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アラブ民族がアメリカの次期大統領に望むことは?

合衆国インディアナ州のブルーミントンで、共和党のドナルド・トランプ大統領と民主党の対立候補、元副大統領のジョー・バイデンの11月の選挙に向けた第一回討論を見る人たち(Getty Images)
合衆国インディアナ州のブルーミントンで、共和党のドナルド・トランプ大統領と民主党の対立候補、元副大統領のジョー・バイデンの11月の選挙に向けた第一回討論を見る人たち(Getty Images)
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27 Oct 2020 12:10:51 GMT9
ファイサル・アッバス
27 Oct 2020 12:10:51 GMT9

大統領選の投票まで数日となり、アメリカでもここ中東でも、期待と絶望が入り混じって、空気は今にも破裂しそうに張りつめている。

アメリカの将来を決めるのはもちろんアメリカ人であって、中東の親米諸国は、共和党の現職ドナルド・トランプ、民主党の挑戦者ジョー・バイデンのどちらが勝とうとも、協力する用意がある。

当地域の親米諸国に関して言えば、ホワイトハウスの政策変更への対応は十分予想できるものだ。あえて言えば、誰が選挙に勝とうが同じことである。親米国と敵対する当地の勢力が、民主党が勝った場合のシナリオと偽って喧伝しているから騒ぎに注意を払う必要などない。

選挙の年(伝説のサウジ元駐米大使バンダル・ビン・スルタン王子によれば「愚かな季節」)にはいつもそうだが、選挙当日までは、今までもこれからも、いろいろな話が出てくるだろう。しかし、11月3日を過ぎれば、選挙運動は終わり、現実が支配する。

アメリカの政治の仕組みを知っている者にとっては当たり前のことだ。それでも中東の専門家の中には、どちらがサウジアラビアにとって良いのか、競って予想しようとする者がいる。

そういう専門家たちには、米国務省報道担当官モーガン・オルタガス女史への本紙のインタビューを見てもらおう。彼女はサウジと米国の関係は「常に二大政党制だった」と指摘した。

さらに記憶力の弱い評論家諸氏のために特筆すべきは、アメリカからサウジアラビアへの武器輸出に関する彼女の言及だ。自分がオバマ政権時に属していた時に自ら推進したと語ったのだ。

これも評論家諸氏に思い出してもらいたいのだが、議会の反サウジアラビア的法案に拒否権行使したのは、民主党のオバマ大統領だ。結局のところ、当時両国政府にどんな戦術的な意見の相違があったにせよ、彼が自国の利益に反する行動をとるはずがない。戦略上のサウジの宗教的、経済的、政治的重要性をすぐに理解したであろうからだ。

しかし、中東では権力者のものの見方や方針と、大衆の思いや気持ちがあって、両者は常に同じではないことを認識する必要がある。

そのため、アラブニュースではアメリカの選挙について2度目のYouGov投票を行うことにした。アラブの街角で、今回は18か国3,000人超の対象者に、大統領候補者とその政策に関し、期待、願望、懸念を尋ねるというものだ。

数字を見てわかる通り、2016年の投票から変化の無い項目もあるようだ。例えば、回答者の多くがアメリカの外交政策には懐疑的なことが判明した。84パーセントがアメリカはアラブ諸国の過激派との闘いを十分支援してこなかったと回答した。

ただ興味深いのは、バイデンがトランプより人気があるのはわかったが、だからと言ってアラブ民族は彼に白紙委任する気はないということだ。

実のところ、アラブニュース・YouGov投票「2020年選挙:アラブ民族は何を求めているか」でわかった最も興味深い事実は、アラブ民族の(53パーセント)はオバマが中東地域の情勢を悪化させたとえており、またかなり多数(58パーセント)がバイデンはオバマ時代の政策と距離を置くべきだと考えていることだ。

当地域の同盟諸国は、誰が選挙に勝っても協力する用意があるが、オバマ時代の過ちを繰り返してほしくないと願っている

ファイサル・J・アッバース

2009年のカイロでの演説以降、オバマがどれだけ当地域で人気を博したか、皆が覚えているに違いないと思うと、この態度の変化は興味深い。我々中東の人間はようやく行動は言葉より雄弁であるということを学んだようである。

教訓と言えば、最近では代償なしの(しかしかなり時間がかかった)一件がある。機密から外されたヒラリー・クリントンのEメールのことだ。オバマ政権の政策の一部が、この地域に破滅的な影響を過去も現在ももたらしていることがわかる。オバマ大統領時代をつぶさに観察してきた者には、Eメールからは新たな発見ほとんど無かった。しかし、彼の美辞麗句に惹きつけられ、しっかり見てこなかった者にとっては、非常なショックだったかも知れない。

当時副大統領だったバイデンは、国務長官だったクリントンに対してほとんど意見はできなかっただろう。実際、中東の火種を燃え上がらせた責任は、ほぼクリントン、オバマ、そして大統領の「秘蔵子」の国家安全保障担当副補佐官だったベン・ローズだけにある。

では、Eメールはクリントンに関し何を暴露しているのか? 様々なことがあるが、最も警戒に値するのは次のようなことだ。

1.Eメールはムスリム同胞団との親密な関係を示唆している。多くのイスラム教が多数を占める国家が彼らをテロリストと認定している。主導者でありドーハを拠点とする聖職者のユースフ・アル・カラダーウィーは、様々な宗派の信徒に対し、非寛容と憎しみを何度も吐きかけてきた。実のところ、暴力的な攻撃も呼びかけている。ユダヤ人を攻撃することを認めるファトワーと言われる宗教的勧告も出している。

2009年1月のアルジャジーラのアラブ語放送で、彼はこう言ったのだ。「神よ、敵を捕らえよ。イスラムの敵を…神よ、裏切り者のユダヤの侵略者を捕らえよ…神よ、奴らの数を数え、一人ずつ、一人残さず殺したまえ」。ヨーロッパ人種すべてに対しても同様の深く根ざした憎しみがある。2013年にはドバイから世界の数百万人に向けたTV放送で、イスラム教諸国は弱腰だと非難し、市民たちに政府を追放せよと呼びかけ、同胞団に反対する者を「ハワーリジュ」(イスラムの敵)呼ばわりして、彼らすべてに対する戦争を始めるよう呼びかけた。

2.Eメールを見ると、クリントンと側近がエジプト、リビア等のムスリム同胞団の指導者とどれだけ近い関係にあったかが分かる。同胞団はアメリカの政策に影響を与え、様々な組織が邪悪な目標を達成するのを、「アラブの春」として知られるようになった目くらましの情報を駆使して支援することができた。ムスリム同胞団の高官たちはアメリカで歓待され、世界経済フォーラムで祝宴に招かれた。さらに国際通貨基金の高官に引き合わされた。その過程を通じ、クリントンと仲間たちは、このテロ組織がエジプトのホスニ・ムバラク体制に取って代わるものとしては最悪だとわかっていたはずだ。

3.Eメールはオバマ政権とアルジャジーラTVの親密な関係も示唆している。その前のジョージ・W・ブッシュの政権が同チャンネルの事務所を爆破したいと考えていたと言われるのと対照的だ。アルジャジーラは過激派、特にアルカイダのお気に入りメディアだった。何年にもわたり、ビン・ラディンの録画を独占的に発信していた。アルカイダがアルジャジーラを通して扇動したことで、アフガニスタンや、後にはイラクで、アメリカ軍に対する一連の攻撃で死者が出た。アルカイダのビデオはなぜかアルジャジーラの事務所に届き、ゴールデンアワーに放送された。同チャンネルを支援したことで、ヒラリー・クリントンは悪魔と同衾したとの非難を免れない。

4.アメリカ人の生命にかかわることとして、オバマのもう一つの失政がEメールで明らかになっている。いわゆるアラブの春運動へのクリントン財団を通じての資金援助に関するものだ。

Eメールは2012年の米国駐リビア大使ジョン・クリストファー・スティーブンスと在外情報管理官ショーン・スミスの死の原因も示している。もちろん、リビアの狂犬ムアンマル・カダフィを擁護する気は一切無いが、保守的イスラム主義者への支援は常に反作用を招いており、アメリカの高官たちが教訓を学ばないことには驚きを禁じ得ない。

ハフィントンポストへの寄稿者ダン・コヴァリクが指摘する通り、ヒラリー・クリントンとそのチームは知っていたであろう。「地域の安全性を高める目的に関し、爆弾攻撃や強固な反アルカイダであるカダフィの排除が、アルカイダと同盟軍にリビアの多くの場所で拠点を与えることになる可能性に気づいていたと、多くのEメールが示唆しており、実際にそうなった」ことを。

コヴァリクは、ヒラリー・クリントンへの長年の腹心シドニー・ブルメンタールから1通のメール(文書番号C05780521)を取り上げる。そこにはこうある。「リビア東部は伝統的にイスラム急進派グループの拠点であり、アルカイダと関係のあるリビア・イスラム戦闘集団もその一つです。カダフィ体制がリビアでのジハーディストの脅威を抑え込むのに成功していたことを考えると、現在の状況はジハーディストの再興に門戸を開くことに繋がります」

それがわかっていながら、なぜブルメンタールはカダフィとの「戦いに勝つ」ことが地域の安全のために必要だという議論に達したのか、コヴァリクは不思議に思っている。

Eメールに記された全情報を見ると、トランプが2016年の選挙運動中にヒラリー・クリントンは投獄されるべきだと言ったのが分かる気もする。もちろん、法による正当な手続きを経て決めるべきことだ。しかし、民意という法廷では、アメリカ国民の死に対する責任に関し、明らかにクリントンに不利な判定が下された。我々にとってより重要な、当地域を戦火にさらすことになる外交政策を開始した責任もである。我々はその戦火を消すために今でも奮闘している。

11月3日の両大統領候補の検討を祈る。もしバイデンが勝ったら、国務長官に選ばれる人物がオバマ政権のミスを繰り返さないことを祈ろう。さらに、もちろんのこと、個人のEメールを公務に使用しないのを忘れないことも。

・ファイサル・J・アッバースはアラブニュースの編集長

Twitter: @FaisalJAbbas

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