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ネタニヤフ首相が待機を強いられる中、岐路に立つイスラエル

2023年3月27日、エルサレムのクネセト(国会)の会議に出席するイスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相。(ロイター)
2023年3月27日、エルサレムのクネセト(国会)の会議に出席するイスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相。(ロイター)
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30 Mar 2023 01:03:58 GMT9
30 Mar 2023 01:03:58 GMT9

2019年11月、ベンヤミン・ネタニヤフ氏が背任、収賄、詐欺などの汚職容疑で起訴されたとき、彼の法的トラブルが最終的に国を屈服させるような事態になるかもしれないと予想できた者はいなかった。

ネタニヤフ氏は、起訴が結論に至るのを阻止するために、あらゆる手段を講じた。ネタニヤフ氏は、2022年の選挙で勝利して新政権を樹立するために極右勢力さえ受け入れ、18カ月間の野党生活の後、首相として復帰することを可能にした。しかし、イスラエル史上最も長く首相を務めた狡猾なネタニヤフ氏は、極右過激派と取引しなければならず、過激な宗教政党の指導者や領土拡張主義を掲げる入植者に前例のない権力を与えた。

ネタニヤフ氏が首相であり続ける限り、イスラエルは、2020年5月に始まって以来裁判プロセスが滞っている同氏の刑事裁判により、憲法上の危機に陥ったままだろう。

彼はプロセスを遅らせることには成功しているが、完全に頓挫させることができる唯一の方法は、イスラエルの司法を弱体化させることだ。そして、それこそがネタニヤフ氏が行っていることであり、イスラエル人の大反発を招いていることだ。

12月に政権に復帰して以来、ネタニヤフ氏は、入植者運動を強化し、パレスチナ人への抑圧を強めるための幅広い権限を同盟者に与えると同時に、主要閣僚には、町全体を一掃するよう呼びかけるというような、反パレスチナ的なレトリックを煽るのを認めている。ネタニヤフ氏はイスラエルの世俗的なユダヤ人の権利を損なうことによって、極右宗教運動の権利を強化した。それと引き換えに、右翼シオニストや宗教的同盟者は、イスラエルの司法制度を弱体化させるというネタニヤフ氏の提案を支持した。

ネタニヤフ氏は、裁判官の選出方法を変更し、その権限を制限し、クネセト(国会、つまりネタニヤフ率いる政府)の過半数がイスラエル最高裁判所の判決を覆せるようにし、さらに重要なことには、「民意」とされるものに干渉する司法の権限を制限することを本質的な目的とする、司法制度を再構築する抜本的な試みを導入した。

ネタニヤフ氏が有罪判決を受けたとしても、別の新しい法律により、現職の首相が職務不適格とされることがより困難になったため、政権を維持できる可能性がある。先週承認されたこの法律の下では、職務不適格と宣言するには、首相本人または閣僚の3分の2以上が賛成票を投じる必要がある。その後、その閣議決定はクネセトの圧倒的多数によって批准される必要がある。

ネタニヤフ氏の意図は明確だ。司法制度を変えて、自分に対する汚職訴訟を妨げ、自身の解任を防ぐことだ。月曜日にようやくデモ隊に譲歩したときも、計画された改革を中止するのではなく、延期するにすぎなかった。

イスラエルの司法制度を再構築しようとするネタニヤフ氏の取り組みは、何十万人ものイスラエル人の抗議を引き起こしただけでなく、同氏の右翼の同盟者の一部にも倫理的問題を提起した。ネタニヤフ氏は日曜日、首相に司法改革を一時停止するよう促したヨアブ・ギャラント国防相を解雇した。ネタニヤフ氏のリクード党から任命された他の複数の閣僚も、改革を停止するよう促しており、ある閣僚はイスラエルの「家が燃えている」と発言し、別の閣僚はイスラエルのユダヤ人を国を引き裂く政治的な「内戦」に導く恐れがあると警告した。

ヤイール・ラピード元首相は、ギャラント氏の解任を「またも評価を下げる行為」と呼び、ネタニヤフ氏は「連立政権の狂気に立ち向かっているイスラエルの人々を解雇することはできない」とツイッターに書き込んだ。元国防相で、現在はクネセトの野党党首であるベニー・ガンツ氏は、ツイッターに次のように投稿した。「私たちは、イスラエルの安全保障に対する明確で差し迫った具体的な危険に直面している。今夜、ネタニヤフ氏は安全保障よりも政治と自分自身を優先させた」

ネタニヤフ氏が首相であり続ける限り、イスラエルは彼の刑事裁判により憲法上の危機にさらされ続けるだろう。

レイ・ハナニア

これらの政治家は、ネタニヤフ氏の司法改革が国を深く二極化しただけでなく、さらなるリスクを予感させるものであることを示唆している。しかし、占領地とイスラエル国内のパレスチナ人の間で緊張が高まっていることは直接指摘されていない。

ネタニヤフ氏は、武装した過激派入植者に、パレスチナ人と対立し、入植地を拡大する許可を与えている。政府はまた、イスラエル国防軍によるナブルス、ジェニン、東エルサレム、ヘブロンへのさらなる襲撃をを許可し、パレスチナの活動家がテロ活動に従事しているという誤った前提で標的にされ殺害されている。このような超法規的殺害は、兵士や、しばしば軍によって保護されている武装した入植者による暴行に対するパレスチナ人の抵抗を促してきた。

今年の最初の2か月間で、このような行動とパレスチナ人の抵抗努力により、パレスチナ人63人とイスラエル人13人の他、外国人1人とイスラエル人兵士1人が死亡した。また、2000人以上のパレスチナ人と25人のイスラエル人が負傷し、その数は今月も増え続けている。

皮肉なことに、中東和平の観点から、イスラエルは岐路に立たされている。イスラエルとの関係を正常化することに同意したアラブ諸国はほんの一握りしかないためだ。イスラエルがこれらの協定を維持し、将来的な可能性として他の国々にも関係正常化を説得したいのであれば、パレスチナ人の権利を認めなければならない。つまり、イスラエル人は、平和と正義に向かうか、極右勢力に権力を与えて国全体を混乱に陥れるかの選択に直面している。

現在の混乱は、パレスチナ人の権利を抑圧し、国家としての地位の確立を阻止し続けるイスラエルの能力に挑戦するようなさらに大きな危機に発展し、さらに多くの暴力と死をもたらす可能性がある。

  • レイ・ハナニアは、受賞歴のある元シカゴ市役所の政治記者で、コラムニスト。問い合わせは、彼の個人的なウェブサイトHanania.com まで。 Twitter: @RayHanania
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