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「国連安保理はウクライナだけでなくアラブや世界の危機を優先すべき」:アラブ連盟事務総長

国連のディカルロ事務次長は、スーダンの紛争を終わらせるためにはアラブ諸国の役割が「カギ」となると述べた。(AFP)
国連のディカルロ事務次長は、スーダンの紛争を終わらせるためにはアラブ諸国の役割が「カギ」となると述べた。(AFP)
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10 Jun 2023 12:06:36 GMT9
10 Jun 2023 12:06:36 GMT9
  • 「国連安保理はウクライナだけでなくアラブや世界の危機を優先すべき」:アラブ連盟事務総長
  • UAE主催の会合で、「苦しんでいる何百万人もの人々」への援助不足が議論された

エファレム・ コッセイフィ

ニューヨーク:アラブ連盟は8日、国連安全保障理事会に対し、ウクライナ戦争を、イエメン、シリア、ソマリア、スーダンを含むアラブ地域をはじめとする世界で起こっている紛争やそれによる人道危機よりも優先させないよう求めた。

同連盟のアフマド・アブルゲイト事務総長は安保理理事国に対し、世界は緊張の高まりと主要国の二極化を伴う「非常に重要な岐路」にあるとしたうえで、その状況が世界を「核を用いた対立の瀬戸際」に追いやっており、集団行動による緩和効果はますます望めなくなっていると述べた。

また、その結果として、テロ対策、気候変動、技術の進歩が引き起こす混乱、大量破壊兵器の拡散などの現代の課題に対する対応が不十分になっていると指摘した。

アブルゲイト事務総長によるこれらの発言は、安保理の6月の議長国であるUAEが主催した、地域安全保障や人道的課題を含む様々な問題に関して国連とアラブ連盟による共同行動を強化する方法を議論するための安保理会合でなされたものだ。

この会合のためのUAEによるコンセプトノートは、リビア、シリア、スーダン、イエメンで今も続く紛争やイスラエル・パレスチナ情勢などの問題は「何百万人もの人々に想像を絶する苦しみをもたらしている」と強調した。

「さらに、レバノンやソマリアなどの国は深刻な経済危機、高い失業率、インフレ進行に直面しており、それによって脆弱性と人道状況が悪化している」

このノートはまた、今年シリアとトルコを襲った地震によって広範囲の家屋やインフラが破壊され多数の死者と数百万人の避難民が出たことで、地域の苦境に拍車がかかったことを指摘した。

「人道対応はかなりの規模で行われたが、特に様々な提供者からの支援を調整するうえで相当な障害に直面した」

アブルゲイト事務総長は次のように述べた。「国際秩序の頂点で緊張が広がると、地域紛争に対処する機会が失われる。人道援助や救援に払われるべき世界の注意もそちらに向けられてしまう」

また、スーダンで2ヶ月間にわたって「ハルツームが戦場となる現代史上前例のない状況」が続いており、死者や避難民が増え、略奪や国家機関の解体が続いていることに言及した。

「アラブ連盟は、スーダンおよび近隣諸国におけるこの状況の深刻さを認識したうえで、アフリカ連合(AU)をはじめとする他の地域機関と協力して、戦闘の完全な停止の実現や、政治活動再開に資する環境作りに向けて積極的に取り組んでいる」

そして安保理理事国に対し、「領土的一体性への脅威や国家機関の弱体化のない統一されたスーダンを我々の目標として」維持することに貢献するよう求めた。

さらに、パレスチナ人も終わらない占領と「イスラエル政府からの弾圧や暴力の高まり」に苦しみ続けており、同政府の行動と「過激なイデオロギーは前例のない右傾化を反映している」と訴えた。

