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一年間にわたるパンデミックは私たちの世界の軌道を変えた

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11 Mar 2021 10:03:35 GMT9

2020年3月11日、世界保健機関(WHO)は新型コロナウイルス感染症(COVID-19)危機をパンデミックとして公式発表した。一年が過ぎ、パンデミックは私たちの世界を多くの面で変えた。可逆的な変化もある一方で、不可逆的な変化もある。

最も重大なのは、COVID-19によって250万人以上の人々が亡くなったということである。アメリカだけで、50万人の人々がウイルスによって死亡した。こうした生命の喪失は不可逆的であり、パンデミックの最も大きな代償である。さらに多くの人々が感染者となり、中には長期間にわたる健康被害をこうむる人もいる。

パンデミックは世界を予測不可能な仕方で襲った。10万人当たりのこれまでに明らかになっている死者数という観点からすると、ヨーロッパ諸国、アメリカ、それから、中南米諸国という順で最多を記録した。しかしながら、パンデミックは国際的なものであり、ほぼ全土の国々に影響を与えている。

歴史的に、パンデミックは以前から存在する社会のひずみに直撃してきたが、COVID-19も同様である。社会に分断があれば、パンデミックはその分断を深くした。機関に対する信頼が低下しているところでは、パンデミックはその不信感を強めた。社会経済構造が危機に瀕しているところでは、パンデミックはそれにさらなる圧力を加えた。ジェンダーや人種間の不平等が存在するところでは、パンデミックはそれをさらに推進した。

パンデミックは、各国の情勢を反映し、多くの国々において様々な仕方で、政治を形作ってきた。2020年の富裕国における世論調査によると、大多数の人々が政府がパンデミックに対し十分な対応をしていると思っているということが明らかとなった。その一方で、アメリカとイギリスの大多数の人々が、政府の対応は不十分だと回答した。分断は、良い統治と国の健康危機を脱するのに不可欠である明確なメッセージの打ち出しを阻むから、パンデミック前に深い分断を抱えている国々―ブラジル、インド、イギリスそしてアメリカ―はさらなる困難に直面した。

ドナルド・トランプ米大統領、ボリス・ジョンソン英首相、ブラジルのジャイール・ボルソナーロ大統領など、多くのリーダーがウイルスに感染した。ほとんどが回復したが、それは質の高い医療へのアクセスが可能であったことに一部依拠する。一方で、エスワティニのアンブロセ・ドラミニ首相は12月に亡くなった。

先のパンデミックと同様に、COVID-19は機関へ―政府、科学者、宗教指導者、さらには家族へ―不信を募らせるという以前から存在する傾向を加速させている。過去のパンデミックと同様、機関への不信、孤独、個人の経済的損失、他者への加害欲求などが引き金となって、過激思想が高まりを見せている。この傾向はQアノンの陰謀説の隆盛に顕著であるが、他の仕方においても世界各国で露わになっている。

パンデミックはまた国際政治に多大な影響を与え、COVID-19以前に存在している困難をたびたび深刻にしてきた。パンデミックは国境をまたがる脅威を打倒するための協調の必要性を際立たせたが、その一方で、多国間機関の弱体化を実証している。G7やG20といった機関は、コンセンサスを模索した。初めにEU諸国のほとんどが、国境閉鎖をふくむ自身の方策を適用することを選択した。トランプはアメリカをWHOから脱退させた。

ウイルスに打ち勝つ多国間協調が肝心なとき、多くの国々は国家主義的なアプローチに走った。これらのうち、ある国境閉鎖などのいくつかは、理解可能で賢明なものであった。多くの国々がサプライチェーンの脆弱性を検査し、主要資源のグローバル化経済への依存を減らそうとしたことは自然なことである。しかし、こうした対応が必要とされる協調を阻むとき、パンデミックへの対応を害することになる。長い目で見ると、こうした方策は、国際政治経済システムをさらに侵食するかもしれない。

最大の世界的影響力をもつ二つの大国―アメリカと中国―は評判悪化に苦慮している。ウイルスは中国で出現したが、中国はそれを封じ込めることができず、また、WHOと他の政府との十分な透明性は保たれていない。アメリカは流行を抑制しそこない、世界で最も高額な医療システムをもつ国の一つであるにもかかわらず、死亡率はその世界人口の占有率をはるかに超えた。しかしながら、中国が自国のワクチンを評判を回復するための外交上の道具として用いてきた一方で、アメリカは記録的な速さで効果の高いワクチンを製造したことから世界のリーダーになっている。

COVID-19はまた、ウイルスの直接的な経済的影響と、ロックダウンやソーシャルディスタンスといった軽減対策により引き起こされた間接的影響の両方を反映して、世界に大きな経済的打撃を食らわせてきた。1月、国際通貨基金は、2020年に世界経済が3.5%収縮したと評価した。多くの国々が、国内生産の大幅な減少、失業者数の増加、そして企業へのプレッシャーの憂き目を見ている。政府は長期間にわたる財政上の結果をもたらすだろう景気刺激策に大金を注いだ。

