Since 1975
日本語で読むアラビアのニュース
  • facebook
  • twitter

レバノンの混乱は誰に責任があるのか

07 Aug 2020 03:08:15 GMT9

ベイルートを壊滅的にした爆発は、世界に見苦しいが、本当のレバノンの顔を明らかにした。つまり、この衝撃波で粉々になった数千枚の窓のように、機能している国家という幻想が粉々に吹っ飛ばされたのだ。大抵の場合、大丈夫だというふりをしてこなければならなかった国家は、制度的な失敗にずっと苦しんできた。

痛ましい事実だが、こうした犯罪的過失の行動に責任のある人々が、責任を問われることを誰も期待していない。レバノンではずっと前から、このような説明責任は途絶えていた。

それゆえ、多くのレバノン人がフランスに再植民地化して欲しいと言うのは、驚くに当たらない。つまり、フランスの自由、平等、友愛の原則は、現在地球上のあらゆる正直なレバノン人にとって、遠い夢に過ぎないのだ。

結局、ヒズボラの武装圧力や全国の略奪を、誰が取り除きたくないと思っているだろうか。レバノンは、24時間利用可能な電力等の基本的な公共サービスを、裕福な人々しか受ける余裕がない豊かな男性のクラブのままなのだろうか。腐敗した「自分の事しか考えていない」政治エリートが私腹を肥やしながら、いつまでこの国を運営するつもりなのか。

8月4日の大事故の前でさえ、レバノンは新型コロナウイルスのパンデミック、汚職、武装集団からの圧力、大規模な街頭デモ、シリアやヒズボラを標的が組み合わさって崩壊寸前だった。

ジョンホプキンス大学の応用経済学の教授、スティーブ・ハンケ氏によれば、レバノンの月間インフレ率は、30日間で少なくとも50パーセントとなり、この地域でハイパーインフレに苦しむ最初の国となることに、レバノンは有り難くない名誉を与えたられているという。

明白な疑問は、誰に責任があるのか、ということだ。

ハッサン・ディアブ首相とその内閣は、国民とメディアの両方から不当に非難されている。これは彼らが良い仕事をしていると言っているのでもなければ、ヒズボラの存在によって彼らの行動が制約を受けているので、彼らは責任を引き受ける義務から免れるべきだと言っているのでもない。

かつては「中東のスイス」だった国で、この混乱の責任があるグループが1つあるとすれば、それは、イランに支援されているヒズボラだ。非常に長い間、こうした死のエージェントたちはレバノンのチャンス、夢、大志を奪い取ってきた。ヒズボラは一方的にレバノンを戦争に引き込んだり、他のアラブ諸国の問題に巻き込んだりすることに決めている。ヒズボラは(2000年にイスラエルが撤退して以来、どんな場合でも不必要な)武器を明け渡し、自らの行動を平和的な政治活動だけに限定する機会に、たくさん恵まれてきた。そうする代わりに、ヒズボラは2005年にラフィーク・ハリーリー元首相を暗殺し、2006年には不必要な紛争で、2008年にはベイルート奪取で非難されている。

ヒズボラはバッシャール・アル=アサド大統領が自らの国民を虐殺したとき、同大統領を支持し、フーシ派がサウジ市民に攻撃したとき、同派を支持した。そして今や、レバノンが機能する国家として生き残ろうとしている希望も全て、ゆっくりと葬り去ろうとしている。

多くのアラブと欧米諸国は、今週支援を申し出たが、実際のところ、ヒズボラが采配を振るっている間、支援は限られるだろう。どの国もイランのエージェントと取引したくないだろうし、腐敗した政治エリートの富に加担したくない。ある抗議者が6日、政治家に金を与えないよう、エマニュエル・マクロン大統領に促したとき、フランスのマクロン大統領は、レバノンの人々を助けるためだけに、自分はここにいると答えたのは気が利いていていた。

それでは、何ができるのか。現実的に、レバノンの善良な人々自身によって、できることは多分多くないだろう。ヒズボラの有害な支配を止めさせたり、無能で腐敗した数十年間の統治を終わらせたりしなくても、長年抗議することはできるだろう。

この癌の根源となっているヒズボラは、孤立させられ、標的にされ、根絶されなければならない。ハリーリー元首相の暗殺の目前に迫った法廷での判決は、このテロリストグループの根絶を条件にして、国際的なレバノンの「マーシャル・プラン」に従って、このプロセスが始まるかもしれない。

しかし、前向きな調子で終わりにしよう。この大事故が苦境に立っているレバノン国民から、憎むべき指導者層を排除されなければ、何も起きないだろう。そして、フランス、サウジアラビア、UAEなどの国々から既に押し寄せているたくさんの支援は、レバノンの友人たちが、今もレバノンを見捨てていないことを証明している。

レバノンの人々も自分を見捨てるべきじゃない。

  • ファイサル・J・アッバスはアラブニュースの編集長。Twitter: @FaisalJAbbas

Twitter: @FaisalJAbbas

特に人気
オススメ

return to top