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「ザ・ライン」が人類の変化の必要性に応える

サウジアラビアのモハンメド・ビン・サルマン王太子はNEOMの事業計画「ザ・ライン」を発表した。(SPA)
サウジアラビアのモハンメド・ビン・サルマン王太子はNEOMの事業計画「ザ・ライン」を発表した。(SPA)
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13 Jan 2021 11:01:28 GMT9

サウジアラビアが新たに発表した事業計画「ザ・ライン」は、設計・コンセプトから発表まで、構想に3年を費やしている。これはいくつもの目的に役立つものだが、最も重要な観点は王国の未来の希望と展望において果たす役割である。

ザ・ラインは、3月までに着工し、この街の概念を書き換えることになる。世界中の都市がコロナウイルス感染症(COVID-19)の影響を受けたことで、空間のより健康的な利用法に関する新たな考えが前面に押し出されようとしている。一般的に都市は同心円または格子を形成して広がるが、ザ・ラインはNEOMの紅海沿岸のA地点から内陸のB地点へとのびる。

この事業計画は今週、モハンメド・ビン・サルマン王太子が発表した。王太子は、ザ・ラインが、NEOMを所有するサウジアラビアのパブリック・インベストメント・ファンドおよび国内外の投資家から今後の10年間で5,000億ドルの支援を受ける予定だと述べた。王太子によれば、同事業により、王国の国内総生産が480億ドル増加し、38万人の求人が出ることが期待されている。

サウジアラビア北西部のNEOMは、2025年完成予定の26,500平方キロメートルのハイテク開発で、産業・物流地区をはじめとするいくつかの区域がある。ザ・ライン自体は、都市空間の利用法を再考し、生体認証などのテクノロジーを使って強化しつつ、人類の進歩を加速する事業として発表されている。実用的な結果が得られれば、ザ・ラインは世界中の他の同様のコンセプトのモデルとして役立つことになる。

帯状都市は新しい考えではないが、世界中をCOVID-19が襲い、これからの数年間、引き続き各国に試練を与えることになるため、この事業計画の時機は来ている。ザ・ラインをめぐるアイデアは実験的なものだが、この空間利用の概念は新しいテクノロジーとの結合で、都市の配置を検証する独特の方法を提供する。

200年間で初めて、大きな都市開発が、道路ではなく人々を中心に設計された。学校、病院、娯楽施設、緑の空間など、日常生活に必要なすべてのサービスが、すべての人々にとって徒歩5分圏内であるという考え方だ。この帯状の設計のおかげで、都市生活の中心がさらに時間、健康、ビジネスを重視したものになるだろう。

サウジアラビア政府がこれまでに発表しているように、NEOMは世界中の100万人以上の人々にとっての故郷かつ職場となる。街、都市、港、企業誘致地区、研究所、スポーツやエンターテイメントの会場、観光地を持つ。革新の中心地として、起業家、財界人、企業がやってきて、画期的な方法で新たなテクノロジーや企画を調査し、生み出し、商品化するだろう。ザ・ラインの端までずっと続く内陸の水の供給形態は、スポークを思わせる形状で海から砂漠までの空間の効率的な利用法を表している。この未来志向の発想は、ハイテクで気候に配慮した方法での空間利用の再構築に役立つだろう。

200年間で初めて、大きな都市開発が、道路ではなく人々を中心に設計された

セオドア・カラシク博士

土着の精神を背景にして機能し、探究、危険の覚悟、多様性の文化を受け入れるNEOMとザ・ラインの考えは、自由貿易地域の規制と関係がある。NEOM自体もそうだが、ザ・ラインも国際規範に適合し、COVID-19後の時代の経済成長を促す進歩的な法を中心に据えている。規制法の観点で言えば、ザ・ラインの位置づけは起業家のための新たな機会の創出に役立つ。

NEOMは、低炭素エネルギーシステムへの移行を円滑にするスマートテクノロジーの開発地になるだけでなく、再生可能エネルギーの生成の中心地となるだろう。昨年、NEOMは、世界最大の緑の水素プラント計画を発表した。50億ドルのベンチャー事業で2025年までに1日あたり650トンのエネルギーを生産することが期待されている。

ザ・ラインは全体として唯一無二のものだ。帯状都市という考えは、人類がCOVID-19の病原体との共存に適応する助けとなり、その一方、気候変動に対処する必要性や私たちの自分らしい生き方そのものにも応えてくれるだろう。COVID-19のパンデミックが第四次産業革命(4IR)を動かした経緯でわかったように、今が変化の時である。ザ・ラインは4IRとその世界的影響の副産物なのだ。

セオドア・カラシク博士は、ワシントンD.C. のガルフ・ステート・アナリティクスの相談役である。カラシク博士は元RANDコーポレーション所属の政治学者で、UAE10年間住んでおり、安全保障問題を主に扱っている。 Twitter: @tkarasik

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