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人とビジネスの成長に欠かせない「志」とは?

水戸・偕楽園の風景。Shutterstock
水戸・偕楽園の風景。Shutterstock
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23 Oct 2024 05:10:25 GMT9
23 Oct 2024 05:10:25 GMT9

私は、自然豊かな愛媛県で生まれ、その後、高校時代は茨城県の水戸で過ごし、大学は京都大学に進みました。しかし、私のキャリアは、その後のハーバード・ビジネス・スクールでの学びを通して、思いもよらない方向に舵を切りました。

ハーバードに進学するまでは、私をMBAに派遣してくれた住友商事で安定した仕事に就いていました。私は、住友商事が与えてくれた機会にとても感謝しています。なぜなら、ハーバード・ビジネス・スクールで起業家の世界(アントレプレナーシップ)を垣間見ることになったからです。クラスメートの多くが起業に情熱を燃やしているのを目の当たりにして、私も初めて起業というものを真剣に考えるようになりました。そして、自分の志を本当に実現するためには、自分で起業する必要があると思うようになったのです。

1992年、わずか8,000ドルの資金と教室1つ、そして20人の学生でグロービスはスタートしました。とても小さなスタートでしたが、グロービスは急速に成長して行きました。1996年にはベンチャーキャピタルを立ち上げ、現在では13億ドル以上を運用するに至っています。2006年には修士号を付与する経営大学院を開学し、現在では日本を含む全世界12キャンパスで2600名以上の学生が学んでいます。英語と日本語でのオンラインプログラムも盛んです。

こうして、長年にわたり、グロービスは、「ヒト・カネ・チエのエコシステム」を構築してきました。このエコシステムでは、高等教育、ベンチャー・キャピタル、企業研修、ソーシャル・イノベーション等が互いにシナジーを発揮して、個人と組織の自律的な成長を実現しています。

グロービスのMBAプログラムは、このエコシステムの中心的存在です。そこに、日本最大の企業研修サービス、200社以上に投資するベンチャー・キャピタル・ファンド、デジタルおよび紙媒体の出版事業が組み込まれており、「グロービス・インサイト」や「グロービス知見録」をはじめとする出版物が、グローバルで数百万人の読者となっている未来のリーダーに対して、刺激のある実践的なビジネス・ナレッジを提供しています。更に、多忙なプロフェッショナルのニーズに応えるため、マイクロラーニングや短期実践型ビジネスプログラムを英語で提供するデジタルプラットフォーム「GLOBIS Unlimited」「nano-MBA」を立ち上げました。

「高等教育」「ベンチャー」「企業研修」「デジタルプラットフォーム」を、グロービスで実践していく上で、目指したのは、それぞれの事業が相互に強化されることでした。私たちは、企業や個人が潜在能力を最大限に発揮できるように、成長を支援しています。経済的な成功だけでなく、人々が有意義な人生を送り、世界中で社会にインパクトをもたらすことを目的としています。

私がグロービスのユニークネスとして強く意識している日本のコンセプトが「志:こころざし」です。「志」とは、簡単に言うと「強い想い」や「目的意識」のことですが、グロービスでは、プロフェッショナルとしての情熱やスキルを結集し、社会にポジティブな変化を巻き起こすために、個々が持つミッションと定義しています。

グロービスのミッション(志)は、プロフェッショナルの情熱とスキルを結集し、社会にポジティブな変化を巻き起こすこと!

堀 義人

私にとって「志」とは、単なる哲学ではなく、私の人生と仕事への原動力です。グロービスを創業したのも、グロービスのプロダクトやサービスを長年にわたって提供してきたのも、新しい事業や新しいプロジェクトを推進し続けるのも、この「志」があるからです。

私の「志」は、3つの形で現れています。1つ目は、グロービス経営大学院を「ヒト」「カネ」「チエ」のエコシステムとして構築し、志を持って世界に羽ばたく人材を育成すること。2つ目は、「日本を良くする」こと。最後に、私にとって最も大切なことですが、「水戸市中心市街地活性化プロジェクト」を通じて、故郷である水戸を復活させることです。さらにエキサイティングなこととしては、毎年恒例の夏の音楽フェスティバル「LuckyFes」をプロデュースしています。LuckyFesは国内最大級の音楽フェスティバルになることを目指しています。

水戸は私の故郷であると同時に、日本にとって歴史的にも重要な意味を持つ街です。しかし、大人になって水戸を再訪したとき、街があまりにも衰退していることに驚き、何か行動を起こさなければという思いに駆られました。水戸市中心市街地活性化プロジェクトは、私を育ててくれた故郷への恩返しでもあるのです。このプロジェクトは、文化、教育、起業などさまざまなプロジェクトを通じて、街を活性化させることを目指しています。

水戸プロジェクトのハイライトは、「茨城ロボッツ」です。ロボッツは、私がオーナーを務め経営を支援しているバスケットボールチームで、バスケットボールの日本最高峰のプロリーグであるB1リーグに昇格しました。このチームの躍進は、水戸に新たな誇りと活力をもたらしました。

また、カンファレンスや様々な大会、文化的なイベントの場として、グロービスホールを設立しました。人々が集い、学び、刺激を受ける場として大いに活用して行きたいです。もちろん、毎年夏に水戸に何万人もの来場者を集める大規模な音楽フェスティバル「LuckyFes」を忘れてはなりません!

これらのプロジェクトはすべて、新しいビジネスや観光客を水戸に呼び込み、水戸市の文化復興に欠かせないものとなるでしょう。

水戸のプロジェクトは、社会に永続的に変化をもたらす「リーダーシップ」と「イノベーション」に対する私の信念を色濃く映し出しています。私がグロービスで実現してきたように、水戸を人々が生き生きと活躍し、可能性を発揮できる場所にしたいのです。

僅かな資本金でグロービスを創業してから、日本最大のビジネススクール、ベンチャー・キャピタルに成長するまでの道のりは、「ポジティブな変化を生み出したい」という想いが常に原動力となっていました。グロービスのエコシステム、水戸市中心市街地活性化プロジェクト、そして現在のLuckyFesを通じて、社会とビジネスの双方に貢献することを目指してきました。

皆さんも、是非、自身のユニークな「志」を追求してみてはいかがでしょうか?自らの情熱を何かの目的に重ね合わせることで、誰しもが世界に永続的な価値を生み出すことができるのです。

  • 堀 義人氏: 株式会社グロービス代表
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