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パレスチナはまず自らの中に平和を築くべき

国連本部で開催された第75回国連総会において9月25日、ビデオ映像により演説するパレスチナ暫定自治政府のマフムード・アッバス議長。(AP)
国連本部で開催された第75回国連総会において9月25日、ビデオ映像により演説するパレスチナ暫定自治政府のマフムード・アッバス議長。(AP)
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28 Sep 2020 02:09:48 GMT9
28 Sep 2020 02:09:48 GMT9

歴史的に大きな意味を持つ、アラブ首長国連邦(UAE)、バーレーンとイスラエルの間の国交正常化合意。その合意がパレスチナとイスラエルの関係に与える影響について、パレスチナ・イスラエル双方ともに誤った結論を引き出そうとしている可能性は大いにある。

理想的な世界、言い換えれば、イスラエルがネタニヤフ現首相のような国粋主義者・大衆迎合主義者によって支配されていない世界では、今回の国交正常化合意は、イスラエルにパレスチナとの誠実で勇気ある和平イニシアチブに乗り出す動機を与えて然るべきだった。

しかし現実には、期待はしないほうが良いだろう。ネタニヤフ首相と彼の右翼の同盟者たちの考え方は、自己満足的で、パレスチナ人との現状を変える緊急の必要性を感じているとは思えない。ネタニヤフ首相はまた、機を捉えてイスラエル、パレスチナそして中東全体のため、戦略的に未来志向なだけでなく道徳的に適当でもあるような行動を取ろうとするような人物でもない。結局のところ、パレスチナとの和平はパレスチナ人たちや他の諸国にとって有利なものではなく、ただイスラエルにとって重要な利害が関わっているということなのだ。

イスラエル側の分析はひとまず置いて、今のところ主に怒りと敵意によって動かされているように見えるパレスチナの側を考えてみよう。これまでの怒りと敵意にもかかわらず、より綿密に分析してみれば、最近の事態の展開により、パレスチナ側は情勢を吟味し、世界と中東が優先順位を考え直したこと、今が戦略と構想を練り直す時だということを理解するようになっているとも思われるのだ。

正しいか間違っているかは別として、行き詰まった和平プロセスに対する国際的な倦怠感、過去数年間の地域的・国際的な諸優先順位の変化、そしてとりわけ、世界を呑み込んだここ数ヶ月間の新型コロナウイルス感染症の大流行の結果として、イスラエルとパレスチナの間の問題は、国際社会が優先的に取り組んでくれるか、肯定的な役目を果たせると信じてくれているかということではなくなっている。関係諸国の働きかけにもかかわらず、パレスチナの政治における分裂と混乱は、国際的なイニシアチブをも妨げており、ヨルダン川西岸の占領とガザ地区の封鎖による恒久的な支配を望んでいるイスラエルとその同盟国の術中にはまる結果を招いている 。

しかしむしろ、新たな国交正常化合意は、そしてさらに驚くべきことには、幅広い問題で協力するために全力で前進するという締結各国の熱意は、ラマッラー、ガザ、パレスチナのディアスポラの離散民たちにとっても、変化を告げるものとならなければならないのだ。 

一枚岩で、国民からの委任を受けた政府ならば、国際社会と再び関わり、占領状態の定着とその残酷さを非難するパレスチナの主張をより強力に訴えることができるのだ。。

ヨシ・メケルバーグ

彼らのあからさまな失望に関わらず、行動する義務は現在、分裂したパレスチナの指導部と政体にある ― 彼らは何よりもまず、共通のプラットフォームを策定して互いの相違を超えて活動するため、西岸とガザにおけるすべての主要な派閥、主にファタハとハマス、そしてPLOをまとめる方法を見つけるべきだ。「統一的なフィールドリーダーシップ」に関する彼らの最近の会合と合意は、そのような目標の統一に向けた一歩かもしれないが、今のところ、出された声明は、統治と目標の統一性も、それを達成するための戦略を示すものというよりもむしろ、主として反抗と「包括的な大衆の抵抗」の宣言となっている。

統一政府の話ならば、非現実的で不必要だ。代わりに、最初のステップとして、過去15年以上で初めてパレスチナ人による大統領を選出し、過去14年以上で初めてパレスチナ立法評議会の議員を選出することを可能にする政治プロセスを再開し、PLOを改革するべきだ。ファタハとハマスの間の以前の多くの合意は選挙を目的として締結されたものだが、どちらの側も熱心ではなく、好ましくない世論調査の反応に揺らぎ、現状に固執することに満足してしまうこととなった。

パレスチナの政体が自国民の信頼と国際社会の好意的な国々や人々の積極的な支援を取り戻したいのであれば、最初のステップとして公正で自由な選挙を行う必要がある。政治家たちはまた、若い世代の声に耳を傾け、彼らがパレスチナの政治社会の一部となるように力を与え、奨励するべきだ。こうした変化がなければ、パレスチナの指導者が切実に必要とする国内外の本格的支持も、また彼らが信じるパレスチナの民族自決と独立という正当な大義も、実現はしないだろう。

武力闘争への回帰を主張する向きもあるが、ヨルダン川西岸でもガザでも武力への心からの熱意などは見られず、過去の経験から、また現在の国際環境においてはなおのこと、苦しみと悲惨さを増大させることによって具体的な何かを達成できるとは思われない。とはいうものの、パレスチナ社会の一部が、イスラエルとの関係の行き詰まりを打開し、彼らの苦境に注目してもらうための注意を引くために、あるいは単に不満の表現として、武力闘争が残された唯一の手段であると結論付けてしまう可能性は残っている。

しかし、一枚岩で、国民からの委任を受けた政府ならば、国際社会と再び関わり、占領状態の定着とその残酷さを非難するパレスチナの主張をより強力に訴えることができるのだ。パレスチナ人の正当な大義への共感は、湾岸諸国で、EUで、あるいは世界のその他の場所で、消えてしまったわけではない。ただ、彼ら共感者たちは、失敗した和平プロセスや分裂したパレスチナ社会に時間と労力を費やしても得るところはないとこれまで以上に感じるようになってしまっている、ということなのだ。だから、国連決議と国際法に従い、和平に向けた現実的で建設的かつ実行可能な道を示していくことを基本としながら、イスラエルによるパレスチナの併合は防ぐことはできたという意味での今回の国交正常化交渉の成功をパレスチナが足場として利用すること、またイスラエルとの紛争への公正な解決実現に向けて積極的な役割を果たすよう湾岸諸国に働きかけることは、パレスチナの人々にとって良いことなのだ。

そのようにパレスチナ側が動くことができれば、同様に建設的な態度で対応し、また勇気を持って和解の手を差し出したパレスチナ側に対して、そうした平和的な姿勢が占領を続けるのではなく停止し、パレスチナ人との紛争の解決に向けて動く動機となることを示して見せることが、イスラエル側の義務となるだろう。この歴史的な節目の時に、パレスチナ人に求められているのは、まず自分たちの間で平和を築き、そして中東における事態の新展開を彼らの大義の実現に役立てることなのだ。

  • ヨシ・メケルバーグはリージェンツ大学ロンドンで国際関係学の教授を務め、国際関係学・社会科学課程を率いる傍、チャタムハウスの中東・北アフリカプログラムでアソシエイトフェローを務め、国際的な印刷・電子メディアに定期的に寄稿している。ツイッター: @YMekelberg
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