

ダーウード・クッターブ
【ヨルダン・アンマン】
イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相は9日、占領下にあるヨルダン川西岸地区の早急な併合を断念した。動きが早すぎるとの米側からのかつてない警告を受けてのことだ。
ネタニヤフ氏は連立政権を組む極右の過激民族主義者らの圧力を受け、違法なユダヤ人入植地およびヨルダン渓谷への「イスラエルの法の適用」を早急におこなうことを誓っていた。
1月28日に公表されたドナルド・トランプ大統領による中東和平案では、パレスチナ側が独立国家として要求していたイスラエル占領下の広大な地域をイスラエルが保持することを約束していた。ネタニヤフ氏は大手を振ってこの案に則った行動を取ることができたはずだった。
が、駐イスラエル米大使でトランプ案の核心的な支持者でもあったデービッド・フリードマン氏は9日、次のように警告した。「イスラエル=アメリカ合同委員会による作図プロセスの完了を待たねばイスラエルは動けない。委員会プロセスの完了を待たずに一方的に先んじて行動を取るなら、和平案そのものも危うくなるし米国の承認も危ぶまれる。
「われわれの見立てとはどうやら背馳しかねない方向へイスラエルの内閣が追い込まれているらしいとの報を受けたことから、われわれとしては立ち位置を闡明したまでだ」
背景
1月28日に公表されたドナルド・トランプ大統領による中東和平案では、パレスチナ側が独立国家として要求していたイスラエル占領下の広大な地域をイスラエルが保持することを約束していた。ネタニヤフ氏は大手を振ってこの案に則った行動を取ることができたはずだった。
パレスチナ指導部はアラブニュースの取材に対し、ネタニヤフ氏は米国政府の言いなりになるしかなかったと語った。「はっきりした話だが、意見の不一致があればトランプ氏のほうが力は強い。トランプ氏とネタニヤフ氏で意見が合わなければ米側の意見のほうが通るはずだ」。こう語るのは、パレスチナのマフムード・アッバース大統領の上級政策顧問を務めるナビール・シャース氏だ。
同氏は語る。「米国がこの地域で関心をもつのはイスラエルだけではなかった。アラブ・イスラム圏の多数にとって、エルサレムやアラブ側占領地は米政府の考え方に多大な影響を与えている」
が、パレスチナ側で和平交渉の責任者を務めるサーエブ・エレカート氏は、フリードマン大使についてアラブニュースに次のように語った。「彼はもともと違法な入植地への資金供与や支援に関わってきた人物だ。また、今回の併合案を裏側で支えた知恵袋でもある。
「彼は大筋でこんなことを言っている。『併合とは、ローマ規程の定める侵略犯罪のことだが、私も一口乗せてくれるなら大いにけっこう。ぬけがけは許さんよ』。ゲームの終わりに彼らが見せるのも畢竟は同じやり口だ。イスラエルによるパレスチナ人隔離政策を常態化するということだ」