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スーダン紛争が外交と緊張緩和を拒否する理由

4月15日に始まった、スーダン国軍と準軍事組織「即応支援部隊」の間での戦闘が継続する中、ハルツーム南部での火災から立ち上る煙。(AFP)
4月15日に始まった、スーダン国軍と準軍事組織「即応支援部隊」の間での戦闘が継続する中、ハルツーム南部での火災から立ち上る煙。(AFP)
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15 Aug 2023 01:08:35 GMT9
15 Aug 2023 01:08:35 GMT9
  • 交戦中の両陣営が再三にわたって脆弱な停戦協定を破ったことで、協議自体が中断するに至っている
  • 数多くの人々が、権力の分割への調整のみが、短期的にも長期的にも緊張状態の緩和を促す誘因になり得ると考えている

ロバート・ボシアガ

ケニア、ナイロビ:4ヶ月目を迎えようとしているスーダン紛争は、対立する陣営が交渉の席に戻る兆しも見えないまま、激化し続けている。

スーダンでは、現在、400万人以上の人々が自宅からの退避を余儀なくされている。320万人はスーダン国内で国内避難民となっており、90万人近くはチャドやエジプト、南スーダン、その他の国々へと国境を越えて退避している。

戦闘は絶え間なく行われているが、いずれの陣営も勝利に近づきつつあるわけでも、戦場から利益を得ているわけでもないと考えられている。こうした膠着状態ではあるが、多くの人々は、権力の分割への調整に向けての対話こそが、短期的にも長期的にも緊張状態の緩和を実現する唯一の道筋だと考えている。

スーダン主権評議会のマリク・アガール副議長は、最近、紛争当事者の分離に始まり、包括的な政治プロセスに至る、政府の提案する紛争終結のためのロードマップを発表した。

8月6日に概要が発表されたアガール副議長の提案は、人道援助の展開と市民の安全をまず最優先し、その後、権力の分割の合意に至った上で包括的な政治プロセスに焦点を移すという内容だった。

しかし、こうした和平構想に対して、アナリストたちは慎重な姿勢を堅持したままである。アナリストらは、、互いに敵対するスーダンの国軍と民兵組織による永続的な解決への取り組みを阻み紛争をさらに長期化させ得るいくつかの要因を指摘している。

8月8日ソーシャルメディアに投稿されたUSGビデオ映像からキャプチャされたこの画像では、オムドゥルマン中心部で、スーダン国軍(SAF)の兵士がピックアップトラックの後部荷台に取り付けられた銃座から機関銃で迅速支援部隊(RSF)の拠点の掃射を行っている。(AFP / UGC画像)

「停戦が長続きしたことはほぼありません。特に紛争の序盤では、停戦はほんの数時間で破られることがしばしばでした」と、南スーダン系アメリカ人の政治学者であるアビオル・ルアル・デン氏はアラブニュースに語った。

「これは、つまり、いずれの陣営も相手方の勝利を受け入れたくないという状況を浮彫りにしています」

むしろ、アナリストらは、維持可能な解決策を見出すのであれば、軍事化と部族主義の軽減を含む、紛争の根本原因への取り組みを行う必要があると確信している。また、彼らは、薄れつつある国際社会の関心を回復させる措置も必要になると考えている。

アブドゥルファッターフ・ブルハン将軍に率いられたスーダン国軍(SAF)と、モハメド・ハムダン・ダガロ (通称ヘメッティ)将軍に指揮される迅速支援部隊(RSF)との間の権力闘争は、4月15日に戦闘へと発展した。

この紛争により大規模な人道的緊急事態が引き起こされた。数千人の死傷者と数百万人の避難民が発生したのだ。

武力紛争位置・事象データプロジェクトの控え目な見積りでも、戦闘によりスーダン国内で少なくとも3,900人が殺害された。国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)によれば、400万人以上が自宅からの退避を余儀なくされた。

スーダンのダルフール地域での紛争から逃れ、スーダンとチャドの国境を越えたスーダン人の荷物を運ぶチャドの荷車業者たち。チャド、アドレ。2023年8月4日。(ロイター通信)

国連は、スーダンでは600万人以上の人々が「飢餓のたった一歩手前」の状態にあると発表している。複数の援助団体が、官僚的なハードルや治安上の問題、標的型攻撃に抗して救命のための援助物資を届けるために苦闘している。

協議を開始し解決策を見出そうとする国際社会の取り組みにも関わらず、両陣営が一連の脆弱な停戦協定を繰り返し破棄することにより和平交渉が中断せざるを得ず、その結果、紛争は長期化している。

