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止まらぬイランの対外テロ活動

年次軍事パレードで行進するイラン革命防衛隊(IRGC)隊員。(AFP)
年次軍事パレードで行進するイラン革命防衛隊(IRGC)隊員。(AFP)
28 Oct 2019 10:10:11 GMT9

トランプ政権による「最大限の圧力政策」にも関わらず、イラン政権は敵対的な政策と破壊的行為の手を緩める兆しを見せていない。

諸外国で「テロ細胞」を育て上げることで、影響力を行使すると同時に、反体制派の人物や団体を封じ込める行為は、イラン政権の外交政策の一端を担っている。アルバニアのアルディ・ヴェリウ警察庁長官は先週、イランの「コッズ部隊」と繋がりを持ち細胞組織として活動する外国の作戦部隊が、同国の治安当局により摘発されたことを明らかにした。ヴェリウ長官はこう述べている。「犯罪組織の内通者からの情報を頼りに、アルバニア当局はこれらの人物を特定し、2018年3月に計画された攻撃と、組織犯罪構成員による将来の攻撃立案を未然に阻止することができました... これらはイランによる代理攻撃です」

イスラム革命防衛隊(IRGC)の精鋭部隊であるコッズ部隊は国外作戦を担当しており、イラン民兵組織の組織化、支援、訓練、武器・資金提供に加え、代理勢力を用いた直接・間接的な戦争の実行、イデオロギー・覇権主義的な国益の推進を目的とする国外での騒乱の扇動行為、国や都市に対する攻撃・侵攻、外国の政治要人や影響力を持つイラン反体制派の国外での暗殺などを実行している。

コッズ部隊は、イラクやシリアなど複数の国で治安、政治、諜報、軍事機関上層部への侵入に成功している。およそ2万人の構成員を抱える同部隊は、緊急時にはイラン革命防衛隊やバスィージ民兵部隊の戦力を用いることもできる。

コッズ部隊が、国外でのテロ細胞の構築や民兵・代理勢力の訓練を通じて、外国組織に対してスパイや攻撃を試みたのは、これが初めてではない。一例として同部隊は以前、サウジアラビアとイスラエル大使館の爆破計画のほか、2011年にはアーディル・アル=ジュベイル駐米サウジアラビア大使の暗殺計画を企てたとして摘発されている。2005年のレバノン元首相、ラフィーク・ハリーリー氏の暗殺に同部隊が加担していた可能性があることも、捜査では明らかになっている。同部隊は米同時多発テロにも関与している。イランはアルカイダを支援したことで同テロの実行を可能にした責任を問われ、米国のジョージ・ダニエルズ判事に賠償命令を受けているのだ。

イラン政権がアルバニアにテロ細胞を組織したのは、イラン国民抵抗評議会(NCRI)を標的にすることが主な理由の一つだ。反体制派である同評議会は、イラン支配層による神権政治体制が権威主義と宗教的独裁に基づいていると考えており、同国における民主的な統治体制や信教の自由、社会正義、法の支配、人権の尊重などを求めている。

国外最大の反体制派組織とみなされるようになった同評議会は、国内のイラン人とも繫がりを持っており、イラン政権は懸念を深めている。イランにおける民主的な統治体制の推進や、支配層が掲げる外交目標の阻止、米国の国益・経済的利益の保護など、同評議会は反体制派が支配層の権力に対抗する上で、重要な資源として大きな役割を果たすものと考えられている。

同評議会は以前、イランがアラックとナタンズに秘密裏に設置したウラン濃縮施設の存在を暴露している。このことからイラン当局は、同評議会が外国政府と密接に協力することで影響力を増大し、不満を抱くイラン国内の若者が感化させ体制批判へ向かうのではないかと危惧している。

イラン政権がヨーロッパでのテロ行為を画策したのはこれが初めてではない。フランス当局は2018年6月、パリで開かれた大規模会議「Free Iran」に対する爆弾攻撃を阻止している。イラン国民抵抗評議会主催の同会議には、元米議会下院議員のニュート・ギングリッチ氏や、ニューヨーク元市長のルドルフ・ジュリアーニ氏、カナダ元首相のジョン・ベアード氏など、数々の要職経験者が登壇していた。事件直後、フランス、ベルギー、ドイツでは、外交官を含むイラン出身者数人が逮捕されている。徹底的な捜査を終えたフランス当局は、イラン政権が爆破計画に関与していたと結論付けた。仮に攻撃が成功していれば、人命の損失は甚大なものになっていただろう。それに加え、人権のために戦う反体制派は、計り知れない損害を受けていただろう。

デンマークでは2018年、同国民の暗殺を企てたとして当局がイラン政府を告発しているが、ここでもイランの暗躍が見て取れる。

イラン政権が諸外国におけるテロ細胞構築の活動を強化していることは明らかだ。イラン指導者らに責任を取らせることは、国際社会の責務である。

イラン系米国人のマージド・ラフィザデ博士は、ハーバード大学卒の政治学者である。イラン・米国の外交政策の一流専門家であり、実業家、「International American Council」の議長を務めている。Twitter:@Dr_Rafizadeh

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