
経済は世界的なインフレ傾向の影響をあまり受けていないため、日本銀行は超緩和的な金融政策を維持すると、黒田東彦総裁が述べ、15年間の同国のデフレ経験により賃金上昇が抑えられていることを強調した。
日本の5月のコア消費者物価指数は2ヵ月連続で2.1%を記録したが、この上昇はほとんどエネルギー価格の高騰によるものだと、黒田総裁が29日に公開されたセミナーのビデオ録画の中で述べたと報じられた。
コア消費者物価指数は約1年間、2%前後で推移するかもしれないが、2023年4月からの翌会計年度には1%前後に鈍化しそうだと、総裁は述べた。
国際決済銀行(BIS)が公開した録画によると、「他の経済と異なり、日本経済は世界的なインフレ傾向の影響をあまり受けていないため、金融政策は緩和的であり続けるだろう」と、総裁は述べた。
2013年まで続いた日本の15年間のデフレの余波で、同国の企業は価格や賃金の引き上げに「非常に慎重に」なったと、黒田総裁は26日にバーゼルで開かれたセミナーで述べた。
「経済は回復し、企業は高収益を記録した。労働市場はかなりタイトになった。しかし、賃金はあまり上昇せず、物価もあまり上昇しなかった」と、総裁は述べた。
原材料の輸入コストを上昇させる、世界的な物価高騰と円安は、日本のコア消費者物価指数を日銀の目標値である2%以上に押し上げている。
しかし黒田総裁は、インフレが強い需要が要因となって引き起こされるまで、超低金利を維持する必要性を繰り返し強調しており、これにより日銀は、急速に進むインフレと闘うために世界の中央銀行が次々と利上げを行う中で、大きく取り残される存在なっている。
黒田総裁は、地政学的リスクやデジタル化など様々な構造的変化が世界経済に与える影響を評価することは「極めて困難」だと述べた。
「いずれにせよ、中央銀行の使命は同じままだ。つまりそれは、不確実性がある変化の激しい世界では、政策の伝達経路が変わる可能性はあるものの、金融政策で経済発展のために物価を安定させることである」と、総裁は述べた。
ロイター