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「ラファの虐殺」斬首された赤ん坊たちの真実と虚偽

2024年5月28日、イスラエルとパレスチナ過激派組織ハマスの紛争が続く中、ガザ地区南部のラファ市で、イスラエル軍の空爆が再開され、煙が立ち込めるバルコニーに立つ少年。(AFP)
2024年5月28日、イスラエルとパレスチナ過激派組織ハマスの紛争が続く中、ガザ地区南部のラファ市で、イスラエル軍の空爆が再開され、煙が立ち込めるバルコニーに立つ少年。(AFP)
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28 May 2024 06:05:38 GMT9
28 May 2024 06:05:38 GMT9

斬首された赤ん坊たちに検証は必要ない。

カメラに向かって叫ぶ男の腕からぶら下がる、黒焦げで首のない赤ん坊の死体は、ほんの数分前に起きたことを裏付けるものだ。

バイラルビデオがデジタルプラットフォームを駆け巡り、私たちの心から忘れることのできないイメージを伝えた。ラファはこのジェノサイド、この最も陰惨な虐殺の現場なのだ。

死者の規模や破壊の度合いではなく、もっと不吉ないわゆる虐殺現場だ。その証拠に、私たちの携帯電話にさえ死体安置所での裸の生々しい死体が頻繁に飛び込んでくるのだ。

私たちの携帯電話そのものが殺人現場となり、死のキャンプと化した人道支援センターの裏に収容された、難民の血まみれの手から首のないパレスチナの赤ん坊がぶら下がっている病的なシーンを映し出す黒い鏡なのだ。

この血まみれの日曜日は、もうひとつの転機だった。大量虐殺の技術的、実存的な深みに転げ落ちる、どん底への転落。特に、首のない小さな死体と、それを手にしていた一方の大人の死体を見るに至ったのだ。

2024年5月26日の日曜日は、「ラファの虐殺」として永遠に記憶されるだろう。少なくとも、歴史家やジャーナリズムにかかわる特権的なプロセスから締め出された、下層にいるのレンズと声のペンを持つものにと取っては。

もし、この大虐殺がひとつのことを義務づけているとすれば、それは、そのような組織に入り込み、私たちの記憶に永遠に刻み込まれた悲惨なイメージを言葉に刻みこむことである。

年齢や名前、顔や親が確認できる斬首された赤ん坊の映像は、大量虐殺に狂奔する政治家や、民族とその土地を壊滅させる包囲網へのサポートを惜しまなかったメディアの見出しを埋め尽くした、イスラエルの40人の斬首された赤ん坊たちとは劇的に違う。

その当時、証拠映像はなかった。伝聞だけだ。

赤ん坊とされる人物の名前も年齢も出てこない。アメリカの大統領やイスラエルの首相が、大量殺戮に向けた美辞麗句を並べただけだ。

検証することなく、イスラエルの赤ん坊たちが首をはねられたという神話は、ジョー・バイデン、ベンヤミン・ネタニヤフ、そしてガザを破壊するという陰謀と共謀する企業メディア・アーキテクチャによって語られた。ジャーナリズムの失態の度合いを責めても責めきれない。一流新聞が情報源を確認することなく嘘を印刷し、売りつけ、帝国の学者たちがフィクションから歴史を作り出そうと奔走したのだ。

ナチスの宣伝マン、ヨーゼフ・ゲッペルスが言ったように、「大きな嘘をつき、それを繰り返し続ければ、人々はやがてそれを信じるようになる」。 特に、パレスチナの人々の壊滅にすでに投資している人々や、大量殺戮犯の信奉者たちが独占する知識の帝国的フェンスに座っている人々にとっては。

イスラエルとアメリカが法の支配、ジャーナリズムと学者の倫理、そして国連での停戦と最高裁判所での大量虐殺行為の停止を繰り返し求める国際社会を踏みにじる中、大量虐殺の行進は嘘とそれを暴こうとする人々の間で進む。

イスラエルの赤ん坊たちの斬首は確認されていない。しかし、それは問題にはされないのだ。

神話は兵器化され、その物語は、何百万もの人々を避難させ、何千人もの人々を殺害する虐殺的復讐へと姿を変えた。アメリカとイスラエルの権力の殿堂で、再び「未開人」を無差別に罰した。名前も顔もない悪人たちは、国籍と民族性だけで起訴され、自作自演の野外収容所に閉じ込められた。

231日間に及ぶジェノサイドは、人権法とそれを平定しようとするアメリカの意志によって止められることなく続いている。ラファの国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)事務所裏のその場しのぎの野営地のように。

嘘と最近の虐殺の間に、ついに首をはねられた赤ん坊の証拠がもたらされた。それはスクリーンから飛び出し、激しく鮮明で、目を背けようとしても背けられない。

私たちの多くは、過去7ヵ月間から続く大量殺戮の渦に対して目を背け続けてきた。しかし恐怖の引力は消えなかったのである。

赤ん坊。あるいはかつて赤ん坊だったものであろう。

アメリカ製の2,000ポンドの爆弾によって小さな体から切り離された彼の頭部は、証拠品として、つまり人間の証拠品として、全世界に公開された。

ついに検証されたのだ。

斬首されたのはイスラエルの赤ん坊ではなくパレスチナの赤ん坊だ。

フィクションではなく事実が、数百万人の心を揺さぶっている。

虐殺

アル・シファ包囲

暴かれた集団墓地

アーロン・ブッシュネル

ヒンド・ラジャブ

決定的証拠

この大量虐殺が、地球よりも遥かに不吉なもの、地球よりも遥かな地獄の深みへとスパイラルしていることを示す証拠の数々なのだ。

真実はすぐそこにある。私たちの目の前で、首なしで吊るされている。

『ニューヨーク・タイムズ』紙や『ワシントン・ポスト』紙、『BBC』や『CNN』が、探し出すまでもなく検証可能だ。

しかし、彼らの見出しは、アメリカ軍の爆弾が彼らの頭を切り落とすように、パレスチナ人の赤ん坊の言葉が聞かれることはない。

イスラエルの軍国主義とアメリカの野放図な権力によって荒廃した風景において、首のないイスラエルの子どもたちという嘘がすべてを意味し、斬首されたパレスチナの子どもたちという真実は何も意味しない。

私たちは、この帝国的な言葉たちと正面から向き合わなければならない。

そして、大量虐殺の出来事を忘れることなく、赤ん坊の首のない遺体に尊厳を吹き込むペンをもって、その首をはね、それに立ち向かわなければならない。

数年後、彼らの首のない遺体を目の当たりにした真実は、もし私たちが彼らを殺した者たちの嘘を書かなければ、何の意味もなさないだろう。

  • ハレド・A・ベイドゥン氏は作家、法学教授。X: @khaledbeydoun. この記事はPen>Sword.に掲載されたものである。
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