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イスラエルはネタニヤフ首相がつけた火によって焼き尽くされるだろう

ヨルダン川西岸地区でイスラエル軍に殺害されたアイド・スリムさんの遺体を運ぶパレスチナ人たち。2023年4月8日。(AP)
ヨルダン川西岸地区でイスラエル軍に殺害されたアイド・スリムさんの遺体を運ぶパレスチナ人たち。2023年4月8日。(AP)
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10 Apr 2023 10:04:27 GMT9
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世界最大の宗教のうちの3つがその揺籃地においてラマダン、イースター、過越の祭を祝う中、様々な当事者が全面紛争に向けて意図的に緊張を煽っている。レバノン・イスラエル・シリアの国境越しにロケット弾が行き交っていることは、エスカレートした状況を誰も制御できていない証拠だ。

イスラエルの治安部隊がアル・アクサモスクのラマダン礼拝者たちを襲撃して約40人のパレスチナ人を負傷させ350人を逮捕した事件は、そういったエスカレーション傾向の兆候である。確かな治安上の脅威が存在しなかったにもかかわらずモスクが襲撃されたのは何故なのか。それは単に、現在のイスラエル当局が最大限の嫌がらせと条件反射的な過剰反応というアプローチに執着しているせいだ。さらに4月9日には過激な入植者約1000人がアル・アクサに突入した。ヨルダンはイスラエルに対し、エルサレムの聖地周辺の状況を意図的に刺激することは「壊滅的な結果」を招くと警告した。

このような根拠に基づかない挑発的なアプローチは、パレスチナ地域における入植地拡大、住宅取り壊し、治安取り締まりにも適用されている。権力の味を初めて味わっているイスラエルの過激な新閣僚らは喧嘩をしたくてウズウズしており、やり方が甘いとベンヤミン・ネタニヤフ首相を非難することまでしている。ヨルダン渓谷でイギリスとイスラエルの二重国籍者2人が殺害され、テルアビブで車両暴走攻撃が起こったことで、緊張はさらに高まっている。

イースター前には、ユダヤ教狂信者によるキリスト教徒やキリスト教の聖地に対するヘイトクライムが急増した。墓に対する冒涜行為や、パレスチナ人キリスト教徒に対する暴力的な襲撃などだ。これらの狂信者は、自分たちがお咎めなしに行動できると思うようになってきている。ローマ教皇はイースターのメッセージの中でエルサレムにおける緊張に全般的に言及したが、世界のキリスト教団体はもっと精力的にこの問題に取り組むべきだ。

レバノンからイスラエルに向けてロケット弾34発を発射したのは誰なのか。イスラエルは、それはハマスだという作り話を受け入れるのにやぶさかでないようだが、これらの攻撃がヒズボラの承認がなければ何もできない場所から行われたことは確かだ。それに、ハマスがヒズボラの承認なしにこのような冒険に乗り出したなどと誰が信じるだろうか。ハマスは当面の間は否認することで真相を覆い隠そうとするだろうが。シリアにおける連日のような空爆でイランとヒズボラは人員を失っているが、それらの屈辱は自分たちにはほとんど関係ないというふりをしている。

戦略的計算だけに基づけば、ネタニヤフ首相はイランから忍び寄る核の脅威や準軍事的脅威に100%集中すべきだ。しかし実際には、政治家仲間の放火魔たちが次々に山火事を起こし、前例のないほど無秩序で不安定なイスラエルの現状に薪をくべるのを許している。数十万人のデモ参加者が正しくも信じているように、司法制度を骨抜きにし、過激な同盟者を全能の準軍事指導者にするためのネタニヤフ首相の最近の努力は、イスラエルの未来を存続の危機に晒すものだ。

イスラエルが今、相対的に強い立場から和平を結ぶことを拒否するのであれば、交渉の対象となる国の残骸がまだいくらか残っているうちに和平を懇願せざるを得なくなる時が来るだろう。

