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政府が失敗しても、レバノンにはまだ希望はある

2021年3月2日、レバノンのベイルートで、人々が車の中で身動きが取れなくなる中、ベイルートの国際空港へと続く幹線道路を封鎖するために火がつけられたタイヤの前を通り過ぎる抗議活動家。(AP通信)
2021年3月2日、レバノンのベイルートで、人々が車の中で身動きが取れなくなる中、ベイルートの国際空港へと続く幹線道路を封鎖するために火がつけられたタイヤの前を通り過ぎる抗議活動家。(AP通信)
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04 Mar 2021 08:03:56 GMT9
04 Mar 2021 08:03:56 GMT9

レバノンは沸点に達している。今週、レバノンのポンドが1ドル1万ポンドという歴史的な安値にまで下落したため、国中で怒りに満ちた抗議デモが勃発した。報道によると、これらの抗議活動はパンデミックが始まって以来最悪のようで、その理由は明らかだ。ポンドの下落が人々の貯蓄を破壊し、激しいインフレを引き起こしており、政府は悪いニュースの流れを止めることができないからだ。

残念ながら、このような抗議活動は今に始まったことではない。レバノン経済が低迷し、一般の人々が苦しむ中、現在のシステムが目的にかなっておらず、取り替えなければならないことは、ますます明らかになってきている。100万人以上のレバノン人が貧困ライン以下で生活していることを示す最近の報道もある。街頭での抗議の声が高まり続ける時に、政府は、国民やその生業を支援する適切な奨励案が伴わずして、コロナウイルス感染症(COVID-19)の蔓延を食い止めるために、世界でも最も厳しい部類のロックダウンを行った。

全てのレバノン人が自問自答しなければならないのは、政府の優先事項が本当に国民を守ることなのか、それとも国に影響を与えている政治的、経済的、保健上の危機への対処に失敗した責任を問われることからの単なる保身なのか、ということだ。

最前線で働く人達や高齢者を優先にした新型コロナウイルスワクチンの透明かつ公正な配布が行われることを誰もが望んでいた一方で、腐敗した政治家たちは、順番を飛ばし、ルールを破って先に接種を受けようとしてきた。最も衝撃的だったのは、彼らの向こう見ずで冷淡な行動によって、世界銀行までもがワクチンの資金調達やレバノンの新型コロナウイルス対応への支援を停止しかねないといった、幅広い結果を招きかねないことを知っているにもかかわらず、政治家たちが誰一人として罪悪感に苛まれていないことだ。彼らは自分たちの行動を腐敗したものとは考えておらず、今日の壊れたレバノンの正常な一部だと考えている。

私たちには、レバノンと国民を個人的な利益よりも優先させる新しい顔ぶれが必要だ。私たちは、過去10年間、国を現在の状況に追い込んだ統治機関の行動によって、散々な目に遭ってきた。彼らにはこれ以上悪いことはできないだろうと思う度に、彼らには驚かされている。しかし、実際には、権力にしがみつくためなら、彼らはどこまでも堕落する。

レバノンには、正しいことを行い、人々の生活を改善しようとする人々や組織が存在する。

バハー・ハリリ

もう一つの例は、レバノンで最も貧しい都市トリポリのニーズが無視されていることだ。ここでは、政府は息が詰まるようなロックダウンの中で、経済的な支援もインセンティブもないまま人々を放置している。政府は街の平和的な人々の声に耳を傾ける代わりに、彼らを違法に拘束している。暴力に出番はない。しかし、人々には平和的に抗議し耳を傾けてもらう権利がある。

これと並行して、2人の政治家が申し立てた告発を理由に、レバノン大審院は、壊滅的な被害を出したベイルートの爆発事故調査から主任調査官のファディ・サワン判事を解任し、既に信用が落ちていたプロセスをさらに毀損し、被害者とその家族の心を再び引き裂いた。これは、声を上げる活動家を黙らせ、真実を隠蔽しようとしている政治化された司法と、腐敗した統治機関の存在を明確に露呈させた。今こそ、レバノンの司法の独立性と公平性を確保するために、幅広い政策と法の改革を求める時だ。

このような展開にも関わらず、私はまだ希望があることを強調したい。レバノンには、正しいことを行い、人々の生活を改善しようとする人々や組織が存在する。

レバノンという国家は、国民に必要な支援を提供できておらず、民間企業と市民が協力して地域社会の支援に踏み込むことはよくあることだ。私は光栄なことに、レバノン・アメリカン大学医療センターと連携しているが、同機関は先日、ワクチンを必要としている人々にワクチンを提供するとともに、ワクチン接種の取り組みに参加する必要性について、国に啓蒙する取り組みを推進するために、ワクチン接種キャンペーンを開始すると発表した。同様に、レバノン赤十字も、この時の苦しみを軽減するために欠かせない活動を行っており、私も微力ながらも自分にできる支援を行っていることに、誇りを持っている。民間人は影響力を及ぼせるのであり、現在の危機のような状況では、時間やお金を使ったどんな支援も、大きな変化をもたらせるのだ。私は今この時にも、レバノンの人々の支援を続けるつもりだ。

このような様々な危機の中で、私はレバノンで、尊厳を持って生きるために腐敗した政府とその役人たちと戦っている姉妹や兄弟たちの側に立つ。レバノンのために正しいことをしている人たちがいて、私は、平和を求め、レバノンの人々が毎日直面している課題を解決するために、人々を結びつけようと努力している人たちを支援し続ける。私たちには是が非でも変化が必要なのだ。

  • バハー・ハリリは、ラフィーク・ハリーリー元レバノン首相の長男。ツイッター:@bahaa_hariri_
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