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3月にOPECプラス会合を控えた原油相場。慎重になるべきかもしれない

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03 Mar 2021 12:03:49 GMT9
03 Mar 2021 12:03:49 GMT9

景気後退の後には、好景気が訪れる。10ヶ月前、原油需要は商品先物過去最大の落ち込みとなった。それに反し、今年の1月と2月は、一年の最初の2ヶ月間における過去最高の需要上昇を記録した。

ここ数ヶ月間における原油価格の上昇は、大変な驚きであった。WTI原油先物価格は、12月2日の1バレルあたり45.28ドルから、中央ヨーロッパ時間の月曜正午には62.20ドルまで上昇した。またブレント原油先物価格は、同時間帯に1バレルあたり56.35ドルから65.13ドルまで上昇した。

需要上昇については、石油トレーダーはアジアに感謝すべきである。世界で人口の最も多い2か国において、原油の需要量が確実に増加している。中国の石油消費量は、新型コロナウイルスのパンデミック以前の水準を再び上回っている。インドは、商品先物価格の上昇が、インド国内の景気回復に与える影響について懸念している。

原油の供給面では、石油輸出国機構(OPEC)加盟国とロシアを中心とした友好的な産油国10カ国で構成される「OPECプラス」が歴史的な原油減産を実施したことにより、強気相場が加速した。その減産量は日量あたり700万バレルをわずかに上回る量となり、新型コロナウイルスのパンデミック以前の世界の原油生産量の7%に相当する量である。さらに、サウジアラビアが3月と4月に日量100万バレルの自主的な追加減産を実施したことにより、その動きがさらに強化された。

以上の要因から需給バランスはマイナスとなり、積極的な在庫の取り崩しが行われた。つまり、市場は引き締まっているということだ。アナリストやトレーダーは、市場が引き締まっていることを警告している。それが相場の強い反発に示されているように、原油価格を押し上げている。

では、原油相場はどうなるのか?当面は前向きに見えるかもしれないが、まだ危険がひそんでいる。サウジアラビアのエネルギー大臣を務めるアブドゥル・アジズ・ビン・サルマン王子は、産油国は油断してはならないと警告した。これは大変的を射ている。

世界経済の見通しは当分の間は良いように見えるかもしれない。しかし、特に急速に広がる新型コロナウイルスの新たな変異株や、既存のワクチンの有効性など、まだ不確実性が残る。

需要の面では、ワクチン接種のペースが遅れていることと、新型コロナウイルスの新たな変異株の急速な拡大により、欧州では、ロックダウンが長期化する映画『グラウンドホッグ・デー』(邦題:『恋はデジャブ』)のシナリオのような状況に陥っているようだ。これらすべてが原油の需要に影響を与えることは明らかであり、国境を越えた空の旅は特にそうである。

同様に、ワクチン接種が迅速に実施されているにもかかわらず、新型コロナウイルスの変種株により、どの程度迅速に米国経済を開放できるかに制約が課されている。

バイデン政権による1.9兆ドルの経済対策は、日曜日の夜に下院を通過しており、今後上院通過という最後のハードルを越える必要がある。このことは原油の需要に前向きな影響を与えることは間違いない一方、原油価格の上昇により、米国のシェールオイル生産が一部再開することにだろう。

潜在的な原油生産の供給ショックは、シェールオイル業界の再編成だけでなく、OPEC内の圧力によるものでもある。リビアは原油生産量を、2020年第2四半期の8.4万バレルから2021年1月には116万バレルまで引き上げている。同時に、バイデン政権による外交政策の大転換により、イランやベネズエラによる原油生産・輸出は、低い水準ではあるものの増加する可能性がある。

つまり、サウジのエネルギー相は、石油市場の回復を鵜呑みにすることの危険性を強調していたのだ。しかし、OPECプラス参加国のもう一つの重鎮であるロシアからすれば、状況は違って見えるかもしれない。アレクサンダー・ノバク副首相は2月中旬、ブレント価格が1バレルあたり63ドルに達していた際、市場はバランスを取り戻したとの見解を示した。湾岸協力会議の一部経済国よりも、ロシアは原油価格を下げ、財政収支を均衡させる必要があるため、ロシアとってこれは理にかなっているのかもしれない。

3月4日に開催されるOPECプラスの閣僚会合では、このような異なる視点からの議論が行われることが予想される。その上で、閣僚らはバイデン政権による外交政策の大転換と、OPEC加盟国らによる日量150万バレル程度の増産に対する協調姿勢を受け、OPEC非加盟国やOPEC加盟国の一部が、原油増産を行うのかどうか見極める必要がある。さらに、4月以降、サウジアラビアによる自主的な原油減産が終了することとなり、OPECプラス参加国は段階的な減産縮小計画に沿って、日量50万バレルを増産する可能性がある。

問題は、世界の石油市場が日量150万バレルの追加生産を吸収できるかどうかということだ。さらに、これに米国のシェールオイルの追加生産と、原油減産の対象外となっているOPEC産油国である、リビア、イラン、そして程度は少ないもののベネズエラによる供給がさらに追加されることとなる。これに対する答えは、ワクチン接種にかかっている今後数ヶ月の原油需要の上昇度、感染力の高い新型コロナウイルスの変異株、そして世界経済がどれだけ早く回復するかにかかっている。

楽観的な観方は今の傾向かもしれないが、原油産油国は油断してはならないだろう。というのも、現在の前向きなマクロ経済的展望は一時的なものであり、新型コロナウイルスの変異株が急速に蔓延しており、世界の多くの地域でワクチン接種のペースが遅いままである。これらは世界経済の回復を阻む要因となっている。

  • コーネリア・マイヤーは、投資銀行および産業界で30年の経験を持つ、博士号を持つ経済専門家である。またマイヤー氏はビジネスコンサルタント会社Meyer Resourcesの会長兼CEOを務めている。

ツイッター: @MeyerResources

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