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イスラエルとUAEとの協定は和平のきっかけになるか?

イスラエルとの国交樹立に伴い、UAE国旗の色でライトアップされたテルアビブ市庁舎(2020年8月13日 / AP写真)
イスラエルとの国交樹立に伴い、UAE国旗の色でライトアップされたテルアビブ市庁舎(2020年8月13日 / AP写真)
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26 Aug 2020 08:08:53 GMT9
26 Aug 2020 08:08:53 GMT9

イスラエルとアラブ首長国連邦(UAE)の国交正常化が予想外に発表されたことは、少なくとも時期的には祝うべきところが多い。

イスラエルが中東の一部であることを拒絶することは、もはや現実的な提案ではなく、現在ではこのような見解を持っているのは中東のごく少数の人々である。イスラエルと最も長く国境を接しているエジプトとヨルダンは、それぞれ1979年と1994年に平和協定を結んでいる。

さらに、安全保障やテロ対策、貿易、技術に至るまで、様々な問題についてイスラエルが湾岸諸国と非公式に関与する機会も、ここ数年で大幅に増加している。このことは、この地域で最も秘密にされていることの一つであり、それは主にこれらの協定が有機的に発展してきたからである。現在の地域の情勢において、関係の緊密化は、イスラエルと湾岸諸国が地域の安定や国民の繁栄など多くの共通の目的を持ち、イランや過激派を中心とした戦略的脅威にも等しく直面しているという事実を認識させるものである。

国交正常化協定をめぐっては、それを平和協定と誇張する向きもあるが、イスラエルとUAEはこれまで一度も戦争状態に陥ったことはない。UAEが1971年に独立した時、イスラエルが独立国家になってから20年以上が経過していたため、国境を共有せず、1500マイル以上離れている2国間で敵対行為が行われたことは一度もなかった。

一方で、イスラエルと戦争をしているアラブ諸国との連帯感や、イスラエルの圧政下で生活している、あるいは難民にならざるを得ないパレスチナ人の窮状に同情したUAEは、公式な承認や伝統的な外交関係を一切持たないことが決定づけられた。

しかし最近では、地域の状況が変容を遂げた。新しい世代が出現し、エジプト、ヨルダンがイスラエルとの和平合意に調印しただけでなく、長引いてはいるし、順調ではないが、パレスチナ人もイスラエルとの和平プロセスに乗り出しており、安全保障面で緊密に協力していることから、湾岸協力会議(GCC)諸国とイスラエルとの緊密な関係を避ける根拠が徐々に薄れてきているのである。

しかし、この進展はパレスチナ問題の疎外につながったり、あるいは、より悪いことに、それが完全に無視されたりすることになりかねないという現実的な危険がある。あるいは、イスラエルとUAEの関係の変化は、他の湾岸諸国が追随する可能性があり、パレスチナ人と特にイスラエルがそれを受け入れる準備ができていれば、新たな機会が生まれることが期待できるかもしれない。

パレスチナ人が自分たちの苦境に公正で正当な解決策がもたらされる前に、アラブの国がイスラエルとの関係を正常化することに怒りを覚えるのはもっともだが、UAEとイスラエルの合意は、パレスチナ人が自分たち自身の戦略を見直し、適応させる時が来たという警鐘として機能する可能性があり、またそうあるべきである。

アラブ世界では、パレスチナ人の窮状に対する多くの共感と同情が残っているが、それはもはやGCC諸国とイスラエルとの関係において最優先される要素ではない。GCCとイスラエルの関係を正常化し、発展させるきっかけとなっているのは、パレスチナ当局とイスラエル当局の協力だけではなく、例えばイランやその地域の同盟国からの脅威やその他の安全保障上の課題の抑制、貿易、観光、科学的機会の開発などに関する本質的な協力が、和平合意の遅れによって妨げられてはならないという懸念が高まっていることも原因である。

パレスチナの指導者もまた、UAEの大胆な動きを、彼らが行動を共にし、共通の目的を持って様々な派閥を団結させるべきだという兆候として見る必要がある。ガザとヨルダン川西岸地区の関係の悪化は、ファタとハマスの間の猛烈な敵意によって証明されているが、これはアラブ世界、特に湾岸諸国にとっては憤りの種であり、その結果、イスラエルとパレスチナの関係はさらに優先順位が下がることになった。

しかし、UAEのイスラエルとの国交正常化は、サウジアラビアのアブドゥッラー・ビン・アブドゥル・アジズ皇太子(当時)が 2002年に発表し、アラブ連盟がベイルート宣言で採択した和平構想から逸脱している。同宣言では、「東エルサレムを首都とする独立したパレスチナ国家をイスラエルが受け入れること」が、「イスラエルとの包括的な和平の文脈の中での正常な関係の確立」につながるとしている。

残る問題は、2つの異なるパラダイムが並行して存在しているのか、あるいは戦略的な優先順位の見直しにおいて、UAEが追従する他国の先頭に立っているのかという点だ。

言い換えれば、他の国はベイルート宣言の目的に固執し、追従しないのだろうか?それとも、パレスチナの大義よりもイスラエルとの関係改善を優先し、関係を正常化することで、イスラエルが真の和平プロセスに入るように説得するためのより大きな影響力が得られるという打算をしているのだろうか?

イスラエルがUAEとの合意の一環として、占領下の西岸の広大な土地を併合するという無謀な計画を放棄したという事実は、後者の打算に即効性がある証拠であるという見方もできるかもしれない。

この見方は、イスラエルのベンジャミン・ネタニヤフ首相がパレスチナ人とそれとの和平の可能性に害を与えるだけでなく、自身を傷つけることを防ぐことの更なる事例を表していることから、問題のある主張である。併合の余地が無くなったことが歓迎される反面、イスラエルが計画していた国際法への違反をしないことに同意しただけで利益を得られるため、なんとも後味の悪い話である。

パレスチナの指導者もまた、UAEによる大胆な動きを、足並みを揃えるべきであるというシグナルとして見る必要がある。

ヨシ・メケルバーグ

また、現在のイスラエル政府が、中東の他国との関係改善は、ヨルダン川西岸の占領とガザの封鎖を終わらせることに依存していないという逆の結論に達する可能性があるという目に見えるリスクもある。他国が正常な二国間関係を確立していく中で、イスラエル当局は、平和への期待をさらに脅かすような行為を損害を受けずに行うことができると考えているのだろうか?

そうなった場合、UAEとの国交正常化協定に象徴されるようなイスラエルの地政学的立場の変化の中で、自分たちの政府がタカ派的に何から目を背けているのかをイスラエルの有権者が理解し、次の機会に地域の真の平和と統合を求める政府に投票するかどうかにかかってくるのではないだろうか。

  • ヨシ・メケルバーグは、リージェンツ・ユニバーシティ・ロンドン国際関係学教授で、国際関係学・社会科学プログラムの責任者を務めている。彼はチャタムハウスのMENAプログラムのアソシエイトフェローでもある。 Twitter@YMekelberg
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