• イエメンは、2015年の内戦勃発以前から世界で最も水不足に陥っている国のひとつに数えられている
• イエメンの地下水は、涵養の2倍の速度で汲み上げられている

イエメン・タイズ： 毎日、明け方になると、14歳のサリム・ムハンマド君は、水を汲むために家を出て、イエメン南西部にある彼の住む町を歩き続け、家から一番近くの公共給水所の行列に並ぶ。

彼と3人の兄弟は、なんとか学校の時間までにジェリ缶に水を汲もうと、少なくとも1.6キロを歩き、長いときには数時間にもわたって列に並ぶ。

「毎日運んでいる荷物の重みで、腕と背中が痛い」とタイズ市内にある元食料品店だった仮住まいのアパートでムハンマド君は語った。

「朝早く起きて父と一緒に家を出る。夜のこともある」と彼は言った。

2015年の内戦勃発以前から、水不足が世界で最も深刻な国に数えられていたイエメンでは、彼のような苦労をしている10代の子供たちがありふれている。

紛争と気候変動の組み合わせで、イエメンの水問題はさらに深刻化している。

紛争によって重要なインフラが破壊されるとともに、気温上昇と降水量の変化により、供給がさらに悪化していると、専門家や支援団体は述べている。

国連食糧農業機関（FAO）によると、イエメンの地下水は涵養の2倍の速度で汲み上げられているという。

現在のペースでいくと、アラビア半島で最貧の国イエメンは、20年以内に地下水が完全に枯渇する可能性があると 、FAOは述べている。

ムハンマド君の母親、ウーム・ムジャヒド氏は「私たちは毎朝、水を求めて競争している」と言う。35歳の彼女は、子供たちが町にいくつかある公共用タンクで容器に水を汲んでいる頃、「もらえるときもあれば、もらえないときもある。競争だ」と語った。

一家は紅海沿岸の港町ホデイダの戦闘を逃れ、長年、フーシ派に包囲されてきた行政府のあるタイズへと移住した。

FAOによると、イエメンで3番目に大きな都市であるタイズでは、人口の約半数に当たる約1450万人が安全な飲料水にアクセスできない同国においても、最悪の水不足に悩まされているという。

赤十字国際委員会（ICRC）のラルフ・ワハビ氏は「イエメンの水道網はイエメン国民の30％未満にしか届いておらず、数百万人が民間企業や安全でない井戸水に頼らざるを得ない」と述べている。

ICRCイエメン代表団の副団長である同氏は「子どもたちは特に弱い立場にある」と語った。

このような水不足で、多くの親たちは水を得るために子供たちの力を借りなければならない状況となっている。

サヌアにいるワハビ氏は「子供たちは家族のための水を得るために、数時間働くことを余儀なくされている」と言う。

「これは水不足がもたらした悲劇だ」

タイズでは水を求めて働くことが日常になっており、自身の身長ほどもあり、水を入れて家に戻るときには非常に重くなる大きな容器を背負った少年少女の姿がしばしばみられる。

タイズの水道局長サミール・アブデルワーヘド氏は、内戦の勃発前は90あった井戸が、現在は21だと述べ、フーシ派による包囲を非難した。

また「タイズでは一人当たりの供給量は一日当たり約0.7リットルだ」と述べた。

「タイズの多くの地域、町の約60%に、紛争開始以降、1滴の水も届いていない」子供たちが危機の矢面に立たされている、とアブデルワーヘド氏は語った。

「子どもたちは学校へも行けない。彼らは自分の分の水を得るために、学校の代わりに給水場に行くことを余儀なくされている。」と同氏は述べた。

ノートルダム大学のグローバル・アダプテーション・イニシアチブは、イエメンを地域で最も気候変動に脆弱な国のひとつに位置づけている。

イエメンの環境コンサルタントHolm Akhdar社の研究者マハ・アル・サレヒ氏によると、海面上昇と鉄砲水によって地下水の塩分濃度が高くなり、また、下水などの汚染物質が入り込んでいるという。

「イエメンの水問題は、量の不足だけでなく、質の悪さ、入手困難さ、価格の問題なども含まれる」と彼女は言う。

「これは、現地のイエメンの人々を極度の水不足に陥れるだけでなく、水の大半が農業に使用されるため、食糧問題にもつながる」

ワハビ氏によると、イエメンの紛争が解決したとしても、水不足の問題は続くという。

「明日イエメンに平和に戻ったとしても、水不足の問題は続く」と彼は言った。

AFP