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ソフトパワーによりトルコとアラビア湾諸国との関係はどのように強まるか

トルコ大統領のレジェップ・タイイップ・エルドアン氏。(AP)
トルコ大統領のレジェップ・タイイップ・エルドアン氏。(AP)
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05 Aug 2023 08:08:18 GMT9
05 Aug 2023 08:08:18 GMT9

中東地域の秩序は、重大な転換を遂げつつある。その原因は、同地域の多くの国家間での関係正常化、アラビア湾諸国の国内変革、そして同地域諸国の政策に影響を及ぼす国際的アクター間における、地盤を揺るがすような危機的状況だ。

トルコとアラビア湾諸国の関係は、中東政治における広範な変化について興味深い事例を提供している。過去2年間の国交正常化の努力を経て、トルコとアラビア湾諸国との関係は、経済および政治的利益の最大化を目指す戦略に基づいた新たな段階に入った。トルコとアラビア湾諸国の首脳の相互訪問やそこでの合意は、政治経済的な文脈を通じた和解のプロセスをにつながる。

しかし研究が示唆するところによると、どのような和解プロセスであっても、その後、特に戦略的再編成の時期においては、国家はソフトパワー、つまり文化的関係、言い換えれば人と人との関係を重視し、長期的な対話と協力のチャネルを作るべきである。トルコとアラビア湾諸国との間で、危機に強い関係を構築するためには、ソフトパワーの手段を用いた効果的な関わりが必要だ。

以前にトルコとアラビア湾諸国の二国間関係が悪化したのは、相互関係が限定的であったことと、相互の政治・イデオロギー的観点や地域的ビジョンの理解を欠いていたことによる。経済的・政治的な関係性は各国政策立案者間の考え方の違いにから厳しくテストされることとなったが、人間同士の関係性も、文化、教育、メディア分野への緊張の悪影響によって影響を受けた。

地政学的状況が急速に変化していく今後10年間で、トルコとアラビア湾諸国との間で新たな協力分野をどうすれば生み出せるかを見出すのは、さらに貴重な必須事項である。トルコとアラビア湾諸国との間に強力な文化的・教育的関係があれば、たとえ政治的関係性は難しい時期であったとしても、関係性の継続に重要な貢献をもたらす。アラビア湾諸国でトルコに対して友好的な世論があり、トルコでアラビア湾諸国に対して友好的な世論があれば、相互関係を強化することができる。社会の間に相互信頼と理解を築き、トルコ・アラビア湾諸国間の関係への支持を民衆に促すためには、文化的・教育的プログラムが不可欠である。

人々が、学びを通じてお互いの国を直接体験すれば、文化、言語、社会に対する理解が深まる。また、留学先の国への信頼と共感を築くうえでも役に立つ。教育を通じて築かれた人と人とのつながりは、政治的関係の浮き沈みに対しても、間違いなく強い。

文化的・教育的関係があれば関係性の継続に重要な貢献をもたらす

シネム・センギス

例えば、クウェート大学とカタール大学では、トルコの人々に対して1年間のアラビア語奨学金を提供している。他のアラビア湾諸国も同じ道を辿り、人と人とのつながりを維持するためにこのような奨学金を提供することができるだろう。同様に、トルコにはユヌス・エムレ・インスティテュートのような効果的な文化機関がある。この研究所の支部は現在カタールにのみ置かれている。他のアラビア湾諸国にも同じような事務所があれば、文化や言語などの、相互に価値がありつつも政治的にはそれほど敏感ではない分野における対話の扉が開かれるだろう。

冷戦終結後、西側諸国はゲーテ・インスティテュートやブリティッシュ・カウンシルのように、海外に文化センターを建設する取り組みを行ってきた。また、EUにはエラスムスという効果的な学生交流プログラムがある。トルコおよびアラビア湾諸国の政府も、これと同じ目的のために、トルコのメヴラーナ交流プログラムのような既存のプログラムを利用したり、学生間交流の新しい独自のプラットフォームを作ることができる。

文化・教育プログラムを通じて、トルコとアラビア湾諸国社会の間には、武力ではなく、互いの価値観を深く理解することによる絆が生まれるだろう。国民だけでなく、人々が属する国家もまた、この絆によって恩恵を受ける。研究によれば、文化機関は、競争の激しい世界における自国の影響力と安全保障を守るという点で、各国の戦略的利益の増進に役立っているという。

メディアももまた、協力できる可能性を秘めた分野である。メディアは外交関係の重要な一部となっているが、それは絆を変化させる上で重要な役割を果たしているからである。トルコとアラビア湾諸国との間にかつて存在した緊張状態によって影響を受けた分野のひとつがメディアである。メディア分野を進展させる一つの方法は、双方が主催する地域メディアフォーラムを創設することだろう。メディア機関同士での対話のニーズが高まっているためだ。トルコとアラビア湾諸国のジャーナリストの交換プログラムも考えられる。メディアから社会へ、あるいはその逆へとより良い知識の循環を実現するためには、文化的・政治的背景の理解の深化が重要であり、それはこの和解のプロセスにおいて前進を遂げるための鍵である。

トルコもアラビア湾諸国も、文化的対話、教育的対話、およびメディアの対話のための有力な手段を有している。文化的関係を通じて肯定的な認識が得られれば、長期的な印象を残し、アラビア湾諸国やトルコと関わろうとする人々の意欲を生涯にわたって高めることができる。

ソフトパワーによる関わりが成功するか否かは、二国間関係に今後生じるであろう課題を克服できるような、長期的な人的投資にかかっている。したがって、経済的投資がトルコ・アラビア湾諸国関係の繁栄の要であるのと同様、若者への投資も同じように重要である。なぜなら、若者は将来的に社会における重要な声となり、やがてはトルコ・アラビア湾諸国関係に生じるチャンスと課題に取り組む役割を果たす者だからだ。

  • シネム・センギス氏はトルコ・中東関係を専門とするトルコ人政治アナリストである。ツイッター: @SinemCngz
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