ベイルート:クルド人が支配するシリア北東部で、米国が支援する組織の戦闘員と指導者が拘束された傘下組織のメンバーが衝突し、民間人3人を含む22人が死亡したと、戦争監視団が29日に発表した。
シリア人権監視団は、ダイル・ザウル県東部にある複数の村で衝突が起き、「地元の戦闘員16人とシリア民主軍(SDF)の兵士3人が死亡した」と伝え、死者数を先の報告から上方修正した。
また、この衝突では子供2人を含む3人の民間人が死亡したと付け加えた。
米国が支援するクルド人主体のSDFが戦闘の指揮を執り、ダーイシュが2019年に支配下に置いたシリア最後のテリトリーからダーイシュの戦闘員らを排除した。
同監視団によると、この傘下組織「ダイル・ザウル軍事評議会」を率いているのは、27日遅くにハサカ市で拘束されたアフマド・アル・ハビール司令官(通称アブー・ハウラ)。
さらに、英国に拠点を置きシリア国内に情報網を持つ同監視団は、この動きが緊張状態を生み、武装集団によるSDF駐屯地の襲撃から数々の衝突へと発展していったと語った。
ハビール司令官に対する容疑はまだ不明である。しかし、同監視団や活動家などがAFP通信に明かした内容によれば、ハビール司令官は密輸に関与していたことが知られており、長年にわたって多額の富を蓄積していたのだという。
ダイル・ザウル軍事評議会は、SDFに所属するアラブ系組織の1つであり、アラブ人が多数派となっているダイル・ザウル県の一部で治安を担っている。
この県の大部分は、ダーイシュを排除した後にクルド人が手にしたシリア北部と北東部にある半自治政府地域の一部である。
クルド人は、アラブ人に不満が生じないように、地元の民間人と軍事評議会を通じてこの地域を管理している。
DeirEzzor 24というメディアプラットフォームを運営する活動家のオマール・アブ・レイラ氏は、次のように語っている。「今起きているのは、仕返しです」
「腐敗した司令官たちは、アブー・ハウラが拘束されたのを見て自分たちに危険が迫っていると感じ、身を守るためにそれを部族やアラブの問題にしようとしています」とし、この騒動は「地域に悪い影響を与える」可能性があると警告した。
SDFはコメントを出してないが、発表した声明文の中で、ダイル・ザウル県においてダーイシュおよび「麻薬取引に関与し、武器の密輸で利益を得ている犯罪者」に対する「治安強化作戦」を28日に開始したと述べた。
そして、「犯罪活動に関与した者を逮捕するために」作戦を継続していると付け加えた。
メディアに話す権限が無いため、匿名での取材を求めたSDF関係者によれば、衝突が起きた地域は「既知の密輸ルート」沿いにあるという。
シリアの内戦は2011年に勃発して以来、外国勢力やテロリストを巻き込む激しい紛争へとエスカレートし、50万人以上の死者を出している。
AFP