RSFがハルツーム外への部隊再配置を拒否したため、SAFは、7月、ジェッダでの協議から自らの側の交渉団を撤退させた。

外交官や援助機関は、人道的観点とより広域での地域安全保障の観点から、長期化する紛争の影響を懸念している。

実際のところ、両陣営間の戦闘はスーダンを全面的な内戦に突き落とし、近隣諸国をも争いに巻き込み、さらには、国境地帯を過激派組織による搾取が横行する地域に変容させかねない。

SAFは、最近数週間で、北部のナイル川州と都市カッサラに訓練キャンプを設立し、志願兵に基礎訓練を行い、動員力の強化に努めている。こうした志願兵の中には未成年者も含まれているとの報道もある。

スーダンの準軍事組織「即応支援部隊(RSF)」のツイッター上のページに7月28日に投稿された配布ビデオ映像からキャプチャされた画像には、詳細非公開の場所でRSF戦闘員に演説を行うモハメド・ハムダン・ダガロ 指揮官の姿があった。(AFP)

戦闘員の徴募が部族間の境界線に沿って行われていることによって将来への懸念がさらに高まっている。そうした徴募により、地域社会間の緊張が高まり得るからである。こうした展開が紛争自体を長期化させる要因となっていく可能性があるのだ。

スーダンでは、今回の激しい紛争以前から、長期にわたって軍事化が進行していた。SAFとRSFの双方が、紛争前に、教育省すらも凌駕して、既に国内最大の雇用主となっていたのだ。

スーダンの多くの人々にとって、SAFは、数々の残虐行為の申し立てがあるにせよ、依然として国家と関連づけられている。他方、RSFは、地方の準軍事組織から国軍に対抗し得る部隊にまで成長した傭兵による民兵組織と看做されている。

「首都で公的な支持を得られなかったRSFは、信頼できない市民を追い出してしまおうと、容赦のない軍事行動を展開し続けています」と、戦略・安全保障研究のオサマ・アーメド・ オドロス・アーメド准教授はアラブニュースに語った。

「現在、RSFは略奪やレイプ、無辜の一般市民への無慈悲な攻撃といった悲惨な犯罪を重ねて、戦略的拠点を支配下に置こうとしています」

しかし、ハルツームの住民からの支持の不在がRSFのアキレス腱となる可能性があり、それによりRSFはSAFとの妥協点を見出さなければならなくなるかもしれない。

-スーダン史は復活と忍耐の歴史であり、スーダンの人々は平和と安定のチャンスを勝ち取るのに値すると、南スーダン系アメリカ人の政治学者であるアビオル・ルアル・デン氏は語る。(提供画像)

安全保障とイスラーム過激派の専門家であるマルコ・アルナボルディ氏は、RSFが「反抗的な市民の敵対的姿勢に直面し、それが結局のところRSF自身の権力強化の障害となっていることを十分承知しているため」、RSFはやがてSAFとの合意に至ることになると主張している。

アルナボルディ氏は、RSFの戦略的アプローチは、それ故に、交渉の開始までに軍事的立場を強化しておくことであり、そのため、膠着状態が長期化する見込みが非常に高いと語る。

「RSFは、現状の複雑さを認識した上で、継続的に軍事的成果を上げることでその地位の強化に努める決意を固めてしまっています。RSFの目標は、実際の国家統治どころか、スーダンを事実上の支配下に置くことですらありません」と、アルナボルディ氏はアラブニュースに語った。

「SAFも、また、特にハルツームにおいて、失ってしまった支配地域を取り返すことにおいてひどく無能であることを示し続けており、純軍事的観点からは、長期的な膠着状態となる可能性が高いのです」

「RSFは、スーダン国内での軍事的支配を拡大する一方、内部的な混乱や不適切な補給線と苦闘しています」

支配を放棄し誠実な政治的言説を受け入れるようにRSFに圧力をかけるという考えには一理あるかもしれない。しかし、この道筋にも課題が伴っている。

専門家らは、、紛争の根本原因への取り組みを行うことが、紛争のさらなる激化を防ぎ、永続的な解決を達成する鍵になると語る。(ロイター通信)

「多様な派閥やエリートの間で権威や利害が分裂しているため、国家にとって調和の取れた結果がもたらされる可能性が減じてしまっています」と、 オドロス・アーメド准教授は語った。

「RSFは外部に支持者を有しているため、外部からの増援を受けたRSFが軍事的解決を実現する可能性もあります。しかし、交渉による合意や地域大国による国際的圧力の介入、外部からは伺い知れない和解工作の継続を通じた政治的解決の可能性もあるのです」

デン氏は、紛争を縮小させ、民主主義体制への移行プロセスを再開するにあたっては、文民指導者や地域大国、国際社会を巻き込んだ多面的な取り組みが必要であることを強調した。

「重要となる第一歩には、安定と包摂に向けた国家運営を行う上で最重要な役割を文民指導部が担う民主主義への移行を主張することが含まれるべきです」と、デン氏は述べた。

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