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スーダンの紛争と混乱、女性・女児に壊滅的な被害を与える

ロバに乗って戦闘から避難するスーダンの女性たち。2022年5月28日、スーダンの首都ハルツーム。(AFP)
ロバに乗って戦闘から避難するスーダンの女性たち。2022年5月28日、スーダンの首都ハルツーム。(AFP)
国軍と準軍事組織RSFの間の衝突が続く中、建物の後ろから立ち上る煙。スーダンの首都ハルツーム。(AFP)
国軍と準軍事組織RSFの間の衝突が続く中、建物の後ろから立ち上る煙。スーダンの首都ハルツーム。(AFP)
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08 Jun 2023 09:06:40 GMT9
08 Jun 2023 09:06:40 GMT9
  • スーダンの女性権利活動家は、武装戦闘員が強姦を戦争兵器として使用していると非難している
  • RSFの前身であるジャンジャウィードは、2003~2020年のダルフール紛争の際に同様の犯罪に関与した

レベッカ・アン・プロクター

カイロ:スーダン国軍と即応支援部隊(RSF)がスーダンの首都ハルツームの市街地を戦場に変えた時、数学教師のムナ・アギーブ・ヤグーブ・ニシャンさん(48)と彼女の子どもたちは避難を余儀なくされた。

二シャンさん、娘のマリタさん(21)、息子のジョージさん(22)とクリスチャンさん(16)は、エジプトへの長く危険な旅に出る前は、外の通りで戦闘が行われる中でハルツームのマンシ地区の自宅に隠れていた。

彼らが住んでいた近隣では、4月15日に紛争が始まって以来の無法状態の中、自らの行為の結果や責任を問われることのない男たちが武装して歩き回っており、民間人、特に女性と女児に脅威を与えている。

装甲車を運転する即応支援部隊(RSF)の戦闘員たち。2023年5月25日、ハルツーム南部。(AFPファイル写真)

エジプトの安全なアパートからアラブニュースの取材に応じた二シャンさんは、「彼らは私たちに心の傷を与えたいのです」と言う。「今、RSFは女性を強姦しています。私がまだスーダンにいると思っている人たちから、強姦された時に妊娠しないための方法が書かれたデジタルパンフレットが送られてきます」

スーダンの女性権利活動家で「アフリカの角における女性のための戦略的イニシアティブ」の地域ディレクターを務めるハラ・アル・カリブ氏によると、戦争兵器としての強姦を含むジェンダーに基づく暴力が準軍事組織RSFのメンバーによって行われている。

「アフリカの角における女性のための戦略的イニシアティブ」の地域ディレクターを務めるハラ・アル・カリブ氏。(提供写真)

アル・カリブ氏はアラブニュースに対し次のように指摘する。「スーダン国軍がこれまで性的暴力を行ってこなかったわけではないが、現在暴力や強姦の犠牲になっている人々は皆、RSFの兵士たちがそのような犯罪を行ったと言っている」

二シャンさんと子供たちは避難する前、多くのスーダン人と同様に自宅の中に閉じ込めらたまま命の危険を感じていた。戦闘が続く中ですぐ食料が底をついたため、ハルツームから脱出する機会を得るまでは配給された水で命をつなぐしかなかった。

RSFがやって来て家のドアをノックした時、二シャンさんの息子のナディル・エリア・サバグさん(26)が応対し、家族はその間に裏から逃げた。サバグさんは後で家族と合流することになっていたが、二シャンさんによると彼はまだハルツームにおり、その居場所は正確には分からないという。

戦禍のスーダンから逃れてきて、アルギーン国境検問所経由でエジプトに渡る前に休む乗客たち。2023年5月12日。(AFP)

一家はエジプト行きのバスに乗ったが、そのバスが、最近RSFによってハルツームの西にあるオムドゥルマンのアル・フダ刑務所から解放された囚人らによって襲撃されたと二シャンさんは語る。乗客1人がナイフを突きつけられ物を奪われたという。

最終的にバスは進むことを許された。そして数日後、二シャンさんと子供たちはカイロに到着した。「全てを失いました」と二シャンさんは言う。「夫のエジプトでのがん治療費を払うために家を売りました」

二シャンさんが以前スーダンに戻ったのはほんの2年前で、夫が亡くなった後のことだった。そして今、彼女がそれ以降再び築き上げてきたものは全て失われた。「車も、金(きん)も、書類もなくなりました」と彼女は言う。「この戦争で全てを失ったのです」

二シャンさんと子供たちがカイロに到着したのはスーダンが混乱に陥った10日後のことだった。現在は市内のエル・ハリファ・エル・マムーン地区にあるアパートで他のスーダン人家族と共に暮らしながら、10月に予定されている国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)との面談を待っている。

大学生のエリア・ジョセフ・サバグさん(左)と数学教師のムナ・アギーブ・ヤグーブ・ニシャンさん。(提供写真)

「自分が来月何をしているのか、どこに行ってどんな仕事をしているのか分かりません」と二シャンさんは言う。「欧州にたどり着くことができればと思っています」

彼女の話は珍しいものではない。ここ数週間でエジプトに到着した何千人もの難民たちも同じような体験をしている。エジプトは現在、スーダンの紛争から逃れようとする人々の主要な目的地となっている。

UNHCRによると、これまでにエジプトに到着した人の数は4万2300人と記録されているが、実際の数はさらに多い可能性が高い。同事務所の推計では、今後数ヶ月で約30万人が到着する可能性がある。

