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子供兵士の徴募急増で長期的な社会的損傷を引き起こすスーダン紛争

スーダンで広範に広がる極端な貧困は、4月15日以降、ハルツームや他の都市で膠着化した激しい権力闘争を継続する対立勢力の手中に数多くの子供たちを追い込んでいる。(提供写真)
スーダンで広範に広がる極端な貧困は、4月15日以降、ハルツームや他の都市で膠着化した激しい権力闘争を継続する対立勢力の手中に数多くの子供たちを追い込んでいる。(提供写真)
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02 Sep 2023 12:09:23 GMT9
02 Sep 2023 12:09:23 GMT9
  • スーダン紛争の両陣営は戦闘を行うために14歳の年少者すらも徴兵していると監視団体が述べている
  • 専門家らは、金銭や偽りの約束で子供たちの関心を引き兵士として誘い込んでいると指摘している

ロバート・ボシアガ

ケニア、ナイロビ:スーダンで継続している内戦において、両陣営は子供兵士を徴募している。これは、スーダンの国家の骨組みを破壊しかねない残酷な方策である。

スーダンの首都ハルツームは、現在、悪夢のような台本の登場人物を子供兵士たちが演じる戦闘地域となっている。即応支援部隊(RSF)とエル・シャジャラ装甲部隊の最近の衝突では、双方の陣営の子供兵士による戦闘が複数目撃されており、スーダンの子供たちが耐え忍んでいる恐怖が露呈した格好となった。

スーダンでの子供兵士の徴募の拡大には憂慮すべきものがある。部族や政治的所属を超越した搾取の組織的なパターンが多様な地域からの証言により明らかとなりつつある。

スーダン国内の2つの主要な紛争当事者であるスーダン国軍とRSFが子供兵士の徴募に関与している。目撃者らの証言からは、強制や恐怖、操作という動揺を誘うような物語が浮かび上がってくる。子供たちは、日常的に、自らの意思に反して戦闘に強制的に参加させられたり、物的、金銭的利益の約束でおびき寄せられたりしているのだ。

目撃者らの証言からは、強制や恐怖、操作という動揺を誘うような物語が浮かび上がってくる。子供たちは、日常的に、自らの意思に反して戦闘に強制的に参加させられたり、物的、金銭的利益の約束でおびき寄せられたりしているのだ。(提供画像)

「スーダンで子供兵士が徴募される根本的な理由は多面的で単純ではありません」と、戦争で荒廃したダルフール地方の都市ニャラのジャーナリストであるアーメド・グージャ氏はアラブニュースに語った。

極端かつ広範な貧困が、多くの子供たちを民兵組織の手中に追い込んでいる。

「食料などの基本的生活必需品や将来への展望を得られない若年層の多くは、生存手段として武装集団に引き付けられてしまうのです」と、グージャ氏は指摘した。

グージャ氏は、RSFに加わったニャラ市域の若い人々の数多くを個人的に知っている。グージャ氏の従兄弟2人も既に準軍事組織RSFに入隊している。2人は、いずれも18歳未満で、初等教育すら未修了である。

ダルフール弁護士協会は、戦争で荒廃したアフリカ国家スーダンにおける子供兵士の徴募の増加に警鐘を鳴らしている。RSFは「金銭」と「偽りの約束」を組み合わせて新兵を誘い込んでいるのだと、同協会は解説した。準軍事組織RSFは、こうした手段で14歳の年少者すらも徴兵している。

「こうした行為は、紛争が国際的か国内限定のものかを問わず、戦争犯罪と看做されます」と、同協会は最近の生命の中で述べた。

こうした法的見地をよそに、スーダンは未成年の兵士を徴募するのに理想的な状態にある。

国連児童基金(UNICEF)によると、スーダンでは戦闘により最近数ヶ月で、百万人以上の子供が退避を余儀なくされたという。そして、さらに悪いことに、死亡や負傷をした子供の人数はそれぞれ数百人と数千人に上っている。

集団墓地に子供たちの遺体が葬られ、また、少女に対して性的暴力が振るわれているとの複数の報告もある。

紛争は、民間人の居住地域にも及んでいる。学校は閉鎖されたままであり、児童施設は攻撃対象となっており、重要な医療施設も略奪や破壊を受けている。こうした悲惨な状況のため、スーダンで窮地に陥っている民間人らが切望している援助を人道支援機関が提供することが困難化している。

エル・シャジャラ地域の状況は、この紛争がスーダンに与えた致命的に深刻な損傷をあらわに示している。白ナイル川沿いのハルツーム南西部のエル・シャジャラは、元々、非常に平穏な地域だった。

2023年8月22日にX(旧ツイッター)に投稿された、スーダン軍兵士がハルツームのエル・シャジャラ軍事基地とされる場所で準軍事組織である即応支援部隊(RSF)の戦闘員に対して発砲している様子を映しているとされるUGCビデオからのスクリーンキャプチャ。(AFP / UGC / X)

しかし、この紛争が始まってからは、エル・シャジャラは暴力と絶望を連想させる地名となってしまった。戦闘機が上空を飛び、大空をつんざくような爆発が起こると、かつての地域の賑わいは戦闘の不協和音によってかき消されてしまう。

たった数か月間でのエル・シャジャラの超現実的な変容は、紛争が国家の地理をいかに書き換え得るのかという事の恐ろしい例示となっている。

この紛争におけるシニカルで広範な子供兵士の投入は、いつの日にか銃声が止んだとしても、このアフリカ国家スーダンの社会基盤と価値観に、永続的な負の影響を与え続けることになるだろう。

子供たちを操作し、その純真さを悪用して子供たちを破壊の道具に変えてしまうことは、単なる戦争を行う上でのシニカルな戦術というだけでなく、社会の骨組み自体に対する戦略的攻撃であると、専門家たちはアラブニュースに語った。

「子供兵士は、社会的な信頼関係を壊すために用いられます。子供たちを殺人や略奪、破壊の当事者とするという発想は一般市民の心理に独特で根深く強烈な影響を与えるからです」と、ジミー&ロザリン・カーター平和・紛争解決スクールのアルパスラン・オゼルデム学長はアラブニュースに語った。

「紛争当事者は子供兵士たちを使い捨ての存在と看做し、戦闘の最も残酷な側面を担うよう子供兵士たちに強制する傾向があります。子供兵士たちは疑問を持たずに命令を実行に移すからです」と、オゼルデム教授は述べた。

アルパスラン・オゼルデム教授

さしたる疑念も抱かれずに地域社会に溶け込むことが子供たちには可能であり、紛争中という環境で用いられる暴力的な戦略においてそれが好都合な場合があるのだと、オゼルデム教授は付け加えた。

ニャラ市のジャーナリストであるグージャ氏は、「徴募は、基本的には一般に想像されるような部族主義によっって主導されるのではなく、むしろ、教育制度の影響とスーダンに存在する価値観や信条に基づく考えによって進められます」と語った。

グージャ氏は、また、「貧困問題への取り組みは重要です。そして、武装組織以外のより良い将来展望を提供することが子供兵士となることの魅力を弱めることになります」と強く主張した。

とはいえ、他の観測筋は、スーダン紛争では部族の自尊心が重要な要素であり、子供たちは男らしさを証明するために武装集団に強制参加させられるのだと主張している。

時間の経過と共に、こうした子供兵士たちは、広範な心理操作を受け、指揮官に対する深い忠誠心を持つに至る。入隊後に展開される社会化の過程は、断片化していた子供たちの人生を結束力のある集団に縛り付ける絆となるのである。

2023年4月15日、ハルツームでの軍事衝突が報じられる中、軍用車両の横を走り抜ける人々。スーダンの準軍事組織である即応支援部隊(RSF)は、4月15日、スーダン正規軍との戦闘後、ハルツーム中心部の大統領官邸など数か所の戦略的に重要な拠点を制圧したと発表した。(AFP / 資料画像)

痛ましいことに、こうした子供兵士たちへの心理社会的支援は遠い将来のことになる見込みである。そうした支援は、正式な社会復帰プロセスに組み込まれたとしても、子供兵士たちには容易にアクセス出来ないのである。

さらに困ったことに、こうした子供兵士たちは、たとえ心理的支援を提供されたとしてもそれを受け入れることはほとんど無い。そうした心理的支援は、自らが身に付けそして証明することを迫られた男らしさを辱めるものだという誤った認識があるためである。

「子供兵士たちの社会復帰をめぐる言説の中心は、彼らの主体性を認識することと幼稚化や悪魔化の落とし穴を避けることの繊細極まる均衡を取ることです」と、オゼルデム教授は述べた。

オゼルデム教授の意見では、こうした子供たちを、脆弱かつ無力で保護を必要としている存在と看做す視点と、暴力をふるい危害を周囲に与える可能性のある脅威と看做す視点との間で見解の揺れがあるのだという。

「この二項対立が子供兵士の社会復帰の政策を形成しています。その結果、往々にして、子供兵士を受動的な犠牲者か差し迫った脅威のいずれかの型に嵌め込んでしまうのです」

2018年2月7日、南スーダンのヤンビオで、対立する武装グループ間で戦うことを強制された数万人の子供たちの社会復帰を支援する国連プログラムの開始を記念する式典に出席した子供兵士たちを撮影した写真。南スーダンでの戦争の恐怖は、北アフリカの疲弊した国家であるスーダンにおいて支配権を争い対立する武装勢力によって繰り返されつつある。

最重要なことは、こうした悲惨な状況は頻繁に搾取され、紛争地域を人間性の本質が失われた場所として描く物語が創作されることである。

「こうした物語は、『未開の現地人』とそれに対する欧米からの慈悲深い『守護天使』というイメージを生み出し、分裂的な二項対立をさらに強固にしてしまいます」と、オゼルデム教授は語った。

「この枠組みは、このような紛争の複雑な動態を過剰に単純化するだけでなく、軍事介入を正当化するための国際社会の危機感を増幅します」

より一般的には、武力紛争における子供兵士の徴募と動員は、無秩序と不安に苦悩する地域に付きまとい続ける痛ましい現象なのである。

この残酷な方策は、特にアフリカで驚異的に普及している。中央アフリカ共和国からナイジェリアに至るまで、アフリカ大陸の数多くの紛争において、子供兵士の存在は悲劇的かつ不変なものである。

アフリカ大陸、特にスーダンは、この不安を感じさせる動向の中心地となっている。それは、混乱と紛争に巻き込まれた若年層の生命を損なうだけでなく、世界の集団的良心にも深い傷をつけている。

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