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中国とGCC、湾岸地域の輝ける未来に向け前進

2022年12月7日、サウジアラビアのリヤドに到着した中国の習近平国家主席。(ロイター)
2022年12月7日、サウジアラビアのリヤドに到着した中国の習近平国家主席。(ロイター)
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14 Dec 2022 02:12:46 GMT9

先週の9日にリヤドで開催されたGCC・中国首脳会議は、中国とGCC(湾岸協力会議)が一つのブロックとして初めて、両者間の多面的な戦略的パートナーシップを確立するものであった。この会議では、地域および国際的な重要課題に対する共通の見解をまとめた公式声明に加えて、包括的な政治・安全保障に関わる対話からより深い経済のパートナーシップ、文化的関与の拡大に至るまで、合わせて15の主要分野でパートナーシップを発展させるための5年間の共同行動計画を採択した。

この戦略的パートナーシップが完全に実行されれば、アラブ地域における中国の役割が転換し、多くの新しい分野でその関与が拡大する可能性がある。

リヤドでのGCC・中国首脳会議(正式名称は「安全保障と協力のためのGCC・中国首脳会議」)は、イランにとっては好ましくないものであった。イランはテヘランの中国大使を呼び出し、首脳会議の結論として出された共同声明に不満を表明した。イランの外相は声明に関して、ツイッターで中国側を非難した。また、中国大使は、近く中国の副首相がイランを訪問することを約束し、波風を立てないようにしたようだ。

イランの公式な抗議は、1971年以来イランに占領されているアラブ首長国連邦(UAE)の島々の問題に集中していたが、イランのメディアは、この会議全体が反イラン的であると非難した。国内での抗議行動の高まりから目をそらさせようとして、イランは国外、特に米国、EU、GCCを混乱の原因として非難しようとしている。サミットの開催時期もイランの不安を煽ったのだが、それ以上にイランが懸念したのは、中国とGCC諸国との連携が深まったこと、そして島々の占領やその他のイランの行動が今回の共同声明で何度も言及されたことについてである。

実際は、リヤドでの会談は反イランとは程遠いものであった。会談では、GCC諸国とイランの関係は、内政不干渉、政治的独立、主権、領土保全の尊重、「国連憲章と国際法に従った」平和的手段による紛争解決などの国際規範に基づくべきだと強調されただけなのだ。

共同声明は、イランに対しては、自らも加盟している核不拡散条約を遵守し、核プログラムの平和的性質を確保し、国際原子力機関(IAEA)に全面的に協力するよう求めている。さらに声明は、あらゆる地域的な不安定要因に対処し、テロリストや宗派集団への支援をやめ、弾道ミサイルやドローンの拡散を防ぎ、イランから直接またはその代理人を通じて攻撃を受けている国際海運や石油施設の安全を確保することの必要性も強調している。

中国が湾岸地域に関してこうした懸念を公式に表明したのは、初めてのことかもしれない。これには、包括的共同行動計画や核兵器不拡散条約(NPT)、IAEAの保障措置の不履行といったイラン政府の行動に加え、湾岸地域の安定とエネルギー供給を常に脅かしていることに対する不満が表れている。

イランによる地域的な悪質行為に対抗する姿勢は、中国の地域的な地位と効力にとっても重要だ。地域諸国間の対話および地域諸国との対話を求めることは意味があるが、そのような対話を効果的に進めるための原則を提示することも同様に重要である。

イランとの問題以外では、GCCと中国は、パレスチナとイエメンについて長く共通の立場をとっており、中国はこの二つの重要な問題に関するすべての国連決議を固く支持し、「親イラン武装組織フーシ派の民兵が民間人を標的として、サウジアラビア、UAE、イエメン国内、アラブ地域の航路で、さらには国際航法に反して行ったテロ攻撃」を初めて非難している。今回の首脳会談では、多くの緊密なパートナー国間と同様、意見やニュアンスの違いは残ったものの、シリア、イラク、レバノン、リビアを含むほとんどの地域問題について合意に至った。

