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レバノンの崩壊が告げるのは、ヒズボラの支配か、あるいは終焉か?

深刻化する経済危機に反対しレバノンのベイルートで先週起こった抗議デモ。(AP)
深刻化する経済危機に反対しレバノンのベイルートで先週起こった抗議デモ。(AP)
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04 May 2020 11:05:58 GMT9
バリア・アラマディン
04 May 2020 11:05:58 GMT9

最近、ヒズボラとイランの当惑ぶりが増しているようにみえる。ここ最近見たことがないくらい、むきにもなっているようだ。制裁の強化、経済的困難、大衆の抗議デモ、パンデミックに関連した制約、政治的なつまずきといった数々の問題に直面しているからだ。中が空っぽになった木のように、内側から腐ってきているのだ。自分達を突然襲ったこうした困窮に対するヒズボラの喧嘩腰の反応に、自らの内面の弱さや焦りが表れている。

ハッサン・ナスララが追い詰められた状態にあることを最も顕著に表している兆候の1つとして、ヒズボラが支援する政府は、国際通貨基金(IMF)救済を不承不承ながら黙諾した。IMFプログラムには苦痛が伴うものの、これはレバノンが財政的な奈落の底から抜け出せる唯一の方法かもしれないのだ。

だが、自分達の宗派が支援するネットワークを保護し、腐敗によって得た自分達の資産が監視されるのを防ぐために、既得権益は激しく交渉しようとすることだろう。 そしてそれは市民のためではない。こうした歪んだとも言える優先事項は、最近の国会にも表れていた。市民を救済し腐敗した役人の責任を問わせる法律案が、議員たちにより優先事項から外されたのだ。

当局が警告することには、75%の市民が緊急の援助を必要とすることになるという。失業率が急上昇しているため、中産階級でさえ貧困線以下に落ち込んでしまうという。2019年には約22万人の国民が失業し、それ以来、事態は急激に悪化するばかりだ。トリポリのデモ参加者が先週「我々は空腹だ」と叫んだとき、治安部隊は「我々は君達より空腹だ」と叫び返した。

900億ドルの借金という巨大な重圧に耐えきれなくなったレバノンは、IMFに100億ドルを求めており、これに加え、これまで国際ドナーから別に約束されていた110億ドルが実際に使えるようになるのを望んでいる。だが、レバノンがイランの支配力から明らかに脱したという証拠を西側の機関や裕福な湾岸ドナーに示さない限りは、これらの資金が一文たりとも使えることはない。

破産し、主権を放棄して他国の隷属状態になるという、屈辱的なまでの小国に成り果ててしまったレバノンは、アラブ世界全体に対する侮辱でしかない。

バリア・アラムディン

観測筋には、ミシェル・アウン大統領とナスララはIMFルートへリップサービスをするなかで単に時間稼ぎをしているではないか、と懸念する向きもある。IMFの制約に縛られる意図はなく、レバノンが崩壊し、その結果として政治的多元主義も崩壊すれば自分達による絶対支配が可能になることを期待しているのだ、と。

レバノンの1%の最裕福層が何十億というドルを海外に無事に運び出したことから、市民のささやかな銀行預金(すでに価値の半分を失い、資金へのアクセスも制限されている)が無残にも「ヘアカット(資産価値の目減り)」されるのではないかという噂はやまない。

IMFの発表に先立ち、フランスは昔からの母親的な役割を繰り返すかのように、レバノンに厳しい助言を与えた。フランス当局者は、レバノンが改革を実行し、IMFのライフラインを掴み、アラブ諸国との関係を改善できなければ、レバノンは「誰からの助けも得られなくなる」と率直に力説した。

サード・ハリリやワリド・ジャンブラットといった「野党」の政治家は、それが「プラスの効果をもたらすのであれば」政府の救済計画を支援すると約束し、現実的な態度を示している。だがジャンブラットは、ヒズボラとアウンの「排除の政策」を、ライバルを排除しレバノンを「イランの一州」に転じるものだとして非難した。

レバノンの実質上の大統領であるゲブラン・バジルは、汚職役人は刑務所に送ると脅しをかけることで、草の根の支持者たちをなだめにかかっている。だがジャンブラットは、バジルの自由愛国運動(FPM)がエネルギー・水資源省に入閣していた際に途方もない規模の汚職や浪費(600億ドルと推定される)を行っていたことに対して、バジルが何の措置も取らないのはなぜかと質問している。

