Since 1975
日本語で読むアラビアのニュース
  • facebook
  • twitter

内戦の懸念をスーダンから払いのけるには遅過ぎるのか?

アブドゥルファッターフ・アルブルハン将軍に忠実なスーダン軍の兵士たち。ポート・スーダン。2023年4月20日。(AFP)
アブドゥルファッターフ・アルブルハン将軍に忠実なスーダン軍の兵士たち。ポート・スーダン。2023年4月20日。(AFP)
Short Url:
24 Apr 2023 09:04:23 GMT9
24 Apr 2023 09:04:23 GMT9

またしても、だ。アラブ、アフリカのまた別の国家で火の手が上がった。スーダンで起きている紛争の根底にあるのは平凡で単純なことである。2人の人物が大統領になりたいという欲望のためだけに国家そのものを焼き尽くそうとしているのだ。まるで統治の権利は民意ではなく武力で得られるものであるかのように。

モハメド・ハムダン・ダガロ(通称 ヘメッティ)のキャリアはラクダ泥棒から始まる。その後、民兵組織ジャンジャウィードで頭角を現し、大量虐殺と併せて組織的なレイプ、略奪行為、家畜の殺害を主導した。依然未解決のダルフール紛争では、推計で30万人の人々が虐殺され250万人が避難を余儀なくされた。

私はヘメッティに遭遇したことがある。ジャーナリストとして当時大統領だった忌まわしき独裁者オマル・バシールの側近と移動していたときだった。背の低い無口で印象の薄い人物で、文字通りバシールの影に隠れていたと記憶している。庇護者だったバシルを裏切ったヘメッティの私設軍隊は、ハルツームの路上で抗議行動に参加していた数百人の一般市民を拷問、レイプ、殺害の後、ナイル川に投げ捨てるというあまりにも恐ろしい2019年の大虐殺を起こした。それは最近の惨状を予感させる酷い蛮行だった。

アブドゥルファッターフ・アル・ブルハン将軍は、ダルフール地域を管轄する陸軍部隊の司令官を務めた後軍最高位に登り詰めた職業軍人である。ヘメッティとブルハンが共謀して2021年に文民政府に対してクーデターを起こした際には、全国民が憤怒と共に決起し、2人の野心は挫かれた。現在、ブルハンとヘメッティは互いに戦争を仕掛けている。数日間の戦闘後、両陣営は大統領府やハルツーム空港といった重要施設を部分的に支配下に置いたと誇らしげにしている。

スーダン外の部族出身で常に部外者の立場だったヘメッティと彼の即応支援部隊(RSF)は、スーダンの国際的な首都の繁栄した中心部を荒廃させることを、楽しんでいるかのようだ。最近数年間、インフレの抑制や貿易赤字の削減、債務免除の兆しに伴い、スーダンの経済は緩やかながら発展していた。しかし、相次ぐ武力干渉がこうした発展を台無しにしてきたのだ。これまで国家経済の原動力だった地区を焼き払った今回の事態は、スーダン経済を完全に粉砕してしまうだろう。

ブルハンの軍は航空環境と重火器を支配下に置いている。一方、ヘメッティの百戦錬磨の軍は無差別紛争を最近経験しており、リビアやイエメンで傭兵であった兵士を多く擁している。いずれの側も自らが支配しようとしている国民のことなどまったく考えていないが、それを証明するために、停戦失敗の茶番は何度繰り返されなければならないのだろうか?

腐敗した死体が散らばる街路で、市民たちはしゃがみ込むか逃げるかという恐ろしい決断を迫られている。食料も飲料水も急速に入手困難になりつつある。100万人以上の市民が強制的退去させられているスーダンは、アフリカで二番目に大きな難民人口を既に抱えている。今回の戦闘以前に、国連は1,600万人のスーダン人が2023年に人道支援を必要とすると予測していた。