バリア・アラマディン

ハッサン・ナスラッラー氏も同様に、自分自身の常に好戦的なレトリックに囚われており、ほんの僅かな挑発があればイスラエルとの戦争を起こすと脅している。ヒズボラもレバノンも、そのような戦争を行えるような立場ではないはずだ。ヒズボラは2006年の時よりもはるかに高いミサイル能力を持っているかもしれないが、イスラエル軍がレバノンを手早く片付けるだろうなどと思い違いをしてはならない。恐ろしい規模で民間人の命が犠牲になるだろうし、レバノンの援助に駆けつけるつもりの国はないのだから。

ここ最近の動きは、長期的に見たイスラエルの立場の根本的な弱さを示している。人口が増え続けているパレスチナ人との和平を拒む限り、イスラエルは火をつけては消すという無駄な堂々巡りをするしかなくなる。イスラエルはヒズボラとの戦争に簡単に勝てるかもしれないが、そうすることで新世代の執念深い敵を作り出すことになるだろう。イスラエルはアラブ諸国との和平を望むと言っているが、真の和平を促し、際限のない紛争のサイクルを終わらせるために必要な行動を起こす覚悟は見せていない。

イスラエル当局は、最近のサウジ・イラン合意や、アラブ諸国の一部がシリアのバッシャール・アサド大統領と和解したことに狼狽している。一方、イランの支援を受けた準軍事組織が多くの国からイスラエルを包囲しており、イランはイスラエルを地図上から消し去ることができると豪語する核兵器・弾道ミサイル能力の獲得にかつてなく近づいている。米国は先週、イスラエルや地域における海運に対するイランの具体的な脅威を受け、湾岸地域に誘導ミサイルを搭載した潜水艦を配備した。

イスラエルはこれまでパレスチナ人を殺害し弾圧しても罰せられずに済んできたため、現在の弾圧も代償を伴わないと思っている。それは危険な思い違いだ。状況はネタニヤフ首相がおそらく理解できていないような形で変わっているからだ。新たなインティファーダが引き起こされる可能性だってあるのだ。

さらに言えば、イスラエルは過激化と反民主化の度を増すことで最終的に、財政・軍事支援を常に当てにしてきた世界の友人を失うだろう。欧米がその行動を見逃したり手助けしたりしてきたことで、イスラエルは欧米にとって甘やかされたわがままな子供になってしまった。欧米が今でも本当に友人であるのなら、イスラエルを自滅の瀬戸際から引き戻す道徳的義務がある。

イスラエルはパレスチナの歴史的現実を否定することもできるが、そんなことをすれば、パレスチナ人が多数派になりつつあるという人口統計学的事実に目をつぶることになるだけだ。イスラエルが今、相対的に強い立場から和平を結ぶことを拒否するのであれば、交渉の対象となる国の残骸がまだいくらか残っているうちに和平を懇願せざるを得なくなる時が来るだろう。

レバノンでも同様に、特にヒズボラ支持者の間で、イランを後ろ盾とするこの組織は保護や「抵抗」の代理人というよりはレバノンの破壊の触媒であるという気づきが広がっている。

メディアコメンテーターの多くは最近のエスカレーションを眺めながら、各当事者が望んでいないから戦争が起こる可能性は低いなどと悦に入って言っている。そうではなく、それらの当事者が理性的ではなく、事態を完全にコントロールできておらず、無能さと利己的な意図を通して対立を煽るようなことばかりしていることを警告すべきなのだ。

ここ最近の混乱に続いて戦争が起こる可能性はますます高まっている。狂人たちが我々全員を地獄に道連れする前に彼らを止めるために、我々は協力して全力を尽くすべきなのだ。

  • バリア・アラマディン氏は受賞歴のあるジャーナリストで、中東およびイギリスのニュースキャスターである。『メディア・サービス・シンジケート』の編集者であり、多くの国家元首のインタビューを行ってきた。
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