Since 1975
日本語で読むアラビアのニュース
  • facebook
  • twitter

イスラエルがウイルスとネタニヤフの両方と戦う方法

Short Url:
22 Mar 2020 10:03:21 GMT9
22 Mar 2020 10:03:21 GMT9

その昔、イスラエルの政治においても、連立政府を結成する任務が、大統領から、同志であるクネセトのメンバーの最も多くから推薦された人物に命じられた場合には、その人物が実際にその任務を成功裏にやり遂げると現実的に期待できた。しかい、今はもう違う。

「青と白」党のリーダーであるベニー・ガンツが、問題だらけの連立交渉の海を航海できるとは考えにくい。むしろ、イスラエルは完全な政治的嵐に突入しようとしている。1年も経たない内に3回も行われた選挙が、またも決定的な結果が得られずに終わっただけではない。権力に固執し、先週にも開始される予定だった汚職の裁判を避けようと必死に試みていたベンジャミン・ネタニヤフ首相にとって、COVID-19のパンデミックがゲームチェンジャーとなったのだ。

ガンツの政府をまとめ上げようというほぼ不可能な試みは、コロナウイルスの危機でさらに困難になり、政局を巧みに操るネタニヤフの手に渡った。彼はその非常に優れた政治感覚によって、イスラエルの有権者が過去3回の連続選挙で拒否してきたこと、そして、彼の法務チームと政治家の同志達ができなかったことを、パンデミックが彼にもたらすことが可能だと理解している。すなわち、彼を政権の座に残し、裁判所から出しておくことだ。しかし、主要な政府の地位に設置した同志達と協力し、彼がやったことは、権力の不正な行使としか言いようがない。

それは、ネタニヤフファミリーによって選抜されたアミール・オハナ法務大臣の動きから始まった。彼は、偉大な法的精神などではなく、バルフォーストリートからのファミリーに向けた不屈の忠誠心のため、緊急公聴会を除くすべての裁判所の活動を凍結した。それはすなわち、ネタニヤフの裁判の延期を意味し、少なくとも5月までの猶予ができたということを意味する。

コロナウイルスが、人々の生活と健康、世界経済、そして社会全体の幸福に対して与える脅威の深刻さを軽視するのはもちろんできない。そして、愛されようが嫌われようが、ネタニヤフは古き良き危機が好きで、グローバルな危機はもちろんのこと、どんな緊急事態をも察知し、自身の成功に使うことができるのだ。自分自身を世界のリーダーとして、優れた男だとして、プレゼンすることができるからだ。少なくとも、彼に付き従う盲目の信奉者に対しては。さらには、最も厳しい彼の批評家ですら、彼が背後にあるホワイトボードと彼の前にあるマイクを使って国民に向かって演説をし、優秀さを見せながら、COVID-19パンデミックの苦境の中で国を導くのを見れば、まさに彼の得意分野であると認めざるを得ない。慎重さ故、彼はウイルスの拡散を抑えるために大胆かつタイムリーな決定を下すことになった。

「青と白」党のリーダーであるベニー・ガンツが、問題だらけの連立交渉の海を航海できるとは考えにくい。むしろ、イスラエルは完全な政治的嵐に突入しようとしている。

ヨッシ・メケルバーグ

しかし、前例のない危機を管理することと、個人的および政治的利益のために恐怖を悪用したり、リスクを誇張することは別のことだ。ネタニヤフが、裁判に直面することや権力を失うことを避けるためにどんな犠牲もいとわなかったという経緯を見れば、彼が国益と私的利益を混同していることは疑いの余地がない。

裁判の延期は、審判を避けるための日和見主義じみたものだったかもしれないが、彼の取り巻きのもう一人、クネセト議長のユリ・エドルスタインによる月曜日までの議会延期の決定は、首相官邸による憲法クーデター未遂というひどい出来事のきっかけとなった。これは、月曜日までに国が全面的に閉鎖される可能性が高く、政府は緊急法の下でほぼ無制限の権限を許されるという理解が十分あったうえでなされたものだ。

この反民主主義的な動きに驚くことはないだろう。何年もの間、壁に書かれたままになっていたことであったし、イスラエルの右翼が選挙に勝って政府を結成することがますます難しくなっていたため、見通しは悪かったのだから。現在の政府の下での政治システムの軌跡は、法の支配、言論の自由、そして今や集会の自由といった最も基本的な民主的価値を妥協し制限することに向けられてきたのだ。

今後数週間で、政府はクネセトの承認なしに、ウイルスに感染した、またはウイルスに感染した疑いのある人の携帯電話を追跡する権利を獲得するとともに、さらなる厳しい措置も検討している。3回の国政選挙が行われた1年の間に、有権者またはクネセトのどちらの信頼も獲得できなかった行政機関の行動を監督する機能を有する議会が存在しないことは、イスラエルの民主主義の存続にとって有害だ。

この混乱の中で、ガンツの主な仕事は、ネタニヤフの反民主的行為を止め、彼の在任期間を終わらせ、4回目の選挙を避けることでなければならない。これらの目標は相互に関連しており、パンデミックの経過に大きく依存する2段階の戦略を必要とする。まず、物理的またはバーチャルにでもクネセトを召集し、ガンツが首相になることを提案したメンバーのブロックが新しい議長を選出し、機能しているクネセトが現在暫定政府として存在しているものを監督することを確保し、そのうえで、アラブリスト連合によって支持されている少数政権を形成することだ。

パンデミックを見極めるため、政府には国家統一が求められているにもかかわらず、それはネタニヤフの手の内でしか行われず、彼の在職期間を延長し、彼の裁判が見送られるという結果を生むかもしれない。ガンツが率いる少数派政府は、民主的なプロセスと法の支配を回復し、それは、ネタニヤフ時代の終焉を意味し、イスラエルの政治派閥のより広範なセグメントを包含するより大きな連立政府への道を開くだろう。これこそが、コロナウイルス危機に対処するのに効果的であり、イスラエル社会を治療していくのではないだろうか。

ヨッシ・メケルバーグは、リージェント大学ロンドンの国際関係学の教授であり、国際関係および社会科学プログラムの責任者。また、チャタムハウスのMENAプログラムの準フェロー。彼は国際的な書面・電子メディアへの定期的な寄稿者である。 Twitter:@YMekelberg

特に人気
オススメ

return to top