スーダンがとめどない無政府状態に陥ってしまうことを阻むために、アラブ諸国は殺戮の停止に向けて積極的に行動しなければならない。

バリア・アラマディン

ヘメッティのRSFは、ほんの数年の間に、4,000人規模から10万人規模の武装組織へと成長を遂げた。ヘメッティがこのような私設軍隊を容易に構築出来た事実は、強大な民兵組織は正規軍隊の手に余る脅威であり、国家内に国家を樹立し得るのだという他の国々にとって有益な教訓となる。私が特に念頭に置いているのは、レバノンとイラクである。これら2国ではヒズボラやハシュド・アル・シャアビといった組織に最終的には軍隊が対峙せざるを得なくなる見込みなのだと、私は以前に軍関係者から注視を促された。こうした巨大民兵組織が未だ弱小で武装も貧弱だった時に抑制しておく勇気を持たなかったことが、後に国家全体を混乱や紛争へと導いてしまうのだ。

このスーダンにおける紛争は、急速に国際問題と化しつつある。ロシアの傭兵部隊であるワグネルグループはヘメッティのRSFと長年にわたって協力関係にある。これら2組織は共謀してスーダン政府の保有する金塊を大量に奪取している。米当局は、ワグネルがヘメッティに対する武器の供与を急いでいるとの警告を発した。ヘメッティは、リビアの軍事指導者であるハリファ・ハフタルから燃料や武器の提供を受けていたことの報告もある。エジプトのアブドゥル・ファッターハ・エルシーシ大統領が以前にブルハンに支援を提供していた経緯から、スーダン国内でエジプト軍兵士がRSFに拉致され後に解放されている。ヘメッティはこれまでに様々なアラブの指導者たちを後ろ盾としようとしてきたが、そうした指導者たちの多くは正規軍が一気に優勢となって秩序を回復する展開に期待しているように見受けられる。

ダルフールにおける戦闘の凶悪さと地域社会の大規模な離散を考慮すると、この紛争はチャドとリビアといった既に不安定化している国々へと飛び火する危険性を有している。ソマリア、エチオピア、中央アフリカ共和国、チャド湖地域、ブルキナファソ、マリと、アフリカのサヘル地域は紛争地帯を継ぎはぎしたかのようになっている。

スーダンがとめどない無政府状態に陥ってしまうことを阻むために、アラブ諸国は殺戮の停止に向けて積極的に行動しなければならない。シリアの二の舞は避けなければならない。シリア問題では、アラブ諸国は脇役に押しやられ、二線級の国々の介入により危機状況が限りなく悪化していった。国際社会は、単に自国民を航空機に乗せて救出する以上のことを行う必要がある。こうした救出が行われるということは、外交官たちが現状を短期間で解決可能な突発的な衝突などではなく、長期にわたる紛争だと考えていることを意味している。

もしブルハン側とヘメッティ側の両者が死力を尽くして最後まで闘うというのであれば、悪い展開の中でも他よりもましな解決策は、おそらく、スーダン国軍が迅速な秩序回復を優先した戦闘に切り替えることだろう。スーダン国民は何よりも文民統治への復帰を明確に求めており、いずれの軍事指導者に対しても民衆の支持は皆無なのだ。2019年のスーダンにおける民衆による革命は、軍服着用者の憲法を守る以外の役割を否定し、自由選挙に基づく文民統治システムの優越性を確立するという論理的帰結に到達するまで完遂される必要がある。

金や石油を初めとする天然資源を有するスーダンが、貧しい機能不全の国家であってはならない。豊沃な農地が広がる南スーダンは、中東の食料供給源として重要な国である。しかし、組織的な腐敗や破滅的な戦争によって、歴代の指導者たちがスーダンの富を浪費してしまったのだ。

より回復力のある国家、より広範なMENA地域がこの惨事から現れ出なければならない。アフリカとアラブの近隣諸国は、国際社会と共に、全力を尽くして、今回の殺戮を留めなければならないのだ。

スーダンはアラブ世界とアフリカ世界を繋ぐ位置に在る。スーダンの安定と民衆によるガバナンスの強化に対する支援は、アフリカとアラブ両世界の安心安全のために非常に重要である。

  • バリア・アラマディン氏は受賞歴多数のジャーナリストで、中東および英国のニュースキャスターである。彼女は『メディア・サービス・シンジケート』の編集者であり、多くの国家元首のインタビューを行ってきた。
topics
特に人気
オススメ

return to top