「この政府は和平ではなく併合と入植を選択している」

「この政府は連日、国際法から完全に外れた政策や行動を実施しており、将来の二国家解決の可能性を損なっている」

「現在最も懸念すべきことは、パレスチナの人々が今感じている失望や絶望だ。彼らは政治的解決のプロセスを活性化できるという希望を全て失ってしまった」

そして、アラブ連盟の「主な柱」の一つである二国家解決は「唯一の道、繰り返すが持続的な和平への唯一の道」だとしたうえで、安保理に対しそれへのコミットメントを改めて表明するよう求めた。

アブルゲイト事務総長は、シリアのアラブ連盟復帰は同国の10年来の危機の解決に向けた一歩となるはずだと述べた。

「おそらくこの一歩により、我々は安保理決議第2254号に従ったシリア問題の政治的解決に向けて積極的に取り組まざるを得なくなるだろう」

また、シリア難民を受け入れているアラブ諸国は「シリア難民の自発的かつ品位ある帰還に資する環境を作り出すことで、そのような帰還のための解決策に至る」ことができるとの期待を表明した。

アブルゲイト事務総長はイエメンに関して、フーシ派の違反にもかかわらず、停戦は緊張緩和に大きく貢献したと述べた。

そして、同国では「壊滅的な」人道危機が続いているものの「特にフーシ派の側で十分な努力がなされるならば」政治的解決は依然として可能であるとしたうえで、3月にサウジアラビアとイランの間で結ばれた和解合意は「新たな展望を開くもので、その展望はイエメンの激化抑制を、もしかしたら紛争解決も、実現できるよう最適化されなければならない」と述べた。

さらに、リビアにおける国連の取り組みに対するアラブ連盟の支持を表明したうえで、同国における選挙は長引く国内危機の持続的な解決に向けた唯一の道であると改めて強調した。

国連のローズマリー・ディカルロ政治・平和構築担当事務次長は次のように述べた。「近年、多国間主義が大きな緊張に晒されている。制度やプロセスに対する信頼が酷く損なわれている。我々を縛る国際法や規範に対する公然の無視が、平和と安全を維持するための国際社会や地域の協力をこれまで以上に難しくしている」

また、そう言いながらも、「そのような緊迫した状況の中、国連とアラブ連盟の関係が依然として強固であることは心強い」と続けた。

ディカルロ事務次長は、スーダンの紛争を終わらせるためにはアラブ諸国の役割が「カギ」となるとしたうえで、アラブ連盟、AU、政府間開発機構、その他のパートナーによる和平努力を高く評価した。

また、サウジアラビアと米国の仲介で5月20日に結ばれたジェッダ合意が「大きな希望をもたらした(が、)残念ながら紛争当事者が(合意の)実施に失敗した」と述べた。

「そのうえ、スーダン国軍は即応支援部隊(RSF)が停戦に違反したとして交渉への参加停止を発表した」

「紛争当事者が停戦合意を守り続けることが極めて重要だ。しかし、それでも十分ではないだろう。戦闘の永続的な停止、そして最終的には政治プロセスの再開が必要だ」

ディカルロ事務次長はまた、イスラエル・パレスチナ紛争の二国家解決へのコミットメントを改めて表明するよう求めたアブルゲイト事務総長に同調した。さらに、リビアの危機の解決に向けたアラブ連盟の努力を高く評価した。

シリアに関しては、アンマンとジェッダで開かれたアラブ諸国の会合に言及するとともに、ジェッダで開かれたアラブ連盟首脳会議で採択された決議について、「シリア内戦解決に向けた唯一の国際的に合意されたロードマップである安保理決議第2254号(2015年)の重要性を反映した」ものだと指摘した。

また、「地域がシリアに対し改めて向けた注意を行動に移せば、交渉を通した紛争の政治的解決に向けた機運を高めることができるだろう」としたうえで、「被拘留者や失踪・行方不明者の現状に取り組むことが、持続的な和平に近づくために不可欠だ」と述べた。

さらに全当事者に対し、「この目的に向けて有意義な措置を取る」よう求めるとともに、安保理理事国に対し、行方不明者の現状を明らかにするための専門組織の設立を支援するよう呼びかけた。

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