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国連がロヒンギャ「集団虐殺」を認めた今、非難だけでは済まない。

モンスーンの大雨の中、傘の下で雨を避けるロヒンギャ難民の少年。2019年9月12日、ウヒアのクトゥパロン難民キャンプにて。(AFP)
モンスーンの大雨の中、傘の下で雨を避けるロヒンギャ難民の少年。2019年9月12日、ウヒアのクトゥパロン難民キャンプにて。(AFP)
22 Oct 2019 01:10:58 GMT9

国連の最新の報告では、ミャンマー政府によるロヒンギャ族イスラム少数民族に対する残虐行為を非難するのに、ようやく「集団虐殺」という言葉が使われた。先週月曜日に公表された国連事実調査団の報告は手厳しいもので、同国軍のロヒンギャに対する非道な軍事行動は「集団虐殺の意図」に基づくものであり、過去1年に70万人以上の難民を隣国バングラデシュに追いやったと非難した。

調査団は、タトゥマドーの名で知られるミャンマー軍が「疑いなく国際法上の最大の罪にあたる」残虐行為を犯したと結論づけ、最高指揮官たちを名指しで、国際刑事裁判所(ICC)または同等の法廷で訴追されるべきと述べた。

予想されたことだが、ミャンマー政府はこの報告に強く反発し、非難に反論するとともに、国連人権理事会の結論をはねつけた。最も残念なのは、この犯罪行為に対して、同国の事実上のリーダーでありノーベル平和賞受賞者であるアウン・サン・スー・チーが不思議なほど沈黙を守り、それを止めさせる努力をしなかったことだ。実際のところ、公式発表の中で彼女は「ロヒンギャ」の名を出すことさえ拒否し、あろうことか軍を擁護した。国連の報告はスー・チーが「事態の進展を食い止めたり防止するために、事実上の最高権力者としての地位も精神的権威も使わなかった」と記している。これは彼女にも責任があることを明確に示している。

リードコラム:ロヒンギャ集団虐殺の報告で非難された者たちを訴追することが国連の信用のために不可欠であり、人命と国際法を軽視して行動する者たちに強烈なメッセージを送ることになるだろう。

今まで国連職員や世界のリーダーたちは、2017年8月に始まった恐ろしい行為を「民族浄化」あるいは「人類に対する犯罪」と呼んでいたが、それは「戦争犯罪」や「集団虐殺」とは違って国際法上明確に定義されたものではなく、訴追される対象ではなかった。報告が公表された翌日の先週火曜日には、国連事務総長のアントニオ・グテーレスが安全保障理事会のブリーフィングで、事実調査団の報告は真剣に検討すべきものだと述べ、スウェーデンとオランダが安全保障理事会にミャンマーをICCに送致すべきと訴えた。

今や報告で非難された者たちを訴追することが国連全体と国際社会の信用のために不可欠であり、処罰されずに人命と国際法を軽視している者たちに強烈なメッセージを送ることになるだろう。

ミャンマーはラカイン地域を人々が訪れたり見たり聞いたりできないよう隔離して、ロヒンギャの「浄化作戦」を遂行してきた。3人からなる事実調査団が2017年3月に結成されてもビザ発給を拒否し続け、イスラム協力機構(OIC)の訪問要請にも応えなかった。代わりに政府が一連の内部調査を委嘱し、軍を解散させあるいは分裂させたとされた。

興味深いことに、国連の報告が出た日には、昨年ロヒンギャ虐殺への兵士の関与を調査していて逮捕されたロイター社の2人のジャーナリストに対し、14年の懲役が宣告される予定だったのだが、判決は1週間延期された。このようなメディアへの圧力や脅迫、ラカイン地域からマスコミを完全に排除する姿勢には、その地で起きてきたこと、起きつつあること、虐殺の規模に関しての疑念と憂慮を禁じ得ない。衛星写真では昨年8月25日の攻撃後、ロヒンギャの村がまるごと消滅し、更地になっているのが見られる。

一方、ミャンマーはソーシャルメディアを利用して自分たちの見解を広めてきた。それはロヒンギャが同国に侵入してきた「非合法なベンガル人」であり、その地に定着した人々ではないというものだが、彼らは同国に何世代にもわたって住み続けてきたのである。彼らの市民権は1982年に剥奪され、以来彼らは無国籍状態におかれている。国連報告はフェイスブックを「憎しみを拡散させようとする者たちにとって都合の良い道具」と呼び、その結果同社はミャンマー軍のリーダーたちが操作する数十のアカウントを削除するに至った。

入国を拒否された国連チームは、870人を超える犠牲者や目撃者への聞き取りと、膨大なビデオと写真から、残虐行為の実態を把握した。ラカイン地域での直近の暴力行為では少なくとも1万人が死亡したと推定され、兵士たちが「大規模な集団レイプ」を行ったこともわかった。

OICの代表団も、数十万人が逃れてきた国境のバングラデシュ側にあるコックスバザールの難民キャンプを訪れた際に、犠牲者たちの話を聞いた。その代表団の一員として、父親が泣きじゃくりながら語った、兵士が子供を自分の腕からもぎとり、燃えさかる自分の家に放り込んだ話や、心に傷を負った若い女性から聞いた、兵士から手荒な集団レイプを受け、森に放置され死にそうになった話や、別の女性が語った、夫と息子を目の前で射殺された話を聞くのはとても辛かった。

報告の公表はこの直近のロヒンギャの悪夢からちょうど1年になるが、彼らは繰り返される暴力行為、基本的人権の蹂躙と否定に苦しみ、その出口はまだ見えていない。

もうひとつ気がかりなのは、イスラム少数派グループへの同様の攻撃が近隣のスリランカ、中国、さらにはインドにまで見られることで、暴力や虐待、移動や礼拝の制限、市民権の剥奪などが起きていると報告されている。

ミャンマーでの残虐行為の加害者を拘束し、これ以上残虐行為や暴力がなくなるよう約束し保証すべき時だ。他方で、バングラデシュは国内の百万人近くの難民を守るために、引き続き国際社会の支援を必要としている。両国の同意によりロヒンギャが故郷の家や村に帰るため、そして国際的な監視のもと帰国した難民の安全と市民権の回復が保証されるためにも、国際機関の支援が必要だ。

 

マハ・アキールはサウジの記者で、ジェッダに駐在している。ツイッター:@MahaAkeel1

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