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レバノン・イスラエル合意後は、不可侵条約の締結が必要である

イスラエルとの国境沿いにあるレバノン最南端の町、ナクーラの海岸道路の眺め。(AFP)
イスラエルとの国境沿いにあるレバノン最南端の町、ナクーラの海岸道路の眺め。(AFP)
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14 Oct 2022 02:10:04 GMT9

レバノンとイスラエルは10月11日火曜日にようやく、米国の仲介による地中海の海洋境界線に関する協定に合意したが、この展開はラピド政権がレバノン側から提案された変更を拒否した後のことであった。

ヤイール・ラピード首相は来月の投票に向けて激しい選挙戦に直面しており、米国の圧力に屈してイスラエルの国益を放棄したと思われたくなかったのだ。しかし、トランプ政権下で海洋境界線策定問題を扱ったデイビッド・シェンカー元米国特使は、『タイムズ・オブ・イスラエル』紙のインタビューで、レバノンは望むものをすべて手に入れ、イスラエルは権利を放棄したと述べた。さらに付け加えれば、イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ前首相は、選挙でのライバルに対する点数稼ぎと、イスラエルの権利と安全を維持できる唯一の指導者であることを示すために、この境界画定の合意を利用しているのだ。

しかし、イスラエルはガスの採掘を開始する必要がある。8日土曜日には、イスラエル治安当局がエネルギー企業のエナジーン社がカリシュ・ガス田の採掘試験を開始する許可を出したと、同国のテレビが報じた。試験が成功すれば、ヒズボラの警告に関わらず、イスラエルは生産を開始することになっていたのだ。

ヒズボラとイスラエルという両当事者が苦境に立たされたのだ。どちらも、対立が誰の利益にもならないことを理解していたのだ。ヒズボラにとって、現在の状況は2006年とは異なり、レバノンではヒズボラに反対する強力な運動があるためだ。そして地域的には、ヒズボラはかつてイスラエルに対する抵抗運動としてアラブ諸国に受け入れられていたが、現在ではアラブ連盟からテロ組織というレッテルを貼られている。したがって、イスラエルが攻撃すれば、南部のヒズボラの民間人支持者たちはレバノンの他の地域に避難することができなくなるのである。2006年に彼らを迎えたレバノンの家々や山々は、現在では彼らを受け入れはしないだろう。そして、2006年の戦争(レバノン侵攻)後とは異なり、湾岸諸国は復興のために何十億も寄付することはないだろう。

一方、イスラエル社会は相変わらず二極化している。戦争が起きている間は連帯感が生まれ、馳せ参じるが、戦争が終わると、再び分裂が起こり、さらに分裂が深まる。

ヒズボラはイスラエルが国境画定前にガスの採掘を始めた場合、掘削装置を攻撃すると約束していたのだ。レバノンの反対派は、ヒズボラがイスラエルに対抗するという約束を守っていないと非難していたのだが、実際にはヒズボラはプロパガンダに利用するだけで、ヒズボラの本当の使命はイランの地域全体への覇権の展開を支援することにある。ヒズボラがイスラエルへの脅威を取り下げれば、反対派はヒズボラの信用をさらに失墜させる攻撃材料を手にすることになるだろう。

一方、ラピード氏は国家安全保障問題で弱腰とか軟弱であると見られる訳にはいかない。ラピード氏はネタニヤフ氏より弱いと思われたくはないのだろう。ヒズボラが攻撃してきた場合、ラピード氏はエフード・オルメルト氏と同じように対応しなければならない。オルメルト氏は前任者のアリエル・シャロン氏と比べて弱いとみなされたくなかったため、2006年に国境を越えてヒズボラに兵士2人を誘拐され、レバノンへの猛攻撃を開始した。

境界画定に合意しても、イスラエルがヒズボラの精密誘導ミサイルのことを忘れたことにはならない

ダニア・コレイラト・ハティブ博士

今週の急進展は、強さを証明しなければならないという両当事者の負担を軽減するものである。この合意は、衝突を防ぐために必要だったのだ。しかし、それはレバノン人とイスラエル人の距離を縮め、将来の紛争の可能性を高めることにもなる。

イスラエルは今後、海上境界線内のガス田で採掘を開始し、レバノン側はさらに北で探査を開始することとなる。レバノンは既に、フランスのトタルエナジーズ社に「速やかに」探査を開始するよう要請している。両当事者は経済的利益を追求するために安定を望んでいるが、特にイスラエル人にとっては安全保障の方が重要なので、やはり衝突が起こるかもしれない。

一方では、イスラエルはガスの採掘を開始し、掘削装置を確保したいが、他方ではヒズボラの貯蔵武器の問題がある。境界画定に合意しても、イスラエルがヒズボラの精密誘導ミサイルを忘れたことにはならない。 それゆえ、衝突を起こさないようにすることが、両当事者、特にレバノンの利益となるのである。

近年、「技術的には」戦争状態にある2つの国が共有する国境が、しばしば意図せぬ対立を引き起こすことが分かっている。両国とも国境が陸から海へと広がり、経済的な利害が絡んでいる現在、同じようなことは繰り返したくはないため、衝突を回避するメカニズムが必要なのだ。だからこそ不可侵条約が、境界画定の合意が批准された後に締結されるべきなのだ。

このような合意は、両者にとって成功であると売り込むことができる。ラピード氏は、戦争ではなく交渉を通じて、イスラエルの安全を保証することができたと言えるだろう。これは、ラピード氏が選挙戦でネタニヤフ氏をやり込めるポイントになるだろう。そして、安全保障はイスラエル国民にとって非常に重要な問題である。一方、ヒズボラは、国交正常化、承認、外交関係を含まない不可侵条約は、トタルエナジーズ社に必要な安全保障を確保するために必要な措置であると言えた。

レバノンにはまだ確認埋蔵量がない。探査はもはやリスクの高い事業である。企業は何億ドルもかけてガスや石油を探すが、全く発見できないこともある。企業はこの事業リスクに、ヒズボラと対立した場合に自分たちがイスラエルの標的となりうる安全保障上のリスクを加えることはないだろう。

米国の仲介で不可侵条約を早く提案すべきだ。1948年の第一次中東戦争の後は休戦協定、1996年のイスラエルの「怒りの葡萄」作戦後は4月の停戦合意、2006年のレバノン侵攻後は国連安保理決議第1701号があった。現在、停戦のために戦争をするのではなく、米国、イスラエル、レバノン人は、レバノンとイスラエル双方にとって安定を確保する新たな停戦のために境界画定の合意を利用すべきだ。

  • ダニア・コレイラト・ハティブ博士は米国アラブ関係の専門家で、ロビー活動の研究に注力している。彼女はトラックIIに焦点を当てたレバノンの非営利団体である協力と平和の構築のためのリサーチセンター(Research Center for Cooperation and Peace Building)の共同創設者である。
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