米国の投資家で元ホワイトハウス高官のアンソニー・スカラムーチ氏は、アラブニュースが5日に行ったインタビューの中で、78年間にわたる米国とサウジアラビアの関係を「カトリックの結婚」と表現した。また、両国の指導者らに対し長期的な視野で考えるよう求めつつ、次のように語った。「両国の経済、政府、情報活動コミュニティ、国防当局は非常に密接に絡み合っている」
自身が主宰するソートリーダーシップ・サミット「SALT」が開催されていたアブダビ(同地で2回目の開催)でインタビューに応じた同氏は、SALTをサウジアラビアで開催する計画を明かし、改革を進めている同国には今後最良の時期が待っていると称賛した。
#FranklySpeaking: American-#Saudi relations not only crucial, but “a Catholic marriage” stresses @Scaramucci as he offers advice on mending political ties | Full episode: https://t.co/egMylPdTCl pic.twitter.com/Z2wDIAz0dR
— Arab News (@arabnews) March 5, 2023
UAEの首都から遠くないサウジの歴史ある都市アル・ウラーで、もう一つのソートリーダーシップ・フォーラムが行われていた。米サウジ関係の状況についての率直な議論に焦点を当てたフォーラムだ。THINK(本紙を発行するSRMGの関連会社)の主催によりマラヤ・ホール(2年前にアル・ウラー宣言が締結された場所)で開催された。
米サウジ関係と同様に、アル・ウラー宣言の締結国(サウジアラビア、UAE、バーレーン、エジプト、カタール)は壊れることのない絆を共有していることを示した。この宣言は43ヶ月にわたったボイコット、そして湾岸地域の近年の歴史上最も劇的な時期の一つに終止符を打った。
さて、私がもしスカラムーチ氏のインタビューがアル・ウラー・フォーラムの前に収録されたことを知らなかったら、彼のことを超能力者と思ったか、フォーラムでの議論を盗聴していたと思ったことだろう。フォーラムでは結婚という比喩が何度も(そしてユーモラスに)使われたので、そのうちカップルセラピーのセッションのように聞こえ始めていたのだった(出席者たちが大きな輪を作って座っていたから余計にそう思えたのかもしれない)。
スカラムーチ氏は核心をついた表現をした。米サウジ関係はまるでカトリックの結婚のようだと。そうでないと主張する者は誤解しているか思い込みにとらわれているかだ。
読者には思い出してもらう必要があるかもしれない。ワシントンD.C.にいる実情に疎い中東専門家が何と言おうと、サウジと米現政権の関係が最も冷え込んでいた時期であってもジョー・バイデン大統領のチームが「関係を決裂」させないと決意していたことを。
何といっても、正気なら二聖モスクの守護者との関係を損なって20億人のイスラム教徒を怒らせたいと思うだろうか。正気なら世界有数の石油輸出国と喧嘩してエネルギー市場を混乱させる危険を冒すだろうか。サウジ当局も同様に、米国との関係は今後も強固であり米国は最優先のパートナーだと繰り返し述べている。
それでは、何がいけなかったのだろうか。それに十分に答えるには一シリーズのコラムが必要だ。ただ手短に言えば、サウジ側には不信があり、米国側には誤算があったということだ。
サウジ側の不信はもっともなものだ。米現政権は最初から我が国の指導部に対して敵対的だったのだから。この政権は、フーシ派のテロ組織指定を解除したうえ、イランを後ろ盾とするこの民兵組織が意図的にサウジの各都市を標的にしていた時にサウジからパトリオットミサイルシステムを撤去したことで、サウジの民間人の命を危険に晒したのだ。
米国側の誤算は多くの形を取った。バイデン政権は、サウジ国民の大多数から解放者として称賛されているムハンマド・ビン・サルマン皇太子殿下の人気を過小評価した。それに、自分たちが相手にしているのが新しく進歩的で以前とは違うサウジ指導部であることを理解するのも遅かった。サウジの見解はシンプルだ。それは、我々を追従者ではなく真のパートナーとして扱ってほしいというものだ。
また、サウジの中国やロシアとの関係を裏切りと見なし続けていることの利害について、米政権が誤算していることも明らかだ。
20世紀初頭の米国の商売人たちは、「顧客は常に正しい」という考え方を作り出した。それで米国は、サウジアラビアが中国とどのように付き合うべきだと考えているのか。中国はサウジにとって、2022年には日量175万バレルを購入した最大の石油顧客だ。それに、中国は世界有数の経済大国かつ製造ハブであり、自国の高品質で需要の高い商品を問題を起こさずに売りたいと思っている。米国が代替案を提示できないのなら、サウジにどうしろというのか。通信網をアップグレードしなければいいのか、あるいは国民の命を危険に晒せばいいのか。
実際のところ米国自体が中国に大きく依存しているため、中国とビジネスをしなければ自国の利益を損なうことになる。中国の米国債保有額は8670億ドルであり、日本に次いで2番目に多い。中国は米国の最大貿易相手国でもあり、米国から中国への輸出は2021年には100万人の雇用を支えた。
サウジのロシアとの関係についても、米国はずっと事実を曲げている。サウジは昨年の国会でロシアによる侵攻を非難したし、ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領はサウジの支援に感謝を表明しているし、OPECプラスによる昨年11月の減産の結果として原油価格は下がった。それなのに、米国はサウジに親ロシアのレッテルを貼ったのだ!米国は、サウジがロシアとの間に長年かけて築いてきた信頼のメリット(昨年にはロシアとウクライナの間の捕虜交換と米国民の解放に結実した)を無視している。そして今起こりつつあるのは、まさにその信頼が戦争終結のための真剣な話し合いにつながるかもしれない(あくまで「かもしれない」だが)という状況だ。この戦争のせいで、(凄惨な人命喪失は別にして)世界と米国の経済は高い代償を払っているのではないのか。
要するにどういうことか。アル・ウラー宣言が示したように、重要なのは相互の利益だけだ。そして、もはや有効ではない時代遅れの「石油と引き換えの安全保障」以外にも、サウジと米国の両方が利益を得ることができるものはたくさんある。ウィンストン・チャーチルが言ったように、「我々には永続的な味方も永続的な敵もなく、あるのは永続的な利益だけ」なのだ。いや、米国にはもっとアメリカ的なフレーズの方がいいだろうか。ティナ・ターナーが歌ったように、「What’s love got to do with it?(愛なんて関係ないでしょ?)」
ツイッター: @FaisalJAbbas