
ラマッラー:水曜日にギリシャの沿岸の町ピロスから約50マイル離れた海域でボートが沈没した。乗船していた移民らの中にはパレスチナ人もいた。
この海難事故で少なくとも80人の移民が命を落とした。木曜日、救助隊はギリシャ沖を捜索したが、生存者が見つかる望みは薄れた。子供を含む数百人が、混雑した漁船の船倉内で溺死したのではないかという懸念が高まった。
リビアのトブルク港を出発し、早朝に転覆し沈没したこの漁船には、400人から750人が乗っていたとされている。
ギリシャ当局によると、これまでに104人の生存者が救助された。
ここ数週間でパレスチナ人の溺死事件は大幅に増加しており、ヨルダン川西岸地区のパレスチナ自治政府とガザ地区のハマスに対策を求める声が上がっている。
パレスチナ自治政府とハマスは、これらの事件を記録し、犠牲者の家族や悲劇が発生した国の関係当局と連絡を取る責任がある。
ほぼ毎週のように、リビア、チュニジア、モロッコ、トルコの海岸からパレスチナ人移民を乗せたボートが沈没し、数人の命が奪われている。
パレスチナ人はこれを「死の船」と呼ぶ。安全が保証されない旅にもかかわらず、子どもを乗せていることが多い。
アラブ・ニュースの取材に応じたパレスチナの情報筋によると、密航業者はゴムボートの乗客数を最大化するため、推奨される乗員数の2倍の人数を乗せるようにしている、と生存者は証言している。
ゴムボートは2つのエンジンで動くようになっているが、密航業者は燃料節約のため1つしか作動させない。
乗客の一人が選ばれ、ボートを操作し進路を決める方法を簡単に教わる。乗客は強風などの危険な状況に対処する経験はない。
パレスチナ外務省の政治顧問であるアフマド・アルディーク大使は、アラブ・ニュースに対し、水曜日の悲劇的な事故で命を落としたパレスチナ人の正確な数を知ることは困難であると語った。ある者は行方不明になり、ある者はパレスチナ大使館に協力しないギリシャやイタリアの沿岸警備隊によって逮捕されているからである。
アルディーク大使によると、パレスチナ人移民は、ガザ地区から来た者もいれば、シリアやレバノンから来た者もいる。彼らはギリシャへ渡航する危険な旅の費用として、密航業者に7000ドルから1万ドルを支払う。密航業者は、定員10人のボロ船に40~50人の乗客を乗せて運ぶ。これらすべての要因が、沈没に寄与している。
さらに、密航業者が乗客と口論になった場合、わざと船を沈めることもあるという。このような船の多くは、トルコやリビアから出発している。
アルディーク大使は、「この人道的悲劇の背後には、組織的な人身取引を行うギャングがいます。私たちはこの問題をパレスチナの世論に訴え、パレスチナの家族に、自分の子どもたちがこのような死の旅に出るのを止めるよう働きかけています」と述べた。
密航ギャングの餌食にならないよう子どもたちに伝えてください、とパレスチナの家族に訴えているにもかかわらず、この現象は続いている、とアルディーク氏は言う。
生存者の証言によると、沈没事故が起きた場合でも、密航業者はそのことを数日間は公表しない。乗客は時に激しく殴られ、虐待を受ける。また、ギリシャの島に到着したとしても、湾岸警備隊に止められ、手ひどく扱われるという。
アルディーク大使は、「我々は、この今も起きている災害を減らすため日夜努力しています。パレスチナ人が出発する国のパレスチナ大使館に対し、そのように出国しようとする若者を止めるよう呼びかけてほしい、と要請しています」と述べた。
また、同省には、行方不明者に関する情報を収集し、その家族、事件発生国の当局、パレスチナ大使館、沿岸警備隊警察と連絡を取ることを任務とする特別部署が設置されているという。
「特別部署の任務には、犠牲者を出した、または事故を起こしたギャングに関する情報収集について、パレスチナ情報局の協力すること、捜査・保護センターで逮捕された人々とのコミュニケーションをとること、彼らの状況について情報提供し家族を安心させること、子どもの遺体を持ち帰りたい家族の支援などが含まれます」とアルディーク大使は述べた。
「パレスチナの若者たちは、生計を立てなければならないというプレッシャーから、これらの船に乗ることを決意します。したがって、ガザへの軍事封鎖を解き、ガザの若者の生活環境を改善する必要があります」と同氏は付け加えた。
ハマス側は、モスクでの金曜説教やラジオ、テレビを通じてガザの市民を教育し、こうした危険な旅に参加しないよう促しているとしている。また、多くのアラブ諸国や非アラブ諸国に対して、ガザの大学の卒業生を自国の就職市場に受け入れるよう求めている。
ガザのアル・アズハル大学で政治学を教えるムカイマー・アブ・サーダ教授は、20代の若者が船で移住しようとしているのは経済的な理由によるものだとし、ガザ地区の大学卒業者の失業率の高さと就職先の少なさを指摘する。
「ガザ地区の若者の失業率は45%、大卒者の失業率は65%に達しています」とアブ・サーダ教授はアラブ・ニュースに語った。
「ガザの政府関係の仕事のほとんどは、ハマスのメンバーによって占められています」と同氏は述べる。ハマスに次ぐ雇用主とされる国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)は、求人を減らし、現在は日雇い労働者を雇ったり、年間契約で人を雇ったりしていると指摘した。
パレスチナ自治政府は2007年からガザ出身の大卒者の採用を中止しており、イスラエルでの労働許可証を取得することは難しい。
2006年以来、イスラエルの包括的な封鎖下にあるガザ地区には、約200万人が暮らしている。