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言葉の力を自覚せよ

2019年9月28日、マンチェスターでの年次保守党大会の前日に、会場であるマンチェスター・セントラル・コンベンション・センターの外に掲げられた保守党のバナーと警官。(AFP)
2019年9月28日、マンチェスターでの年次保守党大会の前日に、会場であるマンチェスター・セントラル・コンベンション・センターの外に掲げられた保守党のバナーと警官。(AFP)
28 Sep 2019 07:09:38 GMT9

英国での出来事は、言葉がいかに分断を生むかを示している。ブレグジット(EUからの離脱)は国内の主要政党や、ひいては国全体を真っ二つに分断した。残留派と離脱派の間の断層は共同体、そして家族すらも分断している。その傷は深い―そして言葉には傷口に塩をすり込む力もあれば、回復を促す力もある。

英国の政治が対立を深める中、言葉もまた分断を煽っている。それが最も明らかとなったのが先週のこと。最高裁判所が認めなかった休会から議会が復帰したときだった。感情が燃え上がり、見守る者、というより耳を傾けるすべての者の前で言葉が爆発した。法務長官は議会を「不名誉」と表現し、総選挙を実施したい政府の意向をはねのけた下院議員を厳しく非難した。ボリス・ジョンソン首相が法律に従い、現在の10月31日という期限を延長するようにEUに要請し、合意なしのEU脱退の可能性を排除すると確約した場合のみ、野党は役に立つだろう。

ジョンソン首相が「降伏」や「裏切り」といった言葉を使ったことを下院議員が批判した際、むき出しの感情があらわとなった。議員らは、英国はEUにとどまるべきだと主張していた労働党のジョー・コックス議員が、2016年の国民投票のキャンペーン中、右翼の過激派に殺害された(「Britain first(イギリスファースト)」と叫びながら議員を撃ち、刺した)ことを指摘した。現在自らも殺害の脅迫を受けている、と議員らは語った。首相はそのような関連性は「ナンセンス」だとして取り合わなかったが、その後議場は騒然となった。

自国の政治論の新たな厳しさにさらされているのは英国だけではない。米国においても、大統領のツイートや野党の反駁によって政治が偏向している。左派と右派の過激論者のウェブサイトが憎悪や暴力をあおっている。右派の白人至上主義者や左派の急進グループが弱者や若者、弱い立場の人々を喰いものにしている。「先鋭化」が一番肝心な点であり、言葉―ヘイトスピーチ―がその道具となっている。

政治家や影響のある立場にいる人々は、世界の指導者だろうとその政敵だろうと、自身が使用する言葉が示す模範について自覚しなくてはならない。明白な民衆煽動家が常に最も有害とは限らない。政治や英語に関する随筆の中で、ジョージ・オーウェルは政治の言葉は多くが「嘘を本当に、殺人を尊敬すべきものに思わせ、ただの風に実体があるかのごとく見せることを意図」していると論じた。そのような言葉は意図的にぼかされ、無意味な内容となっている。なぜなら、真実を表すのではなく、隠すことを意図しているからだ、と彼は言う。したがって、私たちは常に話し手や書き手が自説で意図していることを問いかけるべきであり、退屈な言葉づかいの背後に隠れることを許してはならない。

ここ最近で、おそらくさらに重要なのは、政治家やその他の勢力が憎悪を煽る手段として言葉を使うのを許してはならないということだ。ひとたび何かが語られ、記されれば、それをなかったことにはできないのだ。

言葉は政治論が生じる空気を生み出し、状況をエスカレートさせ、もしくは鎮めることができる。

言い換えると、言葉は重要だ。私たちすべてが言葉の使い方に気を付けるべきだ。

  • コーネリア・マイヤーはビジネスコンサルタントにしてマクロ経済学者であり、エネルギーの専門家。ツイッター:@MeyerResources
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