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シリアの安全保障問題に関して締め出される欧州諸国

2019年10月27日、シリア北部の町アムダ近郊のサンジャク・サドゥーン国境地帯から撤退するシリア民主軍(SDF)の戦闘員が軍用車両に集結。(AFP)
2019年10月27日、シリア北部の町アムダ近郊のサンジャク・サドゥーン国境地帯から撤退するシリア民主軍(SDF)の戦闘員が軍用車両に集結。(AFP)
27 Oct 2019 10:10:31 GMT9

米国がシリア北部から部隊を撤退させ、その後トルコがクルド領土に侵攻すると、世界中から怒りが沸き起こった。欧米のメディアは、アメリカがかつて同盟関係を結んでいたクルド人を裏切ったことを直ちに批判した。西側諸国は、クルド人が警護にあたっていた刑務所からダーイシュの戦闘員が逃走するところを落胆の眼差しで見つめるほかなかった。クルド人の新たな使命は自身の命と領土を守ることだ。逃走した戦闘員の多くはヨーロッパ諸国の国民だが、各国の政府は彼らの受け入れを望まず、代わりにシリアやイラクで裁判に立つことを望んでいた。

さらにひどいことに、問題の解決策を考え出したのはトルコのレジェップ・タイイップ・エルドアンとロシアのウラジーミル・プーチンだった。トルコは指定地域から先へはシリア領土内に入らず、ロシアはトルコ軍と国境からバッシャール・アサドの軍隊を遠ざけるために非常線を張る。

これは確かに異常な状況といえる。トルコは北大西洋条約機構(NATO)の最東端の加盟国であり、NATOの事実上のリーダーである米国が部隊を撤退させたために、今やNATOの敵国ロシアが同盟国の国境の警備活動にあたっている。明確にしておくが、投入された部隊の数で測定すればNATOの最大メンバーとなる米国が撤退し、2番目に大きいトルコはその国境をロシアに警備してもらっているのだ。

ヨーロッパは事態に不安を感じている。第一に、クルド人に対する同情的な感情が多い。第二に、ドイツやオランダなどのヨーロッパ諸国はトルコやクルド人のマイノリティーを多く擁しており、彼らは時として路上で悪感情を展開することがある。第三に、エルドアンがトルコの国境を開き、何百万人ものシリア難民をヨーロッパに向けて解放すると言ったとき、EUは耳を傾けた。それこそが、2016年にトルコとの協議の際にEUが避けようとしたことであり、それによりトルコは、現在擁する360万人のシリア難民受け入れによる経済的な落ち込みに対処するための60億ユーロ(66億ドル)の支援金の約束と引き換えに国境を封鎖した。難民の数におおよそ見合わない額である。

ヨーロッパとトルコの関係は複雑で、しばしば緊張をはらんでいる。一方欧州各国の政府は、エルドアンの権威主義への動きと国内における報道の自由の欠如を非難する。一方で、彼らはヨーロッパが十分対応できない難民問題に関して、トルコの協力と善意を必要としている。さらには、もちろん、数十年前に両親が戦後の経済成長を推進する労働力としてヨーロッパにやって来た、二重国籍のトルコ系ヨーロッパ人もいる。その多くはクルド人だ。

ヨーロッパは、シリア北東部の最近の状況におけるトルコの役割を直ちに批判したが、解決策はなかった」

だからヨーロッパは、最近のシリア北東部の状況におけるトルコの役割を直ちに批判したものの、解決策はなかった。特にドイツは多くの火種を抱えている。NATOの古株かつEU加盟国であり、多くのトルコ系二重国籍者(一部はクルド系)が住んでおり、2016年以降100万人の難民を受け入れてきたほど寛大な唯一のEU国である。

したがって、ドイツの政治家が次に何をすべきか熟慮していることは、さほど驚きではない。ドイツ連邦議会の外交問題に関する委員会の議長、ノルベルト・ロートゲンは、E3(ドイツ、フランス、英国)は中東、中でもイランとシリアに関して、外交政策の利益についてより密接に連携すべきであると長い間主張してきた。彼の志は賞賛されるべきだが、ブレグジットの厳しい現実が水を差している状況と言えよう。

AKKの名でも知られるドイツのアネグレット・クランプ=カレンバウアー国防相は、欧州のNATO同盟国はトルコ・シリア国境のパトロールに当たるべきだと提案した。それにより彼女は激しく非難された。一つには、彼女は彼女の考えをハイコ・マース外務大臣と十分に共有しておらず、SMSで決定を彼に知らせただけであった。NATOもまた熱心ではなかった。米国は彼女のイニシアチブを歓迎したが、国防長官は部隊の投入は約束しないと述べた(米国はこの地域から撤退したばかりであることに注意)。NATO事務総長のイェンス・ストルテンベルクは、この問題に対する解決策は国連から出されるべきであると明言した。これは現在国境をパトロールしているのがアメリカの最大の敵国、ロシアであるという事実に照らせば(おそらくロシアは国連安保理決議を拒否するであろう)、また彼がこの泥沼に引きずり込まれることも、これ以上状況を悪化させることもおそらく望んでいないことを鑑みれば理解できることである。

AKKとロートゲンの考えについてあなたが何と言おうと、少なくとも彼らはヨーロッパが中東の近隣地域であり、独自の政策を開発する必要があるという事実に従おうとしていることは確かだ。

コーネリア・マイヤーは、ビジネスコンサルタント、マクロエコノミスト、エネルギー専門家である。ツイッター:@MeyerResources

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