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フランクリー・スピーキング:サウジアラビアとイスラエルの国交正常化のために必要なこととは?

ヨシ・メケルバーグ教授がケイティー・ジェンセン氏司会の番組「フランクリー・スピーキング」に出演した。(AN Photo)
ヨシ・メケルバーグ教授がケイティー・ジェンセン氏司会の番組「フランクリー・スピーキング」に出演した。(AN Photo)
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07 Aug 2023 11:08:38 GMT9
07 Aug 2023 11:08:38 GMT9
  • チャタムハウスのヨシ・メケルバーグ教授が、サウジアラビアの国交正常化の夢を実現するためには、イスラエルがアラブ和平構想の条件を満たす必要があると述べた
  • 同教授はイスラエルのネタニヤフ首相が、極右政党をなだめる一方で、国交正常化取引で和平というレガシーを残したいと考えている、という

ケイティ・ジェンセン

ドバイ:イスラエルがサウジアラビアとの国交正常化の夢を実現するためには、2002年にサウジアラビアが提案したアラブ和平構想に示された条件を満たす必要がある、とチャタムハウスの中東・北アフリカプログラムでアソシエイトフェローを務める、ヨシ・メケルバーグ氏が語った。

アラブニュースの週刊時事番組「フランクリー・スピーキング」の直近の放映回に出演したメケルバーグ氏は、アラブ和平構想は紛争を終結させ、国交正常化を達成する手段として「21年前と同じように現在でも重要だ」と述べた。

ヨシ・メケルバーグ教授がケイティー・ジェンセン氏司会の番組「フランクリー・スピーキング」に出演した。(AN Photo)

トーマス・フリードマン氏はニューヨーク・タイムズ紙の最近のコラムで、サウジアラビアとイスラエルの国交正常化合意は、イスラエルのネタニヤフ首相の閣内にいる極右勢力に、さらなるパレスチナ領土の併合か、アラブ・イスラム社会との和平の受け入れかの二者択一を迫ることになるだろうと述べている。

ピューリッツァー賞を受賞したジャーナリストであるトーマス・フリードマン氏は、この発展の可能性の重要性を知っているはずだ。2002年にある有名なコラムでアブドッラー国王の構想の詳細を明らかにしたのは同氏なのだから。

2002年にサウジアラビアのアブドッラー前国王が提唱したアラブ和平構想は、同年のベイルート・サミットでアラブ連盟によって承認された。2007年と2017年のアラブ連盟首脳会議でも再度承認された。

このアラブ和平構想は、イスラエルによるアラブ占領地からの完全撤退、パレスチナ難民問題の「公正な解決」、東エルサレムを首都とするパレスチナ国家の樹立と引き換えに、アラブとイスラエルの国交正常化を提示するものであった。

「実際、当時のサウジアラビアはイスラエルとの国交正常化について、それが望ましいことであり可能なことであるという、ふさわしい論調を打ち出したのだと思います」とメケルバーグ氏は語った。

「しかし同時に、条件が一つあり、その条件とは、イスラエルとパレスチナが未解決の問題をすべて解決することなのです」

「視聴者の皆さんには、これが2002年のことであり第2次インティファーダのさなかだったので、このようなこと(ブレイクスルー)は不可能に思えたことを思い起こしていただきたいのです。しかし、サウジアラビアによる適切なアプローチがあれば、真のブレイクスルーになったかもしれません」

「イスラエルは実際には、宣言全体に姿を変えたこの提案を拒否しました。このことは、21年前と同じように、現在でも重要だと思います。そして、もしかするとそれが望ましい目標なのでしょう」

サウジアラビアをはじめとする数カ国は、イスラエルとの正式な国交正常化の検討に同意する以前に、アラブ和平構想の実現を依然として望んでいる。

フリードマン氏によれば、サウジアラビアとイスラエルの関係を正常化しようとする米国の仲介による合意は、米国政府がサウジアラビアにも一定の安全保障を示す必要があるという。イスラエルで起きている反民主主義的な動きに米上院の民主党が先送りにすれば、合意は実現しない可能性があると同氏は述べた。