いくつかの部門が他と比べてより悪戦苦闘している。パンデミック由来の世界経済活動の低迷は、2020年春の石油価格の歴史的下落の大きな引き金となった。この危機は、多くの国々における経済的不平等を増幅し、とりわけ小売業や接客業やインフォーマルセクターで働く人々に打撃を与えた。

パンデミックは、インフラ、輸送、住宅、公共空間について都市が着手する仕方に変化をもたらしそうである。

ケリー・ボイド・アンダーソン

多くの人々が買い物、学校教育そして労働をオンラインにシフトするにつれて、高速で信頼性のあるインターネットが重要なインフラの一部であることは大変明確になってきた。ネットショッピング、テレメディスン、テレワークといったトレンドは、パンデミックが終息したあとでも色濃く残りそうである。

それと同時に、パンデミックの社会的影響は厳しく、広範囲にわたる。人は社会的存在であり、ソーシャルディスタンスはメンタルヘルスと全体的な福利を犠牲にした。COVID-19パンデミックは孤独パンデミックでもある。多くのCOVID-19患者が、愛する人々との身体的抱擁から離れたところで、一人で亡くなってきた。大人、ティーンエージャーそして子どもは皆、孤独と自分たちの共同体、友人そして家族からの断絶に苦しんでいる。

学校閉鎖は最も長期間にわたる社会的・経済的影響力の一つをもっているだろう。パンデミック初期には、国連によると、78%の国々が学校を閉鎖したという。8月までに、10億人以上の生徒・学生が学校から締め出されていた。多くの子供たちがオンライン授業にアクセスしているが、オンライン授業は対面授業に比べて劣ると広く見なされている。教育とそれに関連する社会開発の損失は莫大である。

対面授業の欠如はまた、親たち、とくに母親たちに働くことを困難にしていることから、多くの家庭に育児危機をもたらしている。パンデミックは女性に、増加する家庭内暴力、減少する妊婦保健や家族計画へのアクセス、そして女性比率の高い部門での広範囲にわたる職の失業に直面させるという、大変ネガティブな影響を与えている。パンデミック前ですら、国連は女性が無報酬の世話や家庭内労働に男性の三倍従事していると評価しており、学校閉鎖は父親よりも家に子どもと居てスクーリングを手伝うだろう母親にますます負担をかけた。女性たちはまた、病気や年老いた親類のケアのみならず保健部門においても重要な役割を担い、パンデミックは医療従事者とケア提供者に重荷を負わせている。

他にも長きにわたる社会的影響があるだろう。エビデンスは今までのところ、パンデミックが裕福な国々の出生率の低下を加速させ、また、いくつかの貧しい国々における人口増加を潜在的に加速させることを示している。パンデミックは、インフラ、輸送、住宅、公共空間について都市が着手する仕方に変化をもたらしそうである。COVID-19はまた、アメリカのハリケーンや火災、そして南アジアのサイクロンなどの自然災害への対応を難しくしている。

世界全体にとって厳しい一年であった。幸いなことに、歴史的に見て速い大量のワクチン開発が、希望を与えている。ワクチンが裕福な国々により広く行き渡っていて、また、その裕福な国々の人々あるいはその他の国々の人々に対するワクチン接種には時間を要するだろうが、他の国々に対するワクチン提供においてはCOVAXファシリティなど進展の兆候が見られる。パンデミックの終息がどのようになるのか、また、私たちはCOVID-19と何らかの形で共存しなければならないのかどうかは依然として明らかではない。しかしながら、トンネルの終わりの光を見ることはできる。

過去のパンデミックはたびたび歴史の流れを変えてきた。それらは戦争の結果に影響を与え、また、帝国を築いてきた。たとえば黒死病は、社会経済に大きな変革をもたらし、ヨーロッパの封建制度を終焉に導くのに大きく寄与した。パンデミックはたびたび芸術的・知的創造力の爆発の火付け役となった。それらは医学知識そして保健改革に寄与してきたのである。

COVID-19が世界をどのように作り変えるのかというまさにそのことはまだはっきりとしていないが、私たちが一年前に経験した「平常状態」に戻れないだろうということは確かである。私たちの世界がこのパンデミックを切り抜けたとき、それは軌道が変わったことを意味するであろう。未来がパンデミック前のトレンドを反映しようとも、COVID-19は私たちの未来を形作ったのである。

・ケリー・ボイド・アンダーソン氏はライター。また、政治リスクコンサルタントとして16年以上の経験を有し、国際安全保障問題と中東における政治・ビジネスリスクの分析を専門とする。過去にはオックスフォード・アナリティカ審議副部長、Arms Control Today誌編集長を務めた。ツイッター:@KBAresearch

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