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スーダンの維持可能な平和と発展の前提条件としての国民の調和と和解

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09 Aug 2023 01:08:49 GMT9

スーダンで、数千人もの市民が死亡や負傷し、また、近隣諸国への退避を余儀なくされる事態を引き起こした即応支援部隊(RSF)による反乱の勃発から4ヶ月が経過した。病院や学校、給水施設、発電所などのインフラ、そして、多数の地域の住宅地が破壊と略奪の対象となり、中央政府の行政サービスに支障が生じている。その一方で、ダルフールの西部では、RSFが民族浄化と言い得る由々しい人権侵害を行うに至っている。

こうしたRSFの恐ろしい行為は、スーダン人に多大な苦痛と忍従を強いるものとなっており、衝突の終結そして反乱勢力の敗北後の迅速な対応が強く必要とされている。よって、反乱終結後の政府は、スーダンの社会的、経済的、政治的構造を再建し国内の和解を実現する任に当たることになる。これは、現時点では望むべくもないことではあるが、スーダンの国家としての存続には必要不可欠なことである。

包括的で包摂的な国民の結束と和解への道筋には、政府を中心とする取り組みや地域社会の強い関与、そうした個々の取り組みの強固な統合と調整の仕組み、そして最重要な要素として取り組みそれぞれを効果的に運営管理するための評価ツールが必要となる。

ルワンダの事例から学ぶべき教訓は、国民の結束と和解を実現するための取り組みは、富と権力の共有に注力した過去の数例の和平合意、特に包括的和平合意とは対照的に、より革新的かつ社会的に統合された方法に根差すべきであるということである。

憲法や法制度改革、さらには、社会経済福祉プログラムは包括的な国民の結束と和解を実現する最も効果的な方法の1つである。これに反して、ルワンダの教訓は、紛争(大量虐殺)や観念形態、民族的ステレオタイプ化、治癒しない心理的・身体的外傷、貧困、損害賠償政策の不在といった、特定の地域社会の態度や行動への固執が、和解と人間の尊厳の回復へのプロセスの進行を阻むことを示している。

ルワンダの事例から学ぶべき教訓は、国民の結束と和解を実現するための取り組みは、より革新的かつ社会的に統合された方法に根差すべきであるということである

アリ・モハメド・アーメッド・オスマン・モハメド

ルワンダでの出来事が大量虐殺だったのは事実である。そして、それは、RSFによって反乱とクーデーター未遂が引き起こされたスーダンと異なる状況だった。とはいえ、RSF隊員らによるそれに続く数々の人権侵害行為の実態は、このスーダン紛争が根の深い原因を有していることを示している。特にダルフール西部での出来事は民族的要因の影響が大きかった。さらには、一般のスーダン市民の家屋の略奪は、RSF自体が主張するように、ハルツームの富裕層への報復であり、彼らの深い部分にある情念を反映している。

国民の結束と和解の切実な必要性を明確に示すもう一つの論拠は、RSFの反乱を、スーダンの独立以来の特徴となっている政治的分断と二極化からの逸脱と看做し得ない点である。

最初に迅速な解決が必要な課題が複数存在している。基本的な安全と治安対策の提供と市民の保護、被害を受けた一般民間人の精神的健康と心理社会的幸福の促進、水や衛生、保健、初等教育といった基本的なサービスの提供、基本的な行政や財政など政府の中核的な機能の回復がこうした喫緊の課題に含まれる。こうした事の達成のための最初の1歩に必要なことは、非政府組織の関与を重視することである。

スーダン国民、特に多様な政治的、社会的グループの若年層が国民としての対話の過程で国民の結束や和解、その他の社会的・開発的問題について意見交換できるプラットフォームを利用可能とすることが非常に重要である。また、近隣諸国に避難していた人々の自発的な帰還が先行するのであれば、そうした国民の対話が強化されることが一層重要となる。国民の結束と和解の促進には、RSFの残存隊員を含むすべての武装勢力をスーダン軍に統合し、将来の反乱や軍事クーデターの発生を防止することが必要である。

さらに、国民の結束と和解を目的とした国家政策と制度の採用は、同じく和解の目的を推進する憲法や法律、教育改革同様に重要である。また、政治的信条由来の分断を防ぐため、こうした取り組みは国の独立した専門家委員会や機関によって行われるべきである。

世界各地でこれまでに得られた知見は、孤児や障害を抱えて生きる人々、未亡人、高齢者、貧困層といった最も弱い立場にある人々を保護するプログラムと共に、貧困の削減に向けた取り組みが和解を目指す努力の基本であることを示している。

経済の活性化が和解の取り組みにおいて重要な役割を担うことへの留意が重要である。これは、経済の活性化が、、過去の心の傷や分断への対処となるだけではなく、豊かで包括的な未来の基礎を築くからである。経済を活性化することで、脆弱な地域社会の向上が計られ、平等な成長と利益を共有するための環境が整う。経済の活性化は、雇用創出や起業家精神の高揚、インフラへの投資を通じ、個人や地域社会の物質的な健全性を改善する。また、それは、社会的一体性を醸成し、過去の不正行為によって生じた溝を埋める。経済的平等を推進し、あらゆる個人に公平に成功の機会を提供することは、信頼に立脚した社会の構築を促進するものである。

結論として、国民の結束と和解の醸成を目的としたこうした仕組みは、通常、時間を要し、また、資金面でも技術面でも国際社会の支援に大きく依存することは明白である。そのため、この移行を促進するためには、国際機関や援助団体、アフリカ連合や政府間開発機構、イスラム協力機構などの地域組織、スーダンの近隣諸国の役割が最重要となる。自国で培った考えを活かせば活かすほど、こうした仕組みにおけるスーダン国民の独自性は高まり、その結果、より成功した、維持可能な和解プロセスが達成されることだろう。

  • アリ・モハメド・アーメッド・オスマン・モハメド氏は、東京の在日スーダン共和国大使館の臨時代理大使である。
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