同氏は、ジョー・バイデン米大統領と同政権に対し、イスラエル政府の極端なアジェンダと、オスロ和平プロセスと二国家解決のためのロードマップを解体しようとする試みを阻止するよう、イスラエル側に働きかけるよう求めた。

ワシントンDCのホワイトハウスの大統領執務室で、イスラエルのヘルツォーク大統領と会談するジョー・バイデン米大統領。(資料/AFP)

「フリードマン氏が言っていることを私が解釈するならば、宗教シオニズム党、イタマル・ベングビールやべザレル・スモトリッチのような人々、そして彼らの支持者たちの考えを変えることは可能で、彼らは和平のために必要な譲歩を、こうした地域の正常化や受容と引き換えにするでしょう。彼が正しくて、それが可能なら、なぜそうしないのでしょう?でも、こんなことが起こるとはとても考えられません」とメケルバーグ氏は語った。

汚職容疑を巡る裁判が迫っているため、メケルバーグ氏は「ネタニヤフ首相は政権を崩壊させるわけにはいきません……ネタニヤフ首相の最大の関心事は、この汚職容疑を巡る裁判を頓挫させ、刑務所に収監される事態を回避する方法を見出すことなのです」と語る。

昨年のバイデン大統領のサウジアラビア訪問以来、米国はサウジアラビアとイスラエルの和平交渉を推進してきた。今年、ジェイク・サリバン国家安全保障顧問とアントニー・ブリンケン米国務長官によるハイレベル訪問も、国交正常化の取り組みに焦点を当てたものだった。

しかし、ブリンケン米国務長官は6月にワシントンで開催されたAIPACの会合で、いかなる国交正常化も「パレスチナ人の幸福を増進させるものでなければならない」と述べたが、米国が入植地の凍結やヨルダン川西岸地区の併合を決して行わないという保証を求めるかどうかについては不明である。

米Axiosの報道によれば、ホワイトハウスは年内にサウジアラビアとイスラエルが合意し、2024年の選挙に先立ってバイデン政権が選挙遊説で大きな後押しを受けることを望んでいるという。

ワシントンで開催された米国イスラエル公共問題委員会(AIPAC)政策サミットで発言するアントニー・ブリンケン米国務長官。(資料/ロイター)

メケルバーグ氏は、「原理的には、米国はイスラエルに対して大きな影響力を持つことが可能だ」としながらも、バイデン大統領がこの「影響力や権力を……選挙の年に」行使するとは思っていない、と述べた。

結局のところ、ネタニヤフ首相と同政権の政府が、汚職容疑を巡る裁判は「サウジアラビアとの国交正常化にとって二の次」であり、「国交正常化はイスラエルの将来にとって重要である。イスラエルの安全と繁栄を長期的に保証するものである」と判断した場合にのみ、国交正常化は成功する、とメケルバーグ氏は論じた。

しかし、そのためにはイスラエルの政党が「非常に持ち上げられた地位から身を引く」必要があり、それは難しいだろうと同氏は付け加えた。

メケルバーグ氏は、国交正常化は「喜ばしいことだ」としながらも、この地域の他の国々が過去にイスラエルとの外交関係を改善しようと試みたものの、望ましい結果は得られなかったと述べた。

イスラエルのネタニヤフ首相とバーレーン、UAEの各外相が、ホワイトハウスでユダヤ人とアラブ人の国家間関係を正常化する歴史的合意に調印した。(資料/AFP)

同氏は、イスラエルとUAE、バーレーン、スーダン、モロッコをはじめとした国々との間で2020年に結ばれたアブラハム合意を「前向きな進展」としながらも、次のように付け加えた。「それでも、依然としてパレスチナ問題は残されています。そして、これは見て見ぬふりをされている重要な問題であり、今でも無視されている問題です」

