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クラウド技術はいかにサウジアラビアのDXを加速させるか

クラウドコンピューティングの導入は、デジタル変革を加速させる方法として、サウジアラビアのICTセクターで最も議論されているトピックの1つである。(ゲッティイメージズ)
クラウドコンピューティングの導入は、デジタル変革を加速させる方法として、サウジアラビアのICTセクターで最も議論されているトピックの1つである。(ゲッティイメージズ)
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31 Aug 2022 05:08:17 GMT9
31 Aug 2022 05:08:17 GMT9
  • 多くの組織が業務効率化の強力な推進力としてクラウドコンピューティングに注目している
  • クラウドサービスの急速な普及は、サウジアラビアのデジタル経済発展の重要な原動力となっている

ラワン・ラドワン

ジェッダ:データ量が指数関数的に増加し、2年ごとに倍になっていく中、情報処理・分析ツールやストレージ技術は、デジタルトランスフォーメーションのための明確な戦略を持つすべての国にとって重要な要件となってきている。

サウジアラビアも例外ではなく、機敏な情報技術コミュニティがクラウドベースのテクノロジーをいち早く採用したおかげで、同国のデジタル変革を支援・加速することができている。

近年、世界中の多くの政府や組織がクラウドコンピューティングに着目している。業務効率を向上させる強力な推進力として、特にセキュリティと俊敏性のバランスを取るためだ。

調査会社MarketsandMarketsの昨年10月の調査では、クラウドサービスの導入率は2021年から2026年の間に16.3%伸びると推定されている。同様に、技術調査・コンサルティング会社のガートナーは、2025年には新しいデジタルワークロードの95パーセント以上がクラウド・ネイティブ・プラットフォーム上に展開されると推定している(2021年時点では30パーセント)。

サウジアラビアは、最先端の情報通信技術への投資と活用により、市民、政府、経済にとってメリットのある枠組みである、電子政府という新時代に向けた準備を整えてきた。

専門家によれば、サウジアラビア政府はデジタル技術の導入に積極的に取り組み、経済の多様化、イノベーションの促進、活発なデジタル経済の構築を推進しているという。

電子政府への移行は、ICTセクターが急速な変化を目の当たりにする中で行われている。2019年、サウジアラビアの通信情報技術省は、クラウド主体の変革の一環として、公共および民間企業を指導する「クラウドファーストポリシー」を発表した。

通信情報技術委員会は、サウジアラビアにおけるクラウドコンピューティングサービスを強化し、規定の透明性を確保することを目的とした「クラウドコンピューティング規制フレームワーク」を採択した。

クラウド技術が柔軟性、拡張性、最新技術へのアクセスを提供することで、チームはより速くイノベーションを起こし、より機敏に動けるようになる。(AFP)

通信情報技術委員会は、繁栄するデジタル経済とサウジアラビアを繋げ、イノベーション、包括性、持続可能性、成長、パートナーシップを高めるために、国際電気通信連合いわく最も進んだカテゴリーである、5Gデジタル規制機関となるための道筋を示した。

2年前、同委員会はクラウドコンピューティングの枠組みを更新し、サービスプロバイダーとユーザー、すなわち個人顧客、政府機関、企業の個別の責任について概要を説明した。現在、クラウドサービスは4つのモデルで展開されている。プライベート、パブリック、コミュニティ、ハイブリッドの4つだ。

このフレームワークでは、「サウジアラビア政府のデータ」と 「政府以外のデータ」を明確に区別している。この2つのカテゴリーの中で、クラウドソリューションプロバイダーのクラウドシステムにアップロードされた利用者のデータは、その後、当該データの機密性、完全性、可用性を保持するために必要なレベルに応じて、さらに分類される可能性がある。

サウジアラビア政府のデータは、「最高機密」、「機密」、「極秘」、「公開」に分類されることになるだろう。政府以外のデータは、「サウジ政府機関から受け取ったデータ」と「その他のデータ」のいずれかに分類される。

2020年10月、信情報技術省は、政府当局が従来のITインフラからクラウドプラットフォームに移行するペースを加速させ、サウジアラビアにおけるクラウドサービスの導入を促進するため、「クラウドファーストポリシー」を発表した。

同省によると、この政策は一部の例外を除き、すべての政府当局を対象としているという。政府当局は新たなIT投資を行う際に、さまざまな技術、セキュリティ、商業上の要件に対応する明確に定義された戦略に沿って、クラウドコンピューティングの選択肢を検討することになる。

委員会のウェブサイトによると、現在までにサウジアラビアには、クラスAからCまで21のサービスプロバイダーが存在するという。さらに9社のクラウドプロバイダーが、資格取得の手続きを行っている。

CNTXTは、サウジアラビアにおけるクラウドコンピューティングの導入を先導するために設立された会社で、デジタルの未来に自身のポジションを確立することを目指す政府および民間部門の顧客に対して、Google Cloudのソリューションとサービス、デジタル変換ソフトウェア、コンサルティングを提供している。

デジタルの未来に自身のポジションを確立したい企業は、クラウドコンピューティングの導入を勧められている。(AFP)

CNTXTは、サウジアラムコとノルウェーのソフトウェア企業コグナイトによる合弁会社だ。

同社CEOのアブドゥラ・ジャルワン氏はアラブニュースに対し、「(顧客の)多くは、クラウドの導入は単なる新技術の採用に留まらないことに気付いています」と語った。「クラウドの導入は、すべてを網羅する組織的な変革なのです。会社の新しいテクノロジー戦略を確立し、新しい働き方を見出し、クラウド技術を最大限に活用するためのチェンジマネジメントのプロセスを実施するということなのです」

今回の世界的なパンデミックは、国家システムの脆弱性を浮き彫りにしただけでなく、基盤となる組織インフラが不可欠であり、さらにサウジアラビア経済セクターのデジタルレジリエンスを強化するための取り組みが必要であることも明らかにした。

専門家は、サウジアラビア政府のクラウドファーストの政策目標は、グローバルなクラウドサービスプロバイダーへのアクセスを容易にし、その結果、投資の誘致、明確なデータ規定の策定、イノベーションの実現、アジリティの強化、成長のスケールアップをもたらすと確信している。

「クラウド技術の導入には、他の技術導入と同様、文化的な変化も必要です」とジャルワン氏は言う。

「新しいクラウドベースのツールを最大限に活用する方法を従業員が理解できるようにするために、企業は従業員のトレーニングやスキルアップに投資する必要があるのです。また、新しいツールを使い始めるように説得するのは、時に困難な場合もあります。そこで、この変化を受け入れ、クラウドが企業のイノベーションを実現するための基盤であると位置づけ、トップがそれを伝える必要があるのです。

現在、クラウドコンピューティングの導入は、サウジアラビアのICTセクターで最も議論されているテーマの1つであり、公共部門と民間部門の両者がデジタルトランスフォーメーションの加速に取り組んでいる。

クラウドコンピューティングは比較的成熟した確固たる技術であり、コスト削減、素早い拡張性、リソースの共有など、いくつかの実証済みのメリットをユーザーに提供している。

セキュリティは、クラウド移行における最も重要な要素ではないにしても、最優先事項と言える。世界的なパンデミックで、デジタル環境におけるサイバーセキュリティの脅威はほぼ指数関数的に増加した。多くの企業は、オンプレミスのITシステムでの運用に限界を感じ、クラウドへの移行を選択した。

サイバーセキュリティの脅威は今日でも重要な問題だが、クラウドセキュリティに関する懸念も表面化してきている。このような脅威には、個人のスマートホームセキュリティの安全な設定方法に関するユーザーの認識不足、リモートアクセス企業システムの安全な設定と検査の欠如、ソーシャルエンジニアリングに対するエンドユーザーの教育不足(ソーシャルメディアプラットフォームやインスタントメッセージなどを介して送られる不正なメールやリンクによってユーザー情報が盗まれるケースが増えている)が含まれる。

2018年、ジェッダで開催されたハッカソンに参加する、サウジアラビア人女性を含む参加者たち。(AFP/File Photo)

このような脅威があるにもかかわらず、モードーインテリジェンスが行った「2018年から2026年のクラウドサービスへの移行に関する研究」では、2021年の市場規模が1,191億3,000万ドルであるのに対し、2026年には4,483億2,400万ドルになると算出されている。

ジャルワン氏によると、企業がクラウドに移行する前には通常、「技術スタックの評価、オンプレミスのハードウェアとソフトウェア、セキュリティ評価、ギャップの特定、コスト」など、いくつかのポイントが考慮されるという。

評価が終わると、企業は移行のためのサービスの優先順位を決める。

ジャルワン氏はアラブニュースに対し、「デジタルの未来において自社のポジションを確保したい企業は、クラウドを採用する必要があります」と話した。「クラウドが柔軟性、拡張性、最新技術へのアクセスを提供することで、チームがより速くイノベーションを起こし、より機敏に動けるようになるのです」

「企業は、コアビジネスではないインフラの維持から離れ、実際の開発やイノベーションのためにリソースを解放することができるのです」

今後の展望として、ジャルワン氏は次のように述べている。「問題は、『もし』ではなく、『いつ』『どのように』企業がクラウドを導入するかということです」

 

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