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ネットゼロとネイチャーポジティブを目指す私たちは、誰も取り残さない

(CACACE/AFP)
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07 Dec 2023 08:12:37 GMT9
07 Dec 2023 08:12:37 GMT9

COP28が折り返し地点を迎えようとしているなか、世界から集まった数万人の代表たちは気候およびその他の国際問題の交点を探り続けている。健康、ジェンダー、若者、教育、公平な移行といった多岐にわたる課題が、エキスポシティ・ドバイを形づくっているいくつものパビリオンやハブで議論されている。これは偶然ではない。気候変動が世界の至るところで起きていることや、世界が直面している様々な課題が相互に繋がりあっていることから、政府、企業、市民社会は一体となって連携して対応していくことが求められている。

これに関して最も的を射た例のひとつは、大規模な温室効果ガス排出量削減を通じた地球の大気の脱炭素化、自然のカーボンシンクおよび生物多様性の保全と強化、まだそういったことに取り組む余裕のない数十億人の人々に対する公平な成長機会の創出といった取り組みの、明白な繋がりである。この3つの大きなミッションは非常に密接に結びついており、連動して実現を目指す必要がある。そうでなければ、このミッションのうちどれかひとつが善意による進歩を実現したとしても、それが他のミッションの進歩を妨げかねないという重大なリスクがある。

私たちにはもはや人間開発のアジェンダを気候および自然に関するアジェンダから切り離しておく余裕がないことは明らかだ

バドル・ジャファール

このダイナミクスはグローバルサウスにおいて特に明白だ。世界人口の75%を占めるグローバルサウスは既に気候変動の矢面に立っており、酷暑、水不足、空気の質の低下といった問題が全体的な課題を生み出している。世界で最も裕福な10%の人々の1人あたりのカーボンフットプリントは、世界の貧しい50%の人々の11倍であるにもかかわらず、これが現実なのである。だからこそCOP28の議長国は、意思決定を行う者が気候アクションと人間開発の間で不可能な選択を迫られることがあまりにも多い新興市場および開発途上経済の国や企業の真の意味での包摂とエンゲージメントを促すことを強調しているのだ。

こうした背景のなか、私たちにはもはや人間開発のアジェンダ――これは国連の17の持続可能な開発目標のうち12個が当てはまる――を気候および自然に関するアジェンダから切り離しておく余裕がないことは明らかだ。これらはコインの表と裏であり、そのコインの端を成すのは、私たちのあらゆるシステムによりグリーンな進化をもたらしつつ、あらゆる生命、生活に良い影響を与える、伝導性のある包摂的な気候政策だ。これは単なる高尚な野心ではない。誰も取り残さない形で気候変動と自然の喪失に真剣に取り組もうとするのであれば、これが私たちにとって唯一の現実的な選択肢なのである。

これは現実的には何を意味するのか?

何よりも、脱炭素と生物多様性保護戦略は、今の世界の80億人、そして未来の世代の貧困を無くし生活の質を高めるという国連の中心目標を弱めるのではなく守る形で設計することが不可欠だ。これを公平な移行の基盤にしなければならない。

私たちは、ネットゼロと豊かな生活を集団として目指していく私たちにとって、自然がその基盤であるという現実を受け入れなければならない

バドル・ジャファール

結局のところ、安価で信頼できるエネルギーへのアクセスの驚異的な増加は、安価な食料供給と密接に関連しており、数十年にわたって数十億人の生活、医療へのアクセス、平均寿命増加の基盤となってきた。現在電気を利用できない8億人、クリーンな料理用燃料が手に入らない23億人をはじめとする世界中の数十億人が、同じように生活の質や寿命向上を求めないことを期待するのは馬鹿馬鹿しいほど道義に反している。経済および人間開発が安価でアクセスしやすいエネルギーに支えられてきたことは疑いの余地がなく、1990年代以来世界の貧困率は75%以上減少した。こうした開発を禁ずることは、単純に選択肢としてありえない。

最後に、私たちはもはや自然をお飾りのものとして捉えることはできず、ネットゼロと豊かな生活を集団として目指していく私たちにとって、自然がその基盤であるという現実を受け入れなければならない。だからこそ私たちは、自然と生物多様性が気候および人間開発の目標追求に欠くことのできない一部であることを認め、そこに対する国際投資を大幅にスケールアップさせる必要がある。これは世界の温暖化を1.5℃に抑えるために必要とされる温室効果ガス排出量の3分の1削減に向けて、自然ベースの解決策を生み出すための重要なチャンスだ。

どこの誰でも同意できることがひとつあるとすれば、これまでのアプローチは機能していないということではないか。現在の世界の温室効果ガス排出量は、1995年に初めてCOPが開催された当時から50%増加した。世界の貧困減少率は鈍化している。生物多様性は有史以来最大の脅威に晒されている。既に変革を起こしているCOP28会議の2週目が始まるなか、今後も分断された信頼の架け橋であり続けられるかどうかは、あらゆるセクターの一人ひとり全員に懸かっている。世界のあらゆるコミュニティが切望している信頼を示すことで、私たちはこれを実現できるだろう。その信頼とは、気候変動や自然の喪失に対する取り組みが、貧困から抜け出そうとする数十億人の歩みを脅かすのではなく進歩させるものであるのだと示すことである。

  • バドル・ジャファール氏はCOP28のビジネス・慈善活動部門特別代表。
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