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UNRWA事務局長、支援増強が無ければ数ヶ月で資金不足に陥ると警告

国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)がガザ地区で運営する保健センターの前で自転車に乗っている子供たち。2018年10月02日。(AFP / 資料写真)  
国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)がガザ地区で運営する保健センターの前で自転車に乗っている子供たち。2018年10月02日。(AFP / 資料写真)  
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03 Jun 2023 07:06:18 GMT9
03 Jun 2023 07:06:18 GMT9
  • フィリップ・ラザリーニUNRWA事務局長は、支援者とホストコミュニティの間の「相互不理解のままの対話」をやめて、パレスチナ難民への責任とは何かを熟考する時期に来ているとアラブニュースに語った
  • 国連事務総長は、支援者らに、75年間の紛争の「増々暗くなっていく状況」の中で「僅かな希望の光」に十全な資金提供を行うよう呼びかけた

エファレム・ コッセイフィ

ニューヨーク:国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)は、現在、「深刻」な財政危機に直面しておりその存続そのものが危うい状態にあると、同事業機関の事務局長が警告した。

フィリップ・ラザリーニ事務局長は、UNRWAの得意とする「泥縄式の切り抜け方は徐々にしかし確実に通用しなくなりつつあり」、学校や医療センター、その他重要なサービスを維持する資金が9月には底を尽くとの見通しを語った。

ラザリーニ事務局長は、UNRWAの支援のためにチャバ・コロシ国際連合総会議長が開催した金曜日の誓約会議に先立って、講演を行った。

UNRWAの事務局長は、同事業機関が「崩壊の瀬戸際」にあると語り、財政危機が深刻化する中で、最も関与の深かった支援者らの一部が「同事業機関への資金提供の減額」を表明している事を残念に思うと述べた。

ラザリーニ事務局長は、「UNRWAのサービスを提供する能力を当然のこととと見做さない」よう支援者らに呼びかけ、「UNRWAは遅かれ早かれ限界に達します」と付け加えた。

UNRWA は、パレスチナ占領地と近隣諸国で登録済みの600万人近くのパレスチナ人に公共サービスを提供している。

「URRWAが国連の他のどの人道支援機関や開発機関とも異なっている事を、私はパートナーたちに説明し続けています」と、ラザリーニ事務局長は語った。

「URRWAは、政府が提供するようなサービスを提供する、珍しい機関です。事実上、URRWAは、この地域で最貧クラスのコミュニティであるパレスチナ難民たちににとっての教育省、一次医療省、社会サービス省、自治体サービス省なのです」

「財源に支出を適応させると言っても、『財源が20%減ってしまったので20%の子供たちに学校を辞めるように頼みましょう』などと言い出すわけにはいきません。何を基準に財源に支出を適応させれば良いのでしょうか? URRWAが運営する学校には55万人の少年少女が通っています。ある年度には55万人の生徒を受け入れ、別の年度には10万人減らしますが資金が元通りになり次第復学してもらいますといったことは出来ません。それでは公共サービスを運営していることになりません」と、ラザリーニ事務局長は語った。

URRWAは3万人の職員を擁し、そのほとんどはパレスチナ難民だ。約50万人の生徒たちのために700以上の学校を運営し、保健や衛生のサービス、さらには食糧や資金援助などの各種社会サービスを提供している。

パレスチナ人難民は、ほとんどの場合、占領地でも、ヨルダンやシリア、レバノンでも、家屋が密集した住居地域の様相を呈する難民キャンプで十分なサービスも受けられないまま生活している。

ラザリーニ事務局長は、過去10年間に複数回の危機が発生した地域においてコストが増加しURRWAの財源は苦境に陥ってしまったのだと語った。

「UNRWA はパレスチナ難民にとって唯一のライフラインであり、期待も高まっています。そのため、コストに対する財源の余裕の無さが増々深刻な問題になっているのです」と、ラザリーニ事務局長は言った。

政治的な進展が不在となり、パレスチナ・イスラエル紛争が「もう優先事案ではない」現況、UNRWA の提供するサービスの縮小は「パレスチナ難民の将来の権利の縮小」と認識されてしまうだろうと、ラザリーニ事務局長は述べた。

ラザリーニ事務局長は、支援者らに「誠実な政治的関心と責任感」を示すことを呼び掛けた。

UNRWA が75周年を迎える事がパレスチナ難民に対する責任の意味を考えるにあたって「完璧な機会」になると、ラザリーニ事務局長はアラブニュースに語った。

「これはまだきちんと行われていない議論です」と、ラザリーニ事務局長は述べ、彼が現職に就任して以来支援者とホストコミュニティの間には「相互不理解のままの対話」が続いているのだと付け加えた。

「支援者は財源の範囲内で支出を行う必要があると言いますが、UNRWA の私たちは『さて、それにも限度があります』と答え続けています。私たちは効率化に尽力してきました。緊縮財政を行うまでになりました。そして、現在、これ以上財政の引き締めを行うと、生徒たちに高校を辞めてもらう決断をしなければならない所まで来ました。そんな事は出来ません」

「そこで、皆でUNRWAのような機関に何を期待するのか、きちんと議論する必要があります。そして、何らかの合意が得られれば、 UNRWAはパレスチナ難民にとって予測可能なパートナーになれるというわけです」と、ラザリーニ事務局長は語った。

「政治的な枠組みが無いため、この議論は未だ行われていません。しかし、救援事業機関として私たちはこれ以上待っていられないのです。今、UNRWAの最大の敵は現況です。それなので、私は、専門家グループが机上に置いた勧告に加盟国が合意するに至る議論を実現する方法を探しています」

誓約会議への声明で、アントニオ・グテーレス国連事務総長は、パレスチナ人にとって過去20年間で最も惨酷な年を背景としてUNRWAの財政危機が起きていると述べた。

グテーレス事務総長は、家族の緊急事態のためにリスボンの自宅に呼び戻されてしまい、会議に出席できなくなってしまったことを残念に思うと述べた。

「新年まで後半年、暴力的な衝突が、猶予も無く、増々激しくなっています」と、グテーレス事務総長の代理としてコートネイ・ラトレイ事務総長官房長は誓約会議で語った。

ラトレイ事務総長官房長は、「イスラエルとパレスチナという2つの国家が平和と安全の中で共存し、エルサレムを両国の首都とする構想を実現する政治的解決以外に道は無い」という国連の見解を再度強調した。

「この解決策の骨子はよく知られています。国連決議でも、国際法上でも、二国間協定でも定められています。しかし、占領の継続から入植地建設の拡大に至るまで、パレスチナの地での現実は私たちの構想とは反対の方向に向かっています」

ラトレイ事務総長官房長は、「増々暗くなっていく状況の中で、UNRWAは僅かな希望の光」であると述べ、「この希望を育み、支え」、「UNRWAが十全な資金を確保できる」ように加盟国に対して呼びかけた。

 

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