メケルバーグ氏は、イスラエルがアブラハム合意を利用して「より安心感を得ようと」し、パレスチナ人に対して「さらにいっそうリスクを冒そうとしている」とみている。イスラエル政府の根底にある思いは、「世界中がもうパレスチナ人のことなど気にしていない。ただで国交正常化が手に入るのだから」というものだと同氏は語った。

サウジアラビアとイスラエルの国交正常化に向けて、ここ数週間、期待と疑念の両方が巻き起こっている。メケルバーグ氏は、外交的な前進はあったものの、全面的な国交正常化への道には課題が山積みになっていると考えている。

ネタニヤフ首相は以前から、国交正常化が政府の最優先課題であり、中東紛争の終結につながるものだと主張してきたが、メケルバーグ氏は、ネタニヤフ首相が極右翼政権によって「人質に取られた脆弱な指導者」ではないかとの懸念を示した。

エルサレムの首相官邸で開かれた週次閣議で発言するイスラエルのネタニヤフ首相。(資料/AFP)

サウジアラビアは一貫して、サウジアラビアとイスラエルの国交正常化の成否は、イスラエルがパレスチナ人の苦境に対処し、パレスチナ人が応じることのできる公正な解決策を打ち出すことができるかどうかにかかっていると語ってきた。

サウジアラビアのムハンマド・ビン・サルマン皇太子は、5月にジェッダで開催されたアラブ連盟サミットでこの立場を強調し、「パレスチナ問題はアラブ諸国にとって重要問題であり、今もなおサウジアラビアの最優先事項である」と述べた。

しかし、サウジアラビアがパレスチナの独立国家としての地位、ひいては中東和平を推進し続ける一方で、メケルバーグ氏はネタニヤフ首相の優先事項に懐疑的な態度を示している。

同氏は、ネタニヤフ首相は「ジェッダやリヤドまで鉄道を走らせることを公然と夢見ているが、それが実現するまでには一定の譲歩が求められることを忘れている」と語った。

歴史的な敵対国間の国交正常化は「可能」だが、イスラエルの極右翼政権がサウジアラビアを納得させるようなパレスチナ人に必要な譲歩をするという根拠はないと同氏は考えている。

ヨシ・メケルバーグ氏は、毎週のように起きているデモと、国の民主主義を脅かすと批判されている司法改革によって不安定になっているため、「イスラエルは大きな危機に陥っている」と付け加えた。

ネタニヤフ首相の新たな司法改革のおかげで、「何十万人もの人々が路上に出てデモをしており、それと同時に入植地が拡大しています。これはイスラエルで最も極右的な政府です。ですから、正常化することはありえても、おそらく今は無理でしょう」

「フランクリー・スピーキング」の司会者ケイティー・ジェンセン氏。(AN Photo)

クネセトが最近可決した新しい政治改革、すなわち「合理性の原則」を廃止する法案には大きな懸念がある。

これまで、イスラエルの最高裁判所は、政府が無謀な行動をとっていると判断した場合に介入することができた。しかし先月、政府のメンバー64名全員がこの法律の廃止に賛成した。つまりイスラエル政府は、半数を少し上回れば最高裁の決定を覆すことができるということだ。

物議を醸しているこの改革は同国を二分し、年初から毎週のように大規模なデモや警察との衝突が起きている。何十万人もの人々がデモに参加し、膨大な数の人々が逮捕された。

メケルバーグ氏は、司法改革がイスラエルにとって「真の危険」であるとし、現政権が民主主義から遠ざかる道を歩んでいると非難している。

同氏は、ネタニヤフ首相は「サウジアラビア(とイスラエル)の国交正常化とアブラハム合意の完遂という……和平のレガシーを残したい」と考えている一方で、さらに厳しい法改正を求める極右政権をなだめようとする政治的な泥沼にはまり込んでいる、と付け加えた。

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