
キーウ:ロシアの民間軍事会社ワグネルのオーナーは25日に、ウクライナ東部のバフムトからの撤退とロシア軍への支配権移譲を開始したと述べた。同氏が廃墟と化したバフムトをワグネル軍が占領したと述べてから数日後のことだった。
ロシアのウラジーミル・プーチン大統領と長年のつながりがある大富豪でワグネルのオーナーのエフゲニー・プリゴジン氏は、「テレグラム」で公開された動画の中で、引き渡しは6月1日に完了予定だと述べた。ロシア国防省からただちにコメントはなかった。
数万人が死亡した9か月にわたる戦闘の末に、爆撃にさらされたバフムトからのワグナルの撤退が開始されたかどうかを、独自に確認することはできなかった。
ウクライナの国防次官は25日に、郊外のワグネルの部隊は正規軍と入れ替わったが、街の中にはワグネルの兵士たちが残っていると述べた。ウクライナの部隊はまだ南西部郊外に拠点を維持していると、ハンナ・マリャル国防次官は述べている。
プリゴジン氏のバフムト制圧は、プーチン氏にどうしても必要な勝利をもたらした。プーチン氏が2022年2月に開始したウクライナ侵攻は勢いを失っており、現在では西側同盟国から供給された高性能兵器を用いるウクライナによる反転攻勢の可能性に直面している。
ウクライナのミハイロ・ポドリャク大統領府長官顧問は25日に、ウクライナの反転攻勢は既に始まっていると述べ、それは「特定の日の特定の時間に」始まる「ひとつのイベント」だと予想すべきものではないと警告した。
ポドリャク氏はツイッターへの投稿の中で、「ロシアの占領部隊を滅ぼすための多数の異なる活動」が「昨日既に行われていたし、今日も行われていて、明日も続くだろう」と述べた。
プリゴジン氏には、ワグネルの創設時から続く、ロシア軍指導部との長期にわたる確執がある。また、同氏は扇動的な — そして多くの場合検証不可能な — 世間の注目を集める発言により広く知られてきた。
15か月にわたるウクライナでの戦争中に、同氏は度々公然とロシアの軍指導部を辛辣に非難し、自身の部隊がバフムトでの戦闘を先導する際に、軍指導部は無能で、ワグネル軍への適切な供給ができていないと批判してきた。
ワグネルのバフムト占領への関与により、プリゴジン氏の立場は強まっており、同氏はこれを利用して、戦争遂行に関する個人的見解を表明してきた。
「プリゴジン氏は・・・ワグネルがバフムト占領を主導したという認識を、ロシアのウクライナでの戦争活動に対する不合理なほどの影響力を主張するために利用している」と、ワシントンのシンクタンク「戦争研究所」は述べた。
ロシア軍のパフォーマンスに対するプリゴジン氏の頻繁な批判的発言は、通常こういった批判を表明できるのはプーチン氏だけであるロシアの厳しく制御された政治体制の中では異例のものだ。
バフムトにおける今後1週間の自身の活動に関するプリゴジン氏の精彩を欠いた発言は、ウクライナついてのクレムリンの方針と再び対立した翌日のものだ。同氏は、ウクライナを非武装化するという目標は裏目に出たとして、ロシア軍が民間人を殺害したことを認め、バフムトでの戦闘で自軍が2万人以上を失ったという西側の推計に同意を表した。
一方、ロシアはウクライナの首都キーウに対する今月12回目の夜間空襲で、イラン製無人機シャヘド36機による攻撃を行ったが、同市の防空体制により全てが撃墜されたと、ウクライナ当局が25日に発表した。
ロシア軍は30回の空爆と多連装ロケット砲による39回の攻撃のほか、大砲と迫撃砲による攻撃をウクライナ各地で行ったと、ウクライナ軍が発表した。
25日のウクライナ大統領府の発表によると、ウクライナでは24日からその日の夜間にかけて、少なくとも1名の民間人が死亡し、13名が負傷した。
一方ロシアでは、25日に外務相がスウェーデンの外交官5名を国内から追放する予定だと発表した。
声明によると、この決定は、4月にスウェーデンにいるロシア外交使節団の職員5名を「ペルソナ・ノン・グラータ(好ましからざる人物)」に指定した、スウェーデン政府の「あからさまに敵対的な動き」に対抗するものだという。
ロシア政府はさらに、イェーテボリの領事館を9月に閉鎖すると決定したことと、サンクトペテルブルクにあるスウェーデン領事館の活動への「同意撤回」を発表した。
AP