Since 1975
日本語で読むアラビアのニュース
  • facebook
  • twitter

サウジアラビア、海洋保全のグローバルリーダーとして頭角を現す

Short Url:
17 Feb 2024 10:02:05 GMT9
17 Feb 2024 10:02:05 GMT9

Netflixで配信が始まった、サウジアラビアの野生生物をフィーチャーしたドキュメンタリー映画『Horizon』は、王国のユニークな生物多様性に関する意識啓発の転機となるだろう。

サウジアラビアにおける自然保護の努力は、数十年にわたり陸上野生生物に向けられてきた。だが、ビジョン2030の下、サウジアラビア王国は海洋保全のグローバルリーダーとしても急速に頭角を現しつつある。

こうした取り組みを先導するのは、紅海10年探査がもたらした数々の発見だ。この大規模探査は、国立野生生物センター(NCW)、アブドゥルアジーズ国王大学、アブドゥラー国王科学技術大学、ファハド国王石油鉱物大学、NEOM、レッドシー・グローバル、オーシャンXの提携によって進められてきた。

2月10日から11日にかけて、NCWはリヤドで紅海10年探査シンポジウムを開催し、海洋保全の転換点を示した。NCWが主導する紅海10年探査では、サウジアラビアの紅海海域の海岸線から深海まで、北から南まで、包括的な調査がおこなわれた。

探査を担った2隻の研究船、オーシャンエクスプローラーとアブドゥルアジーズ大学のアル・アジージは、潜水艇、深海ロボット、ヘリコプター、最先端テクノロジーと実験室を完備している。

紅海10年探査では、高度なDNAシークエンシング技術を用いた、バクテリアからクジラまでの紅海の生物多様性の包括的目録が作成され、これは紅海の30%を保全するという王国の目標の指針となるものだ。

探査では多数の新種の生物、さらには新たな科のサンゴまでもが発見され、これまで学術記録のない興味深い海洋生物に関する報告が相次いだ。

探査において、地球上でもっとも個体数の多い魚とされるハダカイワシの生きた姿が初めて撮影された。ハダカイワシは深海の闇に紛れているため、これまで誰も生態を記録したことがなかったのだ。また、非常に希少な海洋生物である、繊細なゼラチン質の動物もまた、生きた姿が撮影された。

われわれは自然遺産の明るい未来を築きつつあり、サウジアラビアは将来世代のための自然保護にコミットしている

カルロス・ドゥアルテ

われわれは保全対象種であるウミガメ、イルカ、クジラなどの動物の個体数評価を実施し、さまざまな驚異的な生態系を発見した。とりわけジーザーン北部沖のブルーホールと沈降ラグーンは注目に値する。

これらの驚くべき生態系は、地元漁師ですら浅いサンゴ礁や深い陥没穴を避けるために存在を知らなかったもので、自然保護とエコツーリズムの重要目標であり、世界的にも大きな価値をもつ。

探査により、紅海では栄養塩流入に乏しいにもかかわらず、微生物食物網の効率的な処理のおかげで、世界最大級の深海魚資源量が維持されていることが明らかになった。

探査チームはまた、紅海全域のゴミやプラスチックの汚染レベルも調査し、海底に堆積した廃棄物の最大の排出源は海運であることをを特定した。海洋汚染を避けるため、海運事業者には既存の方針へのコンプライアンスの向上が求められる。

さらに、われわれはサンゴの健全性評価を実施し、サンゴ礁のなかでもっとも状態のよいもの、復元努力を傾けるべきもの、ウミガメの幼体の生息地としてもっとも重要なものを特定するとともに、紅海における大型鯨類の繁殖を初めて確認した。

われわれはまた、史上初めて海洋探査に導入されたテクノロジーを駆使して、海底からサンプルを採取することにも成功した。

これは最先端の化学分析とDNAシークエンシングの手法により、1800年から現在までの紅海とその生物多様性の変化を特定するという類を見ないもので、野生生物の資源量をかつての状態へと復元するうえで目標設定の役割を担う。

わたしはこの大規模探査の科学コーディネーターを務める栄誉に与った。われわれは地上に多くの発見をもたらしたが、なかでも特筆すべきは、紅海に関する知識の地平を拡大する原動力としての協働、そして協働的環境を創出するリーダーシップの役割であり、高名な海洋科学者にしてNWCの最高経営責任者であるモハメド・クルバン博士の卓越した指導手腕を称えたい。

われわれは兄弟姉妹として、一丸となって自然遺産の明るい未来を築きつつあり、サウジアラビアは将来世代のための自然保護にコミットしている。

カルロス・ドゥアルテ氏はアブドゥラー国王科学技術大学のイブン・スィーナー特別教授。専門は海洋科学。紅海生態学タレック・アフメド・ジュファリ研究部長、グローバル・コーラル研究開発アクセラレータープラットフォーム事務局長も務める。海洋生態系研究に40年の経験をもつ。

特に人気
オススメ

return to top