レバノンが悲劇の終焉を迎えるかどうかは、レバノンでヒズボラが優勢に立った場合、アラブ諸国と西側諸国が同国とは距離を置くという運命的な決定を下すかどうかにかかっている。このアプローチは、不安定な均衡をますます不安定にさせ、競走の場をヒズボラに譲ってしまうことになった。この苦い薬がヒズボラを脅かすと考えた外交官もいた。制裁の強化により実際に収益が大幅に減少し、系列下の金融機関が外部世界から切り離されたのは確かだ。だがライバルの派閥がほぼ無一文状態になり、スンナ派、ドゥルーズ派、FPMに属さないキリスト教派など、その他のコミュニティの影響力が失われたため、トップの地位に残ったのが親イラン派分子という事態になった。

ヒズボラに操られるハッサン・ディアブ首相は、就任後100日が過ぎた今でもまだ1か国のアラブ諸国も訪問してない。ディアブ首相がアラブ指導者のほとんどから受け入れられないことは明らかにしても、この事実がレバノンの極度の孤立ぶりを物語っている。この国がこんな事態に陥ったことは過去に一度としてない。どんなに不遇のときであってもだ。

ヒズボラを禁止する国が増えるなか、ドイツも先週ヒズボラをテロ組織として指定し、国内での活動を全面的に禁止したことを明らかにした。ドイツの諜報機関は、国内の1,000人以上の個人がヒズボラ「過激派」に所属していると警告し、世界の他の国々では、ホメイニストのイスラム法学機関の多くがコッズ部隊の活動やマネーロンダリング、組織犯罪、テロ行為の隠れ箕として機能しているとした。

ヒズボラ勢力が絶対的な優勢となってほんの数年間のうちに、「中東の宝石」と言われていたレバノンは、貧しく崩壊寸前の国へと転落した。だが、問題は悪化の道を辿るばかりだ。レバノンはソマリアではない。レバノン市民は比較的、繁栄に慣れている。レバノンは、この地域における商業、銀行、メディア、観光、娯楽のハブであり、「中東のスイス」としての輝かしい名声を博したこともある、教育水準の高い、文化的な国なのだ。広がり続けるレバノンのディアスポラは、世界中でその名を馳せてきた。そんなレバノンが、破産し、主権を放棄して他国の隷属状態になるという、屈辱的なまでの小国に成り果ててしまったのだ。こんなレバノンは、アラブ世界全体に対する侮辱でしかない。

2008年、イランの政治家の長老がレバノンを訪れ、大臣の1人に尋ねた。「サイイド(ハッサン)・ナスララをレバノンの統治者にするにはどうすればよいか」と。今日、こうしたアプローチがレバノンにどんな結果をもたらしたかは明らかだ。あるレバノン高官から直接伝えられたところでは、イラン政権はナスララに「あらゆる犠牲を払って権力を維持するとともに、より大きな権力を獲得する」よう指示したという。イラン政権は、レバノンで頓挫すればイラクやシリアといった国での自国の立場が弱まってしまうのではないかと恐れているのだ、と。「どこにも希望を見出すことができません」と高官は暗い表情で語った。「状況は悪化するばかりで、社会的には爆発状態で、人々は飢えることになってしまいます」

レバノンを素晴らしい国にしていたものを自分達の気まぐれですべて破壊してしまったナスララ、アウン、バジルは、自らの終焉の種を蒔いているのかもしれない。最近シーア派地域の抗議者がヒズボラの怒りをものともせず大多数でデモに参加したときには、驚きがあった。ヒズボラは今後数か月間、自分の子どもが飢餓に追いやられ苦しむのを経験し、失うものはもう何もないので自動小銃と向き合ってでも抗議する覚悟を持ったデモ参加者に対処していかなければならないことになる。

新型コロナウイルスによって、抗議者は一時的に街頭から消えたかもしれない。だがそれにもかかわらず、自分が生まれた街として誇りに思っているトリポリやその他の場所では、怒りに満ちた「飢餓の反乱」が起こっている。このことが告げるのは、レバノン全土で「怒りの葡萄」が熟しているということだ。根も枝も腐りきった癌やイランの覇権を根絶するというレバノン国民の決意は、その強さや広がりを一日一日と増しているのだ。

*バリア・アラムディンは受賞歴のあるジャーナリストで、中東および英国のニュースキャスターである。彼女は『メディア・サービス・シンジケート』の編集者であり、多くの国家元首のインタビューを行ってきた。

 

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