戦禍のスーダンから逃れてきて、アルギーン国境検問所経由でエジプトに渡る前に休む乗客たち。2023年5月12日。(AFP)

スーダンで今も続く紛争は、女性たちや女児たちに壊滅的な影響を与えている。女性・女児は、世界各地で起こる暴力的混乱の際に最も影響を受けやすい層だ。

スーダンの戦闘で難民となった女性・女児は、戦争兵器としての強姦を受けたり、人身売買業者の犠牲になったりする危険に晒されている。実際、RSFの前身であるジャンジャウィードは、2003~2020年のダルフール紛争の際に同様の犯罪に関与した。

当時の報告や証拠から、ジャンジャウィードは女性に屈辱を与え地域社会から排斥することを目的とした組織的な強姦作戦を実施したと結論された。

民兵組織「ジャンジャウィード」によって焼き払われた後のテルベバ村。2004年4月、スーダン西部のダルフール地方。同組織を前身とするRSFは現在、スーダン国軍との間で破壊的な権力闘争を行っている。(AFPファイル)

スーダンの女性政治活動家の多くは既に2019年の民主化デモの際に、治安部隊から強姦を含むジェンダーに基づく暴力を受けていた。現在の紛争では事態がさらに悪化している。武装した男たちが責任を全く問われないまま行動していると非難されているのだ。

UNHCRのオルガ・サラド・ムル報道官はアラブニュースに対し次のように語る。「戦闘開始以来、UNHCRと人道保護パートナーはショッキングな人道問題や人権侵害を数多く報告してきた。民間人に死傷者を出した無差別攻撃、蔓延する犯罪、性的暴力などだ。女性や女児に対するジェンダーに基づく暴力のリスクに懸念が高まっている」

「UNHCRは、スーダン難民を受け入れている各国の政府や人道パートナーと協力し、全ての受け入れ施設や通過地点にスタッフを確保している。これらのスタッフは、秘密を守りながらこれらの犯罪の被害者を扱い、健康面のサポート、心理社会的サポート、カウンセリング、必要であれば法的支援サービスなどの被害者に寄り添ったサービスを提供するよう訓練されている」

「紛争から逃れてきた難民を受け入れている新しい施設において、性的搾取・虐待の予防策を進めているところだ」

スーダン紛争で難民になった人々へのあらゆる支援は、カイロやその他の都市への到着ペースを考えるとあまりにも不十分かもしれない。二シャンさん一家が国連と面談できるのはまだ数ヶ月先で、今のところ何の支援も受けておらず、カイロのアパートの家賃は友人が払ってくれているという。

ハルツームや他の戦闘発生地域から脱出できない人々の状況は悲惨だ。アル・カリブ氏のような活動家はスーダンの戦闘で閉じ込められている女性たちに対し、警戒を怠らないよう呼びかけている。

「RSFは過去20年間、性的暴力に関与してきた」とアル・カリブ氏は言う。「この国の全体的構造に大きな欠陥があるため、民間人に対するあらゆる種類の犯罪が起こっている。民間人は自らの手で身を守らなければならないし、女性たちや女児たちに自分自身やコミュニティーを性的暴力から守る方法について幅広く指導しなければならない」

「現実として、スーダンでは過去20年間、紛争地域や紛争が終わった地域において性的暴力が行われている」

スーダンで過去20年間行われてきた性的暴力に集団で抗議する同国の女性たち。2021年、ハルツーム。(ツイッター: @Sihanet )

同氏によると、このような犯罪が罰せられない状態を許しているスーダンの免責の文化のせいで、地域においても国際社会においても長年、問題の規模が正しく伝えられていないという。

同氏は次のように語る。「2019年の革命後に発足した暫定政府を含むスーダンの歴代体制は、性的暴力の問題やその加害者に対処してこなかった。加害者の大半が軍や警察だからだ」

「彼らは免責と保護を享受してきた。スーダンの法的枠組みは大きな欠陥がある非常に問題のあるもので、姦通罪などと言って性的暴力の被害者を常に犯罪者として扱おうとしてきた」

「その結果の事実として、性的暴力とその加害者が今や普通の存在になっている、というかされている」

武装集団が大学の寮に押し入って外国人女性2人を強姦したと主張するソーシャルメディアの投稿(真偽は検証できず)。(提供写真)

この免責の文化のせいで加害者はしばしば自分が「無敵」だと思い込むとアル・カリブ氏は言う。「これは特に武装組織や軍の間でかなり蔓延している」

スーダンの危機の中で援助機関が対処を試みている問題は、女性・女児が被害を受けているジェンダーに基づく暴力以外だけではない。

UNHCRによると、同事務所は妊娠中・授乳中の女性への特に栄養面の支援を優先した医療チームによる生殖医療を提供している。

各機関は人身売買の脅威の監視も行っている。これはスーダン東部では今回の紛争が発生する以前から既に懸念されていた問題だ。UNHCRのムル報道官は、「紛争や災難、そしてそれらが生み出す保護の問題により、人身売買がはびこる条件が作り出されている」と指摘する。

「今も続く戦闘のせいで新たな犠牲者を特定する能力が制限されているが、国境地域では人身売買の犠牲となる可能性のある人々を特定するためのメカニズムがUNHCRとパートナーによって導入されている」

二シャンさんのように危険のない場所に避難できた人々が望むのは平和と安全だけだ。二シャンさんは言う。「世界に対して望むのは、私の子供たちが大学で勉強を続けられること、そして仕事に就いて幸せに暮らせることだけです」

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