GCCと中国は、双方にとって重要な地位を占めるアフガニスタンについて、同国の安全と安定を守る必要性で合意し、人道支援を提供するための一層の努力を呼びかけた。タリバンに対しては、すべてのアフガン国民の基本的権利、利益、自由を確保し、包括的な政府を樹立するための度重なる公約を履行するよう求めた。また、中国とGCC諸国は、テログループと麻薬密売人らによるアフガン領土の乱用も懸念している。

ウクライナについては、人命を守り、地域的および国際的な安全と安定を守るために、「国際法と国連憲章に則った、紛争解決と政治的解決に向けたすべての国際的努力」を支持すると表明した。

GCCと中国のパートナーシップの他の側面に関して、習近平主席は、中国政府によるGCC戦略の5つの主要な構成要素について説明した。

第一に、中国は新しく、多様なエネルギーのあり方を提案している。中国はアラビア湾岸諸国から石油と天然ガスの輸入を続ける予定だが、中国通貨による石油とガスの取引のプラットフォームとして、上海証券取引所を「フルに活用」したい考えだ。また、水素を含むクリーンな再生可能エネルギーの開発におけるGCCとの協力も模索している。原子力の平和利用のためのGCC・中国フォーラムを設立し、この分野で300人のGCC諸国民を訓練することも提案した。

第二に、中国は、投融資協力の新分野を開拓し、GCCの投資会社が中国の資本市場でより活発に活動し、GCCと中国の投資ファンドが協力し合うことを望んでいる。また、人民元建て決済のための国際銀行間決済システム(CIPS)を活用し、各国通貨を交換することによる資金調達も提案している。こうした動きを具体化するため、現在、GCCと中国の共同投資のための協議会や、産業・投資協力のためのフォーラムの設置が提案されている。

今回の首脳会談では、多くの緊密なパートナー国間と同様、意見やニュアンスの違いは残ったものの、ほとんどの地域問題について合意に至った。

アブデル・アジーズ・アルウェイシグ博士

第三に、中国は、大規模データとクラウドコンピューティングの共同センターの設立、5Gと6Gの通信技術とネットワーク構築における協働、デジタル貿易、気象技術などの重要かつ先駆的な分野でのイノベーションと技術協力を強化したいと考えている。

第四に、中国は宇宙協力における新たなブレークスルーを模索している。宇宙探査のインフラと衛星技術におけるパートナーシップの拡大も求めている。また、GCCの宇宙飛行士を招いて中国の宇宙飛行士と共同で宇宙実験を行うことや、GCCと中国が共同で月や深宇宙を探査するための新しいセンターを設立することを提案している。

第五に、中国は文化的関与のための新たな機運の醸成を目指している。中国は、それぞれの地域におけるアラビア語と中国語の教育に重点を置いたこれまでの協定に基づき、GCC地域の300の大学および学校と提携し、中国語を教えるための300のスマート教室を新設するとともに、GCCの国民が中国で中国語を学ぶための3,000件の補助金を提供すると発表した。また、アラビア語と中国語の両方を通した文化交流のための「GCC-China Forum for Language and Cultures」(GCC・中国言語・文化フォーラム)と「GCC-China Library」(GCC・中国ライブラリー)を開催する予定だ。

今回のリヤド・サミットは、GCCと中国の戦略的パートナーシップに関する共通のビジョンを明確に打ち出した。しかし、そのビジョンが、GCCと地域内の同盟国との関係、米国や英国との緊密なパートナーシップ、あるいは芽生え始めたEUなどとの戦略的パートナーシップに悪影響を及ぼすと読み取るべきではない。GCC諸国はアラブ地域と世界の安全、安定、繁栄を求めて、各国個別に、そして集合体として、その目的のためにあらゆる関係を模索している。中国とのパートナーシップは、そうした目標を達成するための重要な基盤となるのだ。

  • アブデル・アジーズ・アルウェイシグ博士は、GCCの政治問題・交渉担当事務次長補であり、アラブニュースのコラムニスト。この記事で表現されている見解は個人的なものであり、必ずしもGCCの見解を表すものではない。ツイッター @abuhamad1
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