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気候正義への取り組みは必要不可欠だ

私たちは、先住民の権利を尊重し、保護する気候政策を確立すべきである。(AFP)
私たちは、先住民の権利を尊重し、保護する気候政策を確立すべきである。(AFP)
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25 Dec 2023 09:12:37 GMT9
25 Dec 2023 09:12:37 GMT9

気候変動の影響は世界に均等に分散されているのではなく、往々にして気候変動の要因としては最も規模の小さい脆弱なコミュニティがその矢面に立たされている。だからこそ、気候正義の確実な実現が必要不可欠である。

気候変動による世界の気温上昇に伴い、熱波の頻度と強度が増している。

だが世界の中でも特定の地域は、気温上昇の影響をより大きく受けやすい。たとえばサハラ以南のアフリカの多くの国が、気温上昇、降水パターンの変化、干ばつの頻度増加による影響に対して脆弱だ。こうした要素は水の利用可能量、農業、食料安全保障に影響を及ぼしている。

中東と北アフリカも気温上昇、水不足、熱波の増加に見舞われている。こうした要因が、水資源、農業、人の健康といった課題を深刻化させている。キプロス研究所気候・大気研究センターおよびマックス・プランク化学研究所による2022年の報告書によると、乾燥地帯および半乾燥地帯に属する中東・北アフリカ地域の気温は世界の他の地域のほぼ2倍上昇しているという。だからこそイラク、シリア、ヨルダン、イランといった国で大規模な砂漠化が起きているのだ。既にこの地域の水不足は、世界で最も深刻化している。

インドやバングラデシュを含む南アジアも、気温上昇、モンスーンのパターンの変化、異常気象の頻度増加に見舞われており、農業、水資源、数百万人の暮らしにとりわけ影響が及んでいく可能性は高い。

こうした急速な温暖化は海の氷の融解、永久凍土の喪失、先住民および沿岸コミュニティの生態系への影響といった事態を引き起こしている。太平洋やカリブ海などに位置する海抜の低い島国は、海面上昇と激しい熱帯性低気圧に対して特に脆弱だ。

現代の気候変動の主要因は、地球の大気における温室効果ガスの濃度増加だ。アフリカは二酸化炭素排出量が最も少ない大陸だが、不釣り合いなほどに気候変動の影響を受けている。アフリカは世界人口の約18.2%(約15億人)が暮らす世界で2番目に人口の多い大陸だが、世界の二酸化炭素排出量に占める割合はわずか4%だ。比較すると、世界人口のわずか7.5%に過ぎない北米は、世界の二酸化炭素排出量の約18%を占めているのである。

米国と欧州は、現在世界の二酸化炭素排出量のほぼ3分の1を占めている。世界人口の約5%である米国だけでも、世界の二酸化炭素排出量の14%を占めている。

人口1人あたりの二酸化炭素排出量で言えば、マリ、ソマリア、エチオピア、ニジェール、コンゴ民主共和国といったアフリカの国々が気候変動に対して与えている影響は最も小さい。アフリカは二酸化炭素排出量が最も少ない大陸であるにもかかわらず、地球温暖化の影響を最も大きく受けているのである。たとえば、モザンビーク、ジンバブエ、マラウイ、南スーダン、ニジェールは、2019年に気候変動による悪影響を最も大きく受けた上位10カ国に含まれている。

私たちは、先住民、周縁化されたコミュニティ、気候変動に最も大きな影響を受ける人々の権利を尊重し、保護する気候政策を確立すべきである。

マジッド・ラフィザデー博士

だからこそ、気候正義への取り組みが必要不可欠なのである。気候正義を実現させるためには、脆弱なコミュニティが不釣り合いな気候変動の影響を受けていることに対応し、歴史的責任を認め、気候アクションにおける公平・公正を促すための包括的かつ協力的なアプローチが必要だ。

気候正義実現への取り組みとして国際社会が採用しうる戦略としては、過去および現在においてとりわけ温室効果ガス排出量が多い国や地域での排出量削減に向けた政策や実践の導入が挙げられるだろう。

第2に、国際社会はコミュニティ、とりわけ脆弱なコミュニティが現在の気候変動の影響に対応できるよう、適応戦略の開発と導入を行わなければならない。

これには気候変動への適応および影響緩和、持続可能性実践のための教育およびトレーニング、気候科学や実践的な適応戦略の導入などに関して、先進国が開発途上国に金融支援や技術提供を行うことも含まれる。

金融支援には、異常気象、海面上昇、その他気候関連の課題に対する復元力の強化に繋がる、開発途上国のインフラへの投資も求められる。脆弱なコミュニティの復元力強化や低炭素経済への移行を支援する気候ファンドや仕組みを作ることで、これは実現できるだろう。国連のアントニオ・グテーレス事務総長はドバイで行われた国連気候変動会議COP28にて、「気候正義の実現はあまりにも遅れています。開発途上国は、自分たちの責任ではない災害によって被害を受けています。法外な借入コストが彼らの気候アクション計画を阻んでいます。支援はあまりにも乏しく、遅れに遅れています。先進国は、2025年までに年間の適応予算を2倍の400億ドルに引き上げるという公約をどのように実行するのか、公約している1000億ドルの資金提供をどのように行うのか明確に示さなければなりません」と述べた。

こうしたファンドは、地域コミュニティ、とりわけ開発途上国が気候アクション関連の意思決定プロセスに参加するためのキャパシティ確立に活用できるだろう。

最後に、先進国は再生可能・持続可能エネルギーへの移行と化石燃料依存の縮小を促進すべきだ。これには各産業、運輸、建築物におけるエネルギー効率施策の推進が含まれる。

結論として、私たちは、先住民、周縁化されたコミュニティ、気候変動に最も大きな影響を受ける人々の権利を尊重し、保護する気候政策を確立すべきである。国際社会は気候正義を通じ、公正なソリューションを推進し、周縁化され影響を受けているコミュニティの権利を重視し、気候変動にとりわけ大きな影響を与えている者たちにしっかり責任を取らせることで、気候変動の不平等な分散と影響に取り組んでいくことを模索すべきだ。

  • マジッド・ラフィザデー博士はハーバード大学で教育を受けた、イラン系米国人の政治学者。
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