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G20の議長国を務めたインドと、新たな多国間主義の夜明け

インドは世界に対し、私たちを分断させるものではなく、私たちを団結させるものは何かを思い出してもらうことを目標に定めた。(AFP)
インドは世界に対し、私たちを分断させるものではなく、私たちを団結させるものは何かを思い出してもらうことを目標に定めた。(AFP)
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01 Dec 2023 05:12:39 GMT9
01 Dec 2023 05:12:39 GMT9

インドがG20の議長国を引き継いでから、今日で365日目となった。今は「Vasudhaiva Kutumbakam」(一つの地球、一つの家族、一つの未来)の精神を振り返り、新たなコミットを決意し、活性化させる時だ。

昨年私たちが議長国の責任を引き継いだ際、世界は多面的な課題に直面していた。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の世界的大流行からの回復、迫りくる気候の脅威、開発途上国における不安定な金融と負債による困窮、そうした中での多国間主義の後退。紛争と競争のなかで開発協力は損なわれ、進歩は妨げられた。

G20の議長国を引き継いだインドは、世界に対して現状維持に対するオルタナティブ、GDP中心から人間中心の進歩への移行を提示することに努めた。インドは世界に対し、私たちを分断させるものではなく、私たちを団結させるものは何かを思い出してもらうことを目標に定めた。最終的に、国際的な対話は進化せざるを得ない状況になった。少数のための利益は、多くの人々の大志に道を譲らざるを得なくなった。これには、私たちが知っている多国間主義の根本的な改革が必要だった。

包摂的、野心的、行動志向、強い決断力、この4つの言葉が、G20の議長国としての私たちのアプローチを定義づけるものとなった。G20加盟国により全会一致で採択された「ニューデリー首脳宣言」は、これらの原則を実践していくにあたっての私たちのコミットメントの宣誓書となった。

包摂性は、私たちが議長国を務めるにあたっての核となった。アフリカ連合をG20の加盟国に迎えることでアフリカ55カ国がこのフォーラムに加わり、世界人口の80%を網羅することになった。この積極的な姿勢が、世界の課題や機会に関するより包括的な対話を促すこととなった。

インドは初の「ボイス・オブ・グローバルサウス・サミット」を2度に渡って開催し、新たな多国間主義の夜明けを歓迎した。インドはグローバルサウスの懸念を国際的な対話の中心に据え、国際的なナラティブの形成において開発途上国が公平な立場に立てる時代への先導役となった。

包摂性はG20に対するインド国内のアプローチにも浸透し、世界最大の民主主義にふさわしく、大衆による議長国が誕生した。「jan bhagidari」(人々の参加)イベントを通じてG20は14億人の市民にリーチし、すべての国および連合地域をパートナーとして巻き込んだ。現実的な側面について、インドはG20の義務に沿う形で、より幅広い開発目標に世界が注目を向けるよう努めた。

2030アジェンダの重要な中間点として、インドは「G20 2023持続可能な開発目標に関する進歩を加速させるための行動計画」を提示し、健康、教育、ジェンダー平等、環境持続可能性をはじめとする相互接続的な問題に対し、分野横断的かつ行動志向のアプローチを採った。

進歩を促すための重要な分野のひとつが、堅固なデジタル公共インフラだ。アーダール、UPI、デジロッカーといった革命的なデジタルイノベーションの影響を自ら目の当たりにしてきたインドは、断固たる決意でこれを推進した。G20を通じて、私たちはグローバルデジタル公共インフラリポジトリを完成させた。これは技術協力における大きな進歩である。16カ国から50以上のデジタル公共インフラをフィーチャーしたこのリポジトリは、グローバルサウスがそのようなインフラを構築・採用・スケールさせ、包摂的成長の力を解き放つことに寄与するだろう。

ニューデリー首脳宣言は、こうした主要優先課題における協力の精神を改めて確認するという意味合いを体現している。

ナレンドラ・モディ

「一つの地球」というテーマについて私たちは、緊急かつ持続的で、公平な変化を生み出すことを目標に、野心的で包摂的な目標を掲げた。ニューデリー宣言の「グリーン開発合意」では、飢餓との戦いか地球の保護かを選ばなければならないという課題を包括的なロードマップにまとめ、雇用と生態系が補完しあい、消費が気候を意識し、生産が地球にやさしいものになるような対策を打ち出した。

並行して、G20宣言では世界の再生可能エネルギー量を2030年までに3倍にするという野心的な呼びかけを行った。世界バイオ燃料同盟の発足、グリーン水素推進との連携により、さらにクリーンでグリーンな世界を作るというG20の野心は紛れもなく確かなものとなった。これは常にインドの気風であり続けてきたことであり、「持続可能な開発のためのライフスタイル」を通じ、世界は私たちが昔から実践してきた持続可能な伝統の恩恵を受けることができるだろう。

さらに、この宣言は気候正義と平等への私たちの献身を明確に示し、グローバルノースからの十分な金融・技術支援を呼びかけるものである。初めて、開発資金の規模を数十億ドルから数兆ドルへと飛躍的に拡大する必要があることが認識された。G20は、開発途上国が2030年までに国別の拠出金を満たすためには5兆9,000億ドルが必要なことを認めた。

莫大なリソースが求められることを鑑み、G20はより良く、大規模で、効率的な多国間主義の開発銀行の重要性を強調した。同時にインドは国連改革、とりわけ国連安全保障理事会をはじめとする主要組織の改革を主導する立場を担っている。このことは、より公平な国際秩序の実現に繋がるだろう。

ジェンダー平等はこの宣言の中心に据えられた。特に、来年結成される「女性のエンパワーメントに関する専任の作業部会」の設立宣言はそのクライマックスと言えるだろう。2023年に成立した下院および州議会議員の議席の3分の1を女性に割り当てるインドの法案は、女性主導の開発への私たちのコミットメントを象徴するものである。

ニューデリー首脳宣言は、こうした主要優先課題における協力の精神を改めて確認するという意味合いを体現しており、政策の一貫性、信頼できる貿易、野心的な気候行動への注力を示すものだ。私たちが議長国を務めた期間で、G20は87の成果と118件の文書採択を実現させた。これは過去に比べて高い数字であり、私たちにとっての誇りである。

インドはG20の議長国を務めた期間、地政学的問題と、それが経済成長や開発に与える影響に関する討議を主導した。テロリズムや無分別な民間人の殺害は受け入れられるものではなく、私たちはゼロ容認政策でこれに対処しなければならない。私たちは敵意や報復ではなく人道主義を体現しなければならない。今は戦争の時代ではないのである。

議長国を務めるなかで、インドが類まれなる達成を成し遂げたことを私は嬉しく思っている。私たちは多国間主義を活性化させ、グローバルサウスの声を届け、開発を推進し、あらゆる場所にいる女性たちのエンパワーメントのために闘った。

人々、地球、平和、繁栄のための私たちの集団としての歩みが今後何年にも渡って響き渡っていくという確信を持って、私たちはG20の議長国としての役割をブラジルに引き渡すのである。

  • ナレンドラ・モディ氏はインド首相である。
    X: @narendramodi
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