Since 1975
日本語で読むアラビアのニュース
  • facebook
  • twitter

米国が平和を望むなら、その言葉に力を与えよ

2024年2月20日、米国のリンダ・トーマスグリーンフィールド国連大使はガザの停戦を求める国連安全保障理事会決議案に拒否権を行使した。(ロイター)
2024年2月20日、米国のリンダ・トーマスグリーンフィールド国連大使はガザの停戦を求める国連安全保障理事会決議案に拒否権を行使した。(ロイター)
Short Url:
25 Feb 2024 12:02:50 GMT9
25 Feb 2024 12:02:50 GMT9

国連安全保障理事会の停戦決議案に対し、米国は3度目の拒否権を発動した。これは中東では好意的に受け止められていない。とはいえ、多くの人が元々米国への期待を失っていた。

米国の言い分は、同国は人質問題に対する解決策を見つけるための時間をさらに確保したいのであって、それは全面的な停戦ではなく、6週間の戦闘休止であるというものだ。仮にそうだとしても、米国の言うことを絶えず無視しているイスラエル――特に4回の刑事訴追を受けているベンヤミン・ネタニヤフ首相――が、そうした解決策に耳を傾ける保証はない。ネタニヤフ氏は、自分は米国との付き合い方を心得ていると語り、それが正しいことを証明してきた。彼はジョー・バイデン米大統領の真剣度を測る術に長けており、今のところ米国が彼に対して、パレスチナ人への、特にガザに対する攻撃を止めることを本当に望んでいるとは考えていない。

その結果、このジェノサイドがいつ終わるかについて、世界は絶えず動くゴールポストに直面しているようだ。多くの人が、2023年末、または最初の米国大統領予備選後に戦争が終わると思っていた。しかし、ゴールポストは米国の意向よりも、ネタニヤフ氏の望みに基づいて移動し続けている。

現在、米国の最新のターゲットは、3月10日または11日に予定されているラマダンの始まりのようだ。

パレスチナでは、この聖なる月に最も特別な場所はエルサレムのアル・アクサ・モスクだ。ここはイスラム教第三の聖地であり、パレスチナのイスラム教徒、およびイスラエルによって入場を許された他のイスラム教徒が集まる場所でもある。

過去において、イスラエル軍は、検問所での膨大な数の人々の集結、および旧市街での混雑を予想し、ラマダン中はイスラム教徒の礼拝者との衝突を一般的に避けてきた。軍の検問所は、通常は厳しい旅行制限や時間を要する個人チェックを放棄し、特に金曜日には、エルサレムに到達したいと願うどの礼拝者に対しても、通行を許可してきた。

聖月の最後の10日間は最も尊ばれ、ラマダンの27日目は頂点である。これはレイラット・アル・カドル、または運命の夜と呼ばれ、イスラム教徒はこの夜にコーランが初めて天から下され、預言者ムハンマドにその最初の詩が啓示されたと信じている。

米国とイスラエルには、解決策を迅速に見つけるためのプレッシャーがかかっている。なぜなら、刻々と迫る別の期限に向かって時計の針は進んでいるからだ。

ダオウド・クタブ

通常、金曜日の正午の礼拝には25万人から50万人の礼拝者が参加する。ラマダン最後の10日間は、エルサレム旧市街全体の6分の1の広さである36エーカー(約14万5000平方メートル)の敷地で、信者の多くが夜を明かす。

しかし、今年は状況が異なる。極右過激派のイスラエル政府は、それが引き起こす反発は気にも留めず、ムスリムの聖なる月を台無しにすることに執念を燃やしているようだ。

10月7日のハマス攻撃の後、イスラエルはヨルダン川西岸地区在住のパレスチナ人すべての旅行許可を取り消した。アラブ人に対するヘイトスピーチで起訴され、テロ支持で有罪判決を受けたことがある悪名高い偏見を持つ人物であるイタマル・ベングビール国家安全保障相は、占領下の西岸地区からエルサレムに入るパレスチナ人に対する通行禁止を維持するだけでなく、イスラエル市民のパレスチナ人にも強制することを要求している。

イスラエル内閣は、ベングビール氏の明白な差別政策を支持しているようだ。しかし、真実を語らないことで知られるネタニヤフ首相はいつものように、イスラエル市民のイスラム教徒が礼拝する権利を確保する方法について議論を続けていると述べている。イスラエル市民である一部のパレスチナ人イスラム教指導者は、こうした制限に対して最高裁に異議を申し立てると警告している。

イスラエルのメディアでは、イスラエル国民のイスラム教徒に焦点を当てた議論が行われているが、占領地に住むパレスチナ人、さらにはエルサレムの住民に対する礼拝の権利についてさえ、誰も話題にしていない。ベングビール氏は、エルサレムで夜に行われるラマダンの伝統的な祝賀行事やカラフルなライトさえ禁止している。終日断食する礼拝者は、夜になり、文化的および社会的生活が活気づく時、特に旧市街でさまざまな文化的および芸術的イベントが行われる時間帯に外出する。

アル・アクサ・モスクはヨルダンのハシミテ王家が代々管理者を務めている。同国は公的な声明は出していないものの、さまざまなチャンネルを使って強いメッセージを送っている。イスラエルの一部の報道によると、ラマダン期間中にアル・アクサ・モスクで緊張があれば、広範囲にわたる地域不安が生じる可能性があるとヨルダンは明言している。

エルサレムのワクフ評議会は来週、イスラエルの決定に対応するために会合を開く予定だが、ヨルダンや評議会の発言や行動にかかわらず、占領地やそれ以外の広範な地域のパレスチナ人は、アル・アクサでの礼拝の権利を制御しようとするあらゆる試みに強く反対することに疑いの余地はない。米国とイスラエルには、解決策を迅速に見つけるためのプレッシャーがかかっている。なぜなら、刻々と迫る別の期限に向かって時計の針は進んでおり、その期限はアメリカ人が作り出したものでありながら、彼ら自身の言葉にいかなる力も与える意志がまだないからである。

・ ダオウド・クタブ氏は受賞歴のあるパレスチナ人ジャーナリストであり、コミュニティ・メディア・ネットワーク(CMN)のディレクターである。 X: @daoudkuttab

特に人気
オススメ

return to top