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レバノン特別法廷はレバノン国民を失望させた

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19 Aug 2020 08:08:47 GMT9

2005年のバレンタインの日、レバノンのラフィク・ハリリ首相を乗せた車列がベイルートの臨海地を走っていた際に爆破された。これにより22名が死亡、226名が負傷した。

ハリリ氏の暗殺はレバノン政治における破壊的な力となり、1990年タイフ合意以降の路線を一変させた。1988年にレバノン大統領を自称して1990年にフランスに亡命したミシェル・アウン将軍が、レバノンに戻った。獄中にいたレバノン軍団の指導者サミール・ジェアジェア氏は釈放された。

レバノン国民はハリリ氏の殺害に関与したとしてシリア政府を名指しした。この暗殺が引き金となり、レバノンの街頭では大規模ながらも平和的な抗議運動が起こり、バシャール・アサド軍の撤退を要求する声が上がった。国民の抗議活動と国際圧力とが相まってアサド氏はレバノンからの撤退を余儀なくされ、30年に及ぶ残虐なアサド体制による強制的な委任統治はついに終了した。

しかしハリリ氏の暗殺後、ウィサム・アル・ハサン准将のような暗殺関連情報を持つ可能性のある人々や、国際法廷の補佐的任務を任された人々、そしてウィサム・エイド警部など、一連の暗殺事件が続いた。これらの暗殺はさらに、ジブラン・トゥエイニ氏やサミル・カッシル氏といったジャーナリストたちの言論の自由を抑制する結果にもつながった。

内戦の名残でもあった意見の異なる党派間の調整を図っていたのがハリリ氏だったが、彼の暗殺でそのバランスは失われた。それ以降、レバノンでは彼の死後に形成された2つの陣営間の緊張が見られるようになった。親イラン派の3月8日同盟はヒズボラとその支持者が中心となり、ハリリ氏の息子とレバノン軍団が属する3月14日同盟はジェアジェア氏が率い、この2陣営が主要な柱となった。

ハリリ氏は生前、アサド政権と緊張関係にあったことが知られている。彼がワリド・アル・ムアレム氏と口論している音声記録が最近リークされた。『アイヤシュ・エト・アル』という名のこの裁判では、ヒズボラ関連の4名が告発された。5番目の人物はヒズボラの高官であったが、シリアで殺害された。

ヒズボラは、たとえ裁判で告発されてもいかなるメンバーをも差し出すつもりはないと宣言し、この裁判は自分たちの組織を追い詰めるための政治的手段だと言った。

2005年の法廷にはドイツ人検察官のデトレフ・メリス氏がいたが、彼は暗殺加担者としてヒズボラとアサド政権に繋がりをもつ個人名をあげた。メリス氏はその後、自身の殺害計画が明るみに出た後に法廷を離れた。長い裁判は15年以上続き、これがまさに人々の話題の中心であった時期もあれば、誰も話題にしない時期もあった。それはまさにシリア政府との関係性によって変化した。判決は6時間以上かけて行われ、関与した判事たちは捜査説明の長い記録を読み上げた。レバノン大統領は国民に対し、この判決を受け入れるよう促した。

しかし、4人の被告が不在のまま行われたこの裁判に大きな成果があったとは言えない。4人は、裁判所が彼らの弁護人として指名した弁護士とのコミュニケーションをとることすらしなかった。彼らは潜伏しており、今後もおそらく誰もその姿を見たりその声を聴いたりすることはないであろう人物なのだ。彼らが起訴されるかどうかという結果をレバノン国民は待ち望んでいたのではない。物理的・実施計画的に誰にその犯罪の責任があるのかという問題ではなく、その背後にあった政治的意思こそが問題であったのだ。

多くの人々にとって結果は期待外れだった。ヒズボラにとってこの裁定は、高まる圧力のなかで一息つく猶予を与える結果となった。

ハリリ氏の暗殺、そしてレバノン主権の抹殺の責任を負うべきは、政治的意思なのだ。その政治的意思こそがレバノンにおける30年間の不正義に責任を負うべきものであり、レバノン国民が待っていたのはそれへの告発であった。

約10億ドルを費やした法廷とその判決は、大変動となる効果を及ぼすはずであった。レバノン人たちは、ハリリ氏暗殺がレバノン政変へのきっかになったのと同様な効果を期待していたのだ。

ところが判決はたった1名、アイヤシュ被告のみを有罪とし、他の被告は無罪となった。判決は、アサド政権もヒズボラも有罪とはしなかった。

多くの人々にとって、この結果は期待外れだった。ヒズボラにとって、この裁定は高まる圧力のなかで一息つく猶予を与える結果となった。大きな問題となるのはヒズボラがどのように反応するかだ。何らかの合意のようなものについて交渉するのだろうか。それともこれは勝利でありその対立姿勢をさらに進めればよいのだと捉えてつけ上がるのだろうか。

  • ダニア・コレイラト・ハティブ博士は、ロビー活動に焦点を当てて米・中東関係を研究する専門家だ。エクセター大学で政治学博士号を取得し、ベイルート・アメリカン大学イサム・ファレス公共政策・国際関係研究所に所属して研究員をしている。

 

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