメリカは引き続き中東の諸問題に注力していく」と同氏は述べた。

カーリン氏によると、中東はアメリカのグローバル戦略の一部であり、その肝要な部分とされているという。

「率直に申せば、我々の国家安全保障上の利益はこの地域に編み込まれている」と同氏は述べる。

カーリン氏によると、ロイド・オースティン国防長官は直近の中東訪問中、中東における新国防戦略は「外交」と「対立抑止」の補助輪として機能するものだと明言した、と述べた。

しかしオースティン国防長官は「武力行使に立ち返ることになれば、我々は決定的な勝利を収めることになるだろう」と加えたという。

「アメリカの中東の安全保障に対するコミットメントが強固で確かであることははっきりさせておきたい」とカーリン氏は述べた。

新国防戦略の強みは、多国間協力体制およびパートナーシップに基づく活動、またそれを可能にする、必要に応じて戦力を迅速かつ効果的に移動できる米軍の敏捷性にある、と述べた。

イランの中東における「無謀な立ち回り」には、多国籍軍の組織や武器・戦力の相互運用等の多国間協力に基づくアプローチを通じて対応していく、とカーリン氏は述べた。

「軍の統合と武力の相互運用はイランのあらゆる地域における無謀な立ち回りに対応するカギとなる」と同氏は言う。

同氏は、新国防戦略の例として、公海上の薬物密輸や海賊行為に対応し、「国家主導の違法行為」を抑止して「商業輸送の安全を確保する」ために、アメリカ国防軍が34人のメンバーからなる治安・軍事海上部隊である「海上連合部隊」の組織に取り組んでいることを挙げた。

また同氏は、現在実施中の、アメリカ中央軍およびサウジアラビア軍が湾岸協力理事会に加盟する他のアラブ諸国と合同訓練を行う軍事演習「イーグルリゾルブ」についても言及した。

中東における新国防戦略はすでに効果が出ている、とカーリン氏は述べ、例としてイエメンとイラクを挙げた。

イエメンは現在交戦国との間で今までで最長の停戦を実現し、イラクは他の中東諸国との健全な国交をとり戻りつつある、と述べた。同氏はまた、アラブ諸国との協力によって、イラクおよびシリアで「アルカイダやイスラム国」といった過激派組織の撃退に成功したことにも言及した。

世界全体に関してカーリン氏は、新国防戦略において将来的に最大の脅威となる存在として中国を挙げた。中国に対する抑止力を保持し、また強めることがアメリカ国防戦略の中心である、と述べた。

中国は現在、外交・経済・技術のいずれの点でも、全面的にアメリカの覇権に対して組織的に挑戦していく意図を持ち、またそうするための実力を高めつつある世界唯一の国である、と同氏は述べた。

新国防戦略はまた、ロシアを「ひっ迫した」脅威であるとしている。イラン、北朝鮮やその他テロ組織の脅威についても言及している。

去年発表された国防戦略は、国家の核態勢の見直しおよびミサイル防衛見直しを同時に盛り込んだ、前例のない総合的な形で発表されたものである。

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