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【インタビュー】米抗議活動は米社会の強さの表われ サウジ国連大使アブドゥッラー・アル=ムアッリミー氏語る

国際連合サウジアラビア常駐代表のアブドゥッラー・アル=ムアッリミー氏。ニューヨーク。(Getty Images)
国際連合サウジアラビア常駐代表のアブドゥッラー・アル=ムアッリミー氏。ニューヨーク。(Getty Images)
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07 Jun 2020 09:06:41 GMT9
07 Jun 2020 09:06:41 GMT9

エフレム・コセイフィ

  • サウジ政府後援のイエメン支援会議は、国連・サウジ外交双方にとって成功、と大使語る

【ニューヨーク】人種差別に反対してニューヨークの街路で繰り広げられる抗議活動は、まさしく米国の国のあり方そのものが内包する人種差別を終わらせることを怒りに燃えた人々が求めるのと同時して、その鬨の声が上がった。

米国暮らしの長いサウジの国連常駐代表(大使)、アブドゥッラー・アル=ムアッリミー氏は、オフィスで米国の抗議活動の意味をつらつら思い重ねつつ、語った。

「米国で起きるさまざまなことは、米国社会の活気の表われだ」と同氏は言う。

「(抗議活動は)社会が強いからこそ表出する。危機に直面すれば人が寄り集まる力があるということだ。また、人種への偏見や差別に関しては、米国の制度に欠点もあるということでもある」

「が、米国人の大半が平和を愛する人たちであることは理解している。さまざまな民族的出自をもつ人たちの交流を愛する人たちだ。米国の友人たちが現在の受難を切り抜けてくれることを希望している」、ムアッリミー氏はそう語る。

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話題はすぐに、今週のニュースで各メディアのヘッドラインを飾った国の話に移った。イエメンだ。

「イエメン情勢は目を覆うばかりだ。人権状況しかり、その他すべてがしかりだ」とムアッリミー氏。

国連が幾度となく指摘してきた世界最悪の人間の手による人道危機。イエメンはそのせいでずっと不確かな状況のままだ。国際機関もイエメン国内での活動を下支えする資金調達を懇請しているところだ。国連が計画を立てても資金不足のため、その75%が活動の停止か縮小に追い込まれているという背景がある。

サウジアラビアはこうした人道支援の呼びかけに応えている。イエメン支援のイベントを国連と共催で開き、125か国以上の国連大使の参加を得た。

イベントでは13億5,000万ドルの支援が得られた。が、国際機関の活動継続に必要とされた25億ドルには届かなかった。

当初予定の半分ほどの支援とはなったが、ムアッリミー氏によればこのくらいの規模のイベントであればふつうのことらしい。

「国際支援のような場合、目標額の5割6割以上集まることはない。そもそも目標額自体が年間を通じて達成される性質のものだからだ」

「まだ1年の半分だ。先はまだある。なので、多くの意味で支援会議が5割6割の額を得られたことは満足できる結果だ」

「会議そのものは大きな成功だった。国連にとっても、サウジアラビア、そしてサウジ外交にとっても」

「こういった会議を、これだけの参加国を得て、現下の状況において、バーチャルであっても、開けたこと。しかも、どの参加国も経済に暗雲が立ちこめている中で、現実的な成果を調達できるにいたっている。これは大きな成功だと思っている」とムアッリミー氏は言う。

同会議をサウジと共催したマーク・ローコック人道問題担当国連事務次長は、拠出国がただちに支援金の拠出をおこなうよう迅速に動いた。その理由は、人道支援団体がイエメン国内の活動を再開するには「一刻の猶予もない」からだとする。「いま支援金が拠出されなければ、イエメンの無数の人々はまさに今日死ぬか明日死ぬかの瀬戸際に立たされているのだ」と、ローコック氏は言う。

ミネアポリス警察がジョージ・フロイド氏を拘束中に死に至らしめた。これを受け、人種間不平等に抗議する活動に集まったデモ参加者ら。ニューヨーク。(ロイター)

ムアッリミー氏は、サウジはこの先も2つの方向性で支援を続けるという。第一は人道支援の方向性だ。「会議に引き続き、集金作業、および国連およびわが国の複数チャネルを通じて資金を実際に拠出する作業がある。その上で、食料や医療品の支給など、現地イエメン人への支援計画を実行する」

第二の方向性は政治だ。「国連のイエメン担当特使はさまざまな障害のある中、苦難の道のりを歩みつづけている。私としては、イエメンの人々とイエメン支援に立つ当事者すべての決意があれば、苦難も乗り越えられると思っている」

サウジ外相のファイサル・ビン・ファルハーン王子は人道支援活動に立ちはだかる主たる障害について指摘している。「原因は、イランの支援するフーシ派による非人道的な行為や妨害だ。彼らは、人道支援活動の邪魔立てをし、救難物資を運搬中にこれを掠奪、イエメン全土に立ち入らせないようにしているのだ」

国際社会はこうした障害を乗り越えるため絶え間なく取り組んできている。ムアッリミー氏も指摘する。「困難が生じればそのたびごとに、国連および国際社会は、たとえば支援物資の供給をいったん保留としたり、一定期間凍結としたり、チャネルを変えるなりわが方に差し向けるなりして対応する。そうすると(フーシ派も)たいていは考えを改めたり物資を国内に入れることを許可したりする。彼らにしてみれば優位性を賭けたゲームをやろうということなのだが、これには忍耐と事態を長期的に見る目が必要だ」

「国際社会はフーシ派に圧力をかけつづける必要がある。これは倫理と政治の両面からの圧力だ。もちろん現地でも圧力はかける。それこそが、目下わが国がイエメン政府と共同しておこなっていることだ」

「フーシ派が妨害行為を止めることはあるまいので、わが国としてもフーシ派の行動を変えさせる、あるいは正す、このことを止めるつもりはない」

イエメンや米国の抗議活動とは別にムアッリミー氏の頭に去来しているのは、新型コロナウイルスの感染拡大だ。各国が協調してウイルス撃退に当たっていないことが残念でならないようだ。

「国際社会はもっと結束を、もっと協調を、もっと共同作業へのコミットメントを示すべきだった。そして、国連やその下部機関といった多国籍機関の役割を高める姿勢を示すべきだった」

同氏によれば、サウジは当初から「主導的役割を果たした。国王がG20首脳を世界初のバーチャルサミットへ招いたのが数か月前のことだ。サミットの成果として一定の措置・対策で合意を見、新型コロナ撃退に資することとなった」

「続いてサウジは幾多の措置を取ることを表明した。たとえば、新型コロナ撃破のため戦う各方面への5億ドルの供与もそうだ。うち1億5,000万ドルについては、施療に役立つワクチン・治療法・薬剤の開発支援に特に回される資金だ」

「そういうわけで、わが国はこの方面で主導的役割を果たしてきている。世界保健機関(WHO)への援助もおこなっているし、イエメンやパレスチナの同胞たちなど、特定の脆弱な国々に対しても特別支援を供与している。これも彼らがこのウイルスにかかわるさまざまな困難に打ち勝つことを思ってのことだ」

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