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レバノン、シリア人行方不明者に関する国連決議への投票を棄権

パレスチナの旗の下を歩く人々。シリアのダマスカスのヤルムーク難民キャンプ。(AP)
パレスチナの旗の下を歩く人々。シリアのダマスカスのヤルムーク難民キャンプ。(AP)
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01 Jul 2023 08:07:06 GMT9
01 Jul 2023 08:07:06 GMT9
  • 運動家らや議員らは、数百人のレバノン人がシリアの刑務所に強制失踪させられて今も行方不明になっている中で下されたこの決定を非難している

ナジャ・フーサリ

ベイルート:レバノンは、シリア内戦中に行方不明や強制失踪となった約13万人の所在・安否の調査に特化した独立機関の設置に関する国連決議への投票を棄権した。

この決議は29日夜に開催された国連総会で採択されたもので、193ヶ国のうち83ヶ国が賛成、11ヶ国が反対、一部のアラブ諸国を含む62ヶ国が棄権した。

レバノン国民の多くは同国が棄権したことを非難した。レバノン内戦が終結し2005年にシリア軍が撤退したにもかかわらず今も多数の同国人が行方不明となっている現状をよそに下された決定だからだ。行方不明者の一部はシリアの刑務所に拘留されているものとみられる。

レバノンの弁護士で人権活動家のニザール・サギエ氏はアラブニュースに対し次のように語る。「行方不明者や強制失踪者のケースを追跡調査している(レバノン行方不明者・強制失踪者委員会は)独立した委員会であるため、シリアで失踪したレバノン人の所在・安否を直接明らかにするために、国連総会が設置を決定した独立機関と協力することができる」

「レバノンがこの決定に賛成したか反対したかはもはや重要ではない。拘束力のある国連決議となったからだ」

「レバノンは、この国家委員会が国連の独立機関と連絡を取るのを妨げることはできない。この委員会には前提条件として独立性があったのだから、失踪者のケースを追跡調査するためになすべきことを何者も禁止することはできない」

レバノン行方不明者・強制失踪者委員会は、「シリアの刑務所に強制収容されているレバノン人やシリア人の行方不明者のための投票をレバノンが棄権したことについて、ナジーブ・ミカティ暫定首相およびブー・ハビーブ外相を含む内閣の責任」を問うと述べた。

同委員会の統計によると、現在多くの兵士を含むレバノン人622人が行方不明・強制拘留の身となっている。同委員会は、彼らの所在・安否が明らかにされるよう、また亡くなった人々の遺骨が遺族のもとに返還されるよう要求している。

また、同外相に対し、「直ちに辞任し、バッシャール・アサド大統領の刑務所やレバノンの全ての刑務所にいる行方不明者・強制失踪者の家族に謝罪する」よう求めている。

レバノン外務省は棄権の決定について、「ナジーブ・ミカティ暫定首相と協議したうえで、投票を棄権するというアラブ諸国の半数のコンセンサスに従って下された」と説明した。「レバノンはこの件を政治化したくないからだ」

「レバノンは、シリア難民の問題と共に、この件の解決に引き続き尽力する。レバノン、シリア、アラブや世界の関係諸国の間の対話や理解を通してだ」

同省は、「レバノンは、まだ実施されていない多数の決議を含む全ての正当な国際決議の実施を尊重し遵守する」と改めて強調した。

レバノンやシリアで行方不明者・強制失踪者となった人々の家族は、内戦が始まって以来何十年も街頭で抗議を続けている。

母親たちは自分の息子、夫、兄弟の写真を掲げ、国連の前にテントを立て、彼らの所在・安否を明らかにするよう求めている。

この問題を終わったことにしようとするシリアの努力は全て失敗に終わっている。シリア体制は行方不明者・強制失踪者が同国国内の刑務所にいることを認めていない。

かつて拘留され、現在は「レバネーゼ・ポリティカル・ディテイニーズ・イン・シリアン・プリズンズ」の代表を務めるアリ・アブー・デヘン氏は、今回の国連決議は「シリアに圧力をかけるために国連内の大きく有力な勢力が押し付けた政治的文書」だと指摘する。

レバノンの決定には驚いていないという。同国は「シリアの刑務所にいる622人の行方不明者について調査したことがない」からだ。

「行方不明者・強制失踪者もいるし、拷問を受け亡くなり集団墓地に埋葬された人々も何百人もいる」

レバノンの元法相であるアシュラフ・リフィ氏はレバノンの棄権について、「道徳的にも国としても逆行であり、卑怯な犯罪、責任逃れの手段だ」と言う。

「シリア体制はレバノンとシリアにおいて拉致や拷問などの犯罪を行ったのだ」

ジョージ・オカイス議員は次のように語る。「我々は、この決議への賛成票を棄権したレバノンの決定を恥じるのと同時に、この国連決議が加盟国の過半数によって採択されたことに非常に満足している」

「世界は、シリア体制が何十年にもわたってシリアとレバノンの人々に対し負わせてきた悲劇の規模を知るだろう。私を含むレバノンの人々がレバノン行方不明者・強制失踪者国家委員会に求めるのは、国連が設置する委員会と連絡を取って、シリアの刑務所にいるレバノン人強制失踪者の所在・安否確認も管轄に含めるよう頼むことだ」

改革派のイブラヒム・ムネイムネ議員は次のように言う。「外相の決定を、国益に基づいた積極的な外交政策の一環と見なすことはできない。憲法の序文や、国連拷問禁止条約を含むレバノンの国際的義務に対する違反にあたるからだ」

「これはレバノンが歴史的に果たしてきた役割に反するものであり、虐待と無法国家を支持する国々にレバノンを仲間入りさせるものだ。この決定はレバノンの利益を考慮していない。特に、失踪してシリアの刑務所にいるレバノン人たちに加え、レバノンのジャーナリストでシリア(内戦)中に失踪したサミル・カッサブ氏の問題だ。この委員会が彼らの所在・安否を明らかにすることに貢献するかもしれないからだ」

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