
ベンヤミン・ネタニヤフ首相率いるイスラエルの現政権は、批判をそらすのを得意としている。
1年半の間、野党側にいた現政権のメンバーは、たとえ現実の状況が正反対の方向に非難の矛先を向けていたとしても、ナフタリ・ベネット氏とヤイール・ラピード氏が率いる前連立政権をありとあらゆることで非難し続けた。
当時の政府は、あらゆるテロ攻撃、(通常兵器・核兵器を問わず)イランの冒険主義、生活費危機の拡大、さらにはハマスへの資金提供について責任を追及された。
非難する側にとっては、言いがかりは突飛あればあるほど良く、クネセト(イスラエル国会)の議員に嫌がらせをしたり、(伝えられるところによると)賄賂を送ったりして野党側につくよう仕向けるなど、相手の弱みにつけ込む方法を絶えず模索していた。
結局、政権は崩壊し、その動きは昨年11月の選挙で最高潮に達し、その結果、イスラエル史上最も右翼的で混沌とした政権が誕生した。
12月下旬に第6次ネタニヤフ政権が発足して以来、その取り組みには改善を報告できる点がひとつもない。それどころか、国内は完全に混乱状態に陥っている。
ヨルダン川西岸地区の治安状況は制御不能に陥っている。イスラエル国内のパレスチナ人の間で記録的な数の殺人が起きている。ヒズボラは、イスラエルとレバノンの国境沿いで挑発行為を強めている。政府の腐敗は、例外ではなく、常態化している。政府の司法クーデターに反対する何十万人ものイスラエル人によるデモは毎週続いている。そして、かつてないほど多くのイスラエル国民が、国を去りたいと言っている。
ネタニヤフ首相と、首相に忠実な、道を誤った取り巻きたちは、嘘をつき、否定を表明し、政敵を非難し続けることによって、こうした事態に対応している。
このような志願兵の価値観が、国の司法を攻撃している政府ともはや一致しない状況にある。
ヨシ・メケルバーグ
この対立の最も興味深い側面のひとつ、さらに言うならば最も不穏で憂慮すべき側面のひとつは、上級閣僚を含む連立政権の議員による、最高幹部を含む治安部隊や、国家の民主的基盤に対する政府の攻撃が止まるまで志願を拒否すると表明している予備役に対する無責任な攻撃である。
予備役に対する毒のある攻撃は、その多くがソーシャルメディアに投稿されており、「ディープステート(闇の国家)」が扇動し、エフード・バラク前首相が資金提供したとする軍事クーデターへの非難など、ばかげたものから中傷的なものまでさまざまである。
クネセトの閣僚や連立政権の議員の中には、現在権力を握っているのは自分たちであり、現在進行中のあらゆる問題が自分たちの監視下で起きていることを忘れている者もいるようだ。まるで「Qアノン入門書」を読んだかのように振る舞うのではなく、そのことを自覚する必要がある。
彼らが批判している予備役の多くは、パイロット、特殊部隊、サイバーセキュリティの専門家、海軍将校など、軍の重要な部分を担うエリート部隊のメンバーである。志願拒否が「軍事クーデター」だという主張を含め、彼らを標的にした無謀で野蛮な非難や糾弾は実にくだらないが、現政権の権威主義的傾向を露呈している。
「志願する」という動詞は、自分の自由意志で任務を引き受けるという合意を意味し、予備役は、契約上も法律上も、任務を引き受ける義務を負わないという事実を、連立政権の議員たちに思い出させる価値があるだろう。
このような志願兵の価値観が、国の司法を攻撃している政府ともはや一致しない状況にある。それゆえ彼らは、なぜ自分の時間を捧げ、自分の命を潜在的に危険にさらし、政府の意思や判断に不信感を抱きつつもその汚れ仕事をすることで他人の権利を抑圧し、そのような仕事をすることで国際法廷に出廷するリスクを冒す必要があるのかと疑問を抱いているのだ。
家や家族から離れ、国のために命をかけて志願するという寛大な姿勢を撤回した人々は、当然のことながら、自分たちは民主主義に奉仕するために予備役になったのであって、何十年も続いてきた民主的な取り決めそのものを破壊し、司法の独立を損なうことで腐敗を受け入れている政府に奉仕するためではないと主張している。
結局のところ、予備役とは、兵役で義務の範囲を超えたことをする民間人であり、招集されるまで軍服を着ることはない。従って、「軍事クーデター」という言葉は、民主主義システムの擁護者を中傷しようとする試みに過ぎない。
このような侮辱は、徴兵忌避者や、極右イデオロギーやテロの支持により、イスラエル国防軍に動員されるには危険すぎるとイスラエル総保安庁(シンベト)に見なされている人々であふれる政府から発せられるものであるため、なおさら卑劣である。
最高裁を守ることは民主化運動の最優先事項であり、それは当然のことであるが、最高裁はイスラエルの占領軍による人権侵害の多くを覆い隠し、イスラエル兵が海外で起訴されるのを防いできた機関である。何十年もの間、最高裁はグリーンライン(1949年停戦ライン)を挟んだそれぞれの側に、2つの全く異なる司法制度が存在することを可能にし、ヨルダン川西岸地区と東エルサレムにおけるアパルトヘイト体制の確立をほとんど妨げてこなかった。
しかし、入植者を代表する連立政権の議員たちは、軍や司法を執拗に攻撃し、テロに甘いと非難したり、「左翼主義者」という彼らの限られた語彙の中で最大の侮辱を浴びせたりしている。
軍務に就いた輝かしい経歴を持つわけでもない政府高官を代表とする人たちが言うのだから、実に滑稽だ。皮肉にも現在国家安全保障大臣を務めるイタマル・ベングビール氏は、カハニストのテロ組織「カハ」への関与など、若い頃に極右活動を行っていたため、イスラエル国防軍での義務兵役への参加を禁じられ、テロリズムと人種差別を支援した前科がある。
そして、同じく人種差別主義者であるベザレル・スモトリッチ氏は、無能ながら財務大臣を務めるだけでなく、国防省付大臣も兼任している。今年、パレスチナのハワラ村を一掃するよう呼びかけたスモトリッチ氏は、20代のときにイスラエル国防軍で短期間兵役に就く前に、イェシバ(ユダヤ教神学校)で学ぶために入隊を延期しており、予備役になったことは一度もない。
このような人たちに、人生の大半を自国の治安部隊への奉仕に費やしてきた人々を卑劣な言葉で批判する資格など到底ない。
実際、抗議するパイロットは「地獄に落ちろ」と言ったリクード党員のシュロモ・カルヒ通信大臣が発したような暴言は、民衆の抵抗とイスラエル国内とヨルダン川西岸地区の両方での暴力の急増に直面して手詰まりになっている多くの閣僚や他の人々のパニック的な反応を表している。彼らができるのは、苛立ちのあまり怒りを爆発させることだけだ。
彼らが本当にイスラエルの安全保障を気にかけているのであれば、正しいことを行い、有害かつ反民主主義的な法案を今すぐ取り下げるべきである。