
バグダッド:イラク首都、焼け付くような夏の暑さの中、1対のシベリアトラが動物園の柵の中にある池畔で、絶え間なく息を切らせている。
14日のバグダッドの気温は2日連続で摂氏50度(華氏122度)に達し、屋外での生活は人間にも動物にも耐え難いものとなった。
この極東ロシアから来たオレンジ色で縞模様のネコ科動物は、世界で一番暑い町の一つよりも「最低気温マイナス20度にまで下がる場所」での生息に適していると、バグダッド唯一の動物園で獣医をするワッシム・サリ氏は言った。
長年の混乱とずさんな管理による資金不足と老朽化により荒れ果てた動物園施設が、ライオン・外来鳥・クマ・サルなど約900匹の動物の事態をさらに悪化させている。
ほとんどの区画は野外にあり、「暑い気候で暮らす動物に適しています」とサリ氏。「寒さに慣れている動物用の区画はありません」
気温を下げようと、ライオンの檻の前には冷房器具が設置され、クマとトラにはプールが提供された。
イラクは国内ニーズを満たすだけの十分な電気を提供できておらず、その結果、一日で最大10時間に及ぶ停電に苦しんでいる。
バグダッド動物園では1970年以来大きな修復が行われていないとハイダー・アル・ザミリ園長は言い、当局が割り当てたわずかな資金でのやり繰りを強いられている。
サリ氏によると、そうした状況下では「当動物園の動物たちは他の動物園に比べて寿命が短いのだ」という。
バグダッド動物園のシベリアトラは17〜18年生きるが、他の動物園での平均寿命は20〜25年で、暑さにより差がついているとサリ氏は述べた。
サリ獣医によると、動物園では近年、クマ・ライオン・鳥が死亡しており、一部は気候変動による気温急上昇によるものだという。
国連によると、イラクは世界で最も暑い5カ国の一つで、最も気候変動の影響を受けているという。
現在イラクでは4年連続で干ばつが発生している。
屋外でのレジャーにはあまりにも暑すぎて、園内には一人も客がいなかった。サルの叫び声と鳥の鳴き声だけが聞こえていた。
動物園の従業員カラー・ジャッセム氏は園内を歩き回っていた数人のうちの一人で、過酷な太陽の下で動物に餌をやっていた。
イラクで暑さにさらされながら屋外で働く労働者と同じく、32歳のジャッシム氏も家族を養わなければならないのだと言った。
ジャッシム氏の一カ月当たりの稼ぎはわずか25万イラク・ディナール(約165ドルまたは150ユーロ)だ。
従業員の給料は「とても低く、怪我や関節痛の恐れなどの危険要素に見合っていません」と言ったのはサリ氏だ。
サリ獣医は、バグダッド動物園を管轄するバグダッド当局を含む関係組織に連絡を入れたと言ったが、まだ「聞く耳」を持たれていないという。
サリ氏の予想では、動物園は大規模修復計画がないまま閉園せざるを得なくなるだろうとのことだ。
「そうしたらコミュニティ全体が負け組になるのです」
AFP