
11月22日と聞いて何かを思い浮かべる人は、レバノン以外ではあまりいないだろう。だが、レバノンの人々にとって、この日はレバノンの独立記念日に当たる日なのだ。1943年のこの日、レバノンではフランスの委任統治が終わり、新しい時代の幕開けを祝うことができたのである。何世紀以来初めて、レバノンの人々は自分たちで自分たちの政府や暮らしを管理できるようになったのだ。
その祝賀の日も、今年は少なからず悲劇の色で染まることになった。8月4日にベイルートを襲った破壊的な爆発により、レバノンが長年にわたる政府の失態や汚職、宗派間抗争で無秩序の端に追いやられていたことが浮き彫りになったのだ。
有権者は政治エリートへの信頼を失い、レバノンの政治・経済危機が悪化させているのは政治エリートたちのせいだとして、説明責任を求めている。この1年間、暫定首相が政権樹立を求められては現れ、消えていった。だが、結果はどの政権も同じだった。どの政権も、過去30年間レバノンを支配してきた既得権益問題を克服することができなかった。あるいは、その気すらない政権もあった。
この失敗には、明確な理由がある。既成政党の多くが、特定の省庁を支配したいという要求に固執し続けているのだ。こうして既成政党がまるで国を人質にとるように拘束しているのだから、国はあらゆる発展のチャンスを逃しているのである。
ヒズボラとその同盟政党による妨害については、米国財務省も認めることとなった。この数か月の間にも、多くの個人が汚職や党派的利益の罪に問われ、制裁の対象となった。直近では、現大統領の義理の息子であるゲブラン・バシル氏にも制裁が発動された。これは大きな前進と言える。国際社会が個人的・政治的な汚職を見逃さないことが示されたのだ。
我々はこれらの失敗から学ばなければならない。レバノンを救うためには、我々は新たな現実を作り、旧体制から離れる必要がある。レバノンは軍閥の指導者や王朝や武装民兵によって支配されなければならないとする体制、政府の手先は国民ではなく腐敗した者に仕えなければならないとする体制、そして、宗教が国の機能の中心になければならないとする体制から離れなければならないのだ。
これらは古いやり方なのであり、国民の期待を裏切り続けてきた。
今こそ、レバノンの全国民は制度改革支持という急進的なアプローチを取る時だ。
バハー・ハリーリー
レバノンが直面している巨大な課題を克服するには、急進的なアプローチを取らなければならない。私はそう信じて疑わない。この道は過激だと言える。現在の腐敗した軍閥をレバノンの支配者として受け入れることを拒否し、政府はエリートではなく国民に仕えなければならないという信念を持ち、さらに、国の未来を決定するのは確立された派閥ではなく、才能や経験でなければならないと理解しているからだ。だが、失敗続きのこの国の過去を断ち切るためには、これは必要な道なのである。
こうした過去の断ち切りの核心にあるのは、簡単とも言える変化である。我々は街頭の人々の声に耳を傾けなければならないのだ。
この1年間の抗議デモでは、国民の要求が声高に挙げられてきた。こうした要求は、満たされなければならないのだ。要求は法外なものではない。民主主義における権利や価値観を求める、基本的なものだ。レバノンには、一般家庭の利益を優先してくれる、真の指導者が首相として就任する必要がある。レバノンの政治家が地域外の影響力に屈し、自分たちの私腹を肥やすだけで、国民に奉仕してくれないのに、国民はうんざりしているのだ。
次に来る首相は、素性や宗教に関係なく、独立した存在としてすべてのレバノン国民に仕えることのできる、頼りになる人物でなければならないと信じている。父であるラフィーク・ハリーリーは、そんな人物だった。首相の座に就いていた時、父はリーダーシップと公正さを発揮していた。こうして父が国にもたらした安定や投資からは、宗教に関係なくレバノンの全国民が恩恵を得ることができたし、これによって繁栄することができたのだ。
次に来る首相は、実績や経験に基づいて配置された、有能な熟練専門家からなる少人数の内閣と連携し、政府の機能を早急に変え、政府が国民に奉仕するようにしなければならない。ゴミ収集問題の解決、街頭の取り締まり、生活費の高騰への取り組みなど、単純なことから早急に始めなければならない。短期的には、経済に焦点を当てる必要がある。国際通貨基金(IMF)との合意、大規模な汚職対策の推進、そしてベイルート再建のために国際援助をもたらすことが優先事項とされなければならない。
父の政権は、教育に大きな重点を置いていた。長期的な視野に立って国を築いていたのだ。これは立派なことだったと思う。だが、次の政権はもっと早急に動く必要がある。レバノンの当面の成長を支え、国を立ち直らせるためには、雇用と機会が不可欠だ。国民全員が、レバノン再生への貢献に全力で取り組まねばならない。新たなイニシアティブを通じてでも、国際支援を通じてでも、どんな方法を使ってもだ。
IMFとの合意は、正常性を回復するための第一歩であるが、将来この国を待ち受けているどんな困難をも乗り越えられるようにするには、国の経済的回復力を高める必要がある。
新しいアプローチを取ることで、レバノンを変えることができるのだ。国際的な支援が必要となる — 我々だけでは無理だ。だが、地域の同盟国や米国、フランスには、レバノンが泥沼から抜け出すには、この新たな道を取るしかないのだ、ということを受け入れてもらう必要がある。
制裁は強い意思表示ではあるが、我々には支援がもっと必要だ。国際支援がなければ、レバノンは腐敗したエリートによる荒廃のなか、さらに衰退を続けるだろうし、すでに不安定な地域の、さらに不安定な前哨基地となってしまう恐れがある。
今こそ、レバノンの全国民は制度改革支持という急進的なアプローチを取る時だ。この思いきった決断によってこそ、我々は未来を手中に収